会場は地下にある会議室のような多目的ホール。
予定より早く到着すると、もう既に仮設の舞台と客席を作り始めていた。
見ると余りに舞台が低すぎる。
台に余裕があるというので2段に重ねてほしいというと、
ハウスマイスターは危険だと言う。
天板が弱いのかと思い乗ってみるが、そのような事はなく、
試しに重ねて安全を確かめ、納得してもらう。
ドイツ人はともかく客席つくりを優先する。
全部椅子席にすると後ろの人が見えなくなるのは明らかだったので、
桟敷席を作ろうとしたのだが、ドイツ人は床に坐らないと言って断られてしまった。
子どもたちに坐らせることでなんとか納得してもらう。
舞台の背景に、帯を並べて作った幕を、黒板などを利用して掛ける。
これが綺麗で素晴らしかったと評判で、嬉しかった。
荷物の超過料金が高いので持って行くのを迷ったが、持ってきて良かったと思った。
照明は展示用のものしかなかったが、多少変化が付けられたので
「黒髪」にちょっと変化をつけた。
入場料は5ユーロ。
安いようにも思われたが、オペラでも2階席だと8ユ-ロで見られるというから
妥当なのかもしれない。
観客数は90名。
難しいと思いお寺の付属幼稚園には声を掛けなかったとのこと、
子どもの数は少なかったが、わざわざケルンから時間をかけて来た人もいたそうだ。
本番は私のたどたどしいドイツ語の挨拶で始まり、とても和んだ雰囲気のなか
人形の動きへの反応は実に豊かだった。
「黒髪」は綺麗な舞台になったそうで、
観客が集中していく様子が人形を遣っている私にまで伝わってきた。
公演終了後このセンターの日本人所長が挨拶に見えて、
「今度来独した時はより広くて人形が見やすいお寺の本堂でやって欲しい」
と言われた。
宿舎まで片道3時間半、帰り着いたのは午前1時を過ぎていた。