タイミング的にギリギリでしたがなんとか滑り込みで見てきました「整形水」。
これまたサンサン劇場がきっかけで知った作品です。
サンサン劇場では海外のアニメもかなりの数上映されるので、いろんな作品が見られるのが楽しいですね。
さて今回の「整形水」ですが、けっこうネタバレが致命的になる作品なんですが、まあ公開から日も経っているので、まあまあネタバレオープンで感想を書いていこうと思います。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/54/36abe1debdf13efa76e1b3c7ea95f27d.jpg)
いやー面白かった!
テーマ自体は「美しさを求めて狂気に走る女性」という、ホラー作品としてはもうひとつのジャンルとなっているほどオーソドックスなもの。
しかしながら本作には、そうしたオーソドックスなテーマを掲げた作品であることを逆手に取るかのような秀逸なミスリードが仕込まれていました。
例によって本作の前情報は予告編以上の情報はない状態で見に行きました。さらに前述の通り、本作のテーマはオーソドックスなもの。なので、視聴前、そして終盤までは本作の筋書きは「整形水で美しさを一度は手にした主人公イェジが、その美しさを保つために次々とほかの美しい女性を手にかけていく」というものだと思っていました。
いやーまんまとミスリードに引っかかりましたよ。まさかラストになってああ来るとは!
いやだってあの流れだったら9割9部ジフンだけが再び醜くなったイェジの正体に気づいて……とかそういう展開を想像するでしょ誰でも。
まさかジフンの正体が……。
物語に対する個人的感動ポイントはたくさんあるんですが、その中のひとつに*「今までバラバラだったピースが終盤で一気に全部つながる瞬間」があります。本作ではまさにそれを味わえましたね。
全部つながったというか全部グルだったというか……。
見終わってみると、冒頭でイェジをいじめてたミリが結局いちばんまともだったという……。
あと吹替版の諏訪部順一さんのイケボ→ネットリ系サイコ野郎の変化が素晴らしい。
この「全部グルだった」というオチは、パンフレットに記載されているところの「三流芸能界」という巨大な仕組みがそもそもああいうものである、ということを示唆しているんじゃなかろうかと思います。
ラストのジフンの驚くべき姿も、もうキャラクターと言うよりはそうした世界の歪みそのものなんじゃないでしょうかね。
また、本作は3Dアニメーションで描かれているんですが、そのためかキャラが微妙にのっぺりしてます。この独特の「人形っぽさ」に、見ていて「虚飾」の意味を込められているんじゃないかと感じました。そういや本作、思い返してみると美形キャラ……というか、整形水を使って美形になった人物は意図してウソっぽい造形というか、わざとらしい美形になってるような気がします。
本作では、いわゆる外見至上主義がテーマの一つとなっています。主人公であるイェジもまた、その外見至上主義に囚われているひとり。その悲劇は、美しさといういずれ失ってしまうものを唯一の自分が拠って立つものとして選んでしまったことでしょう。劇中で明かされているとおり、イェジの両親は明確に彼女に愛情を注いでいました。しかしイェジにはもう両親の愛情が見えていない。ラストで幼少期の自分と両親の幻を見るイェジのシーンで、誰も、幼い自分自身でさえも彼女をイェジだとわからないのは、かつて自分が両親から愛情を受けていたことが見えなくなっているイェジの鏡写しなんじゃないでしょうか。
本作はホラーかつPG12なのでかなりグロい描写もありますが、本当にグロテスクなのは外見を美しくすることに引きずられて見にくく変容していく、あるいは変容してしまった人々なのかもしれません。
あと、スマホの残りバッテリーにはみなさん気をつけましょう。
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