毎週木曜は滑り込みの日。
そして今日はあの作品のいったんの最終上映日ということで、悪天候にもめげずにサンサン劇場に行ってきました。
今日見てきたのはこれ! ……の前に、すっかりおなじみとなって、そして今日でいったんお別れとなるこの光景を写真に収めてきました。
もうすっかり塚口の日常となったこのポスターも、いったんとはいえなくなると思うとさみしいもの。しかしまあ秋くらいにはしれっともとに戻ってそう。それが塚口。
作中の名場面が楽しめるこちらのポスターも撮影。もうこのポスターを眺めているだけでこみ上げてくるものがあります。もうどの写真も名場面。この作品は名場面でできている。名場面の金太郎飴かよ。
なんだよこの不審な空白は。
塚口のファッションリーダー秋山殿がいずこかに姿をくらましていますが、きっと戻ってきてくれるでしょう。あぶない感じで。
長い歴史のある塚口サンサン劇場ですが、間違いなくこの日が大きな境目となることでしょう。その歴史の一端を後世に残すためにも筆を走らせる次第です。
というわけで今日の1本目はこれ!
1週間限定の作品ばっかり見てるとロードショー公開の作品が後回しになってしまい、気がついたら終映日になってしまうもの。
本作も1作目を見てからずいぶん間が空いてしまいましたが、今日ようやく見てきました。
前作ラストで敵襲にあい海に沈んだと思われていたアルンモリ王子は謎の老婆に救われて生きていた! アルンモリ王子をはじめ、長兄アーディタや長女クンダヴァイ王女は密使デーヴァンからナンディニ王女による王朝転覆計画を聞き出します。
計画を阻止すべく奔走する彼らのあいだには複雑な愛憎が渦巻いており……。
前作もそうでしたが、本作もまた非常にスケールの大きな歴史絵巻となっています。そしてそのストーリーの重厚さを支えるのが壮麗な宮殿や雄大な大自然といったビジュアル。
本作は前作よりも明らかに引きのショットで背景を大きく広く映すシーンが多かったように思います。特に印象的なのが川や海といった「水」のシーン。
個人的にインドと言うとやはりガンジス川をはじめとする広大な川のイメージがあるんですが、本作の川や海はなんというか文字通り歴史の「流れ」といった感じで実に雄大。
あと、本作は珍しく?と言うべきでしょうか、我々日本人には馴染み深い仏像やお寺の描写があったのが非常に新鮮でした。でも考えてみれば本場は向こうなんだよな。
そして壮大な大河ロマンである本作の魅力といえば、複雑に絡み合った愛憎渦巻く登場人物たち。
本作はたくさんの登場人物がさまざまな思惑をもってそれぞれの運命をたどっていきますが、その中でも特にクンダヴァイとナンディニがなんというか……とても「強い」。
この「強い」はもちろん肉体的な強さではなくキャラクターとして強い。
本作の主人公は誰かと言われれば、ある人はデーヴァンと言いまたある人はアルンモリと言うでしょう。公式的にはアルンモリになるのかな。
しかし、こと存在感という点では上記のふたりが圧倒的だと思います。もうね、表情に込められている感情の分厚さたるや……。
ふたりとも出自はともかくとして高貴かつ権力のある身分にいるのでそりゃあ人前、特に民衆の前では弱さや脆さを顔に出さないし出せないわけですが、それだけに内に秘めた感情が隠しきれなくなってるシーンが非常に印象的。それが明確に出るのが目なんですよね。
かの名作「バーフバリ」のシヴァガミ様を例に出すまでもなく、インド映画の女性陣はどのキャラクターも目の力がすごい。だからこそ、その力が崩れてまるでひび割れた仮面の向こうから素顔が覗くかのような目の演技がすごいんですよね。わかりやすく絶叫したり泣いたりするのではなく、目だけであれだけの感情のゆらぎを表現できるというのが本当にすごいと思いました。本作でいちばん感動してインパクトを感じたのはストーリーよりもむしろこの点だったかも知れません。
あと生臭坊主のナンビが実にいいキャラしててうっかりデーヴァンを食ってしまいそうなくらい魅力的でした。ああいうキャラとても好き。
そして2本目。
1年8ヶ月連続上映というギネス的な記録を打ち立てたこの作品も、ついにいったんの終わりの時を迎えることになりました。
その有終の美を見届けるために、今日は平日で天気も悪い中たくさんのファンが詰めかけました。
それはもちろんこの作品!
なんかもうマサラ上映に慣れきってて、ナートゥで「あれ? 踊らなくてよかったっけ?」とか思ってしまいました。
この作品ももう数え切れないくらい見てます。今日ここに集った方の中には鑑賞回数3桁の人もいるでしょう。
わたくし人形使いも相当回数見ていますが、全然飽きないし面白さが減衰しない。むしろ見るたびに面白さが増していく……というか、なんでこの作品がこんなに面白いのかがだんだん分かってくると言うべきか。
本作の面白さを担保する要素はいくつかあります。例えば「ストーリーに遅滞がないこと」。
本作を鑑賞して、どこかのパートで退屈したという人はまずいないでしょう。なぜなら、本作は常に何らかの形でストーリーが進行しており、次から次にイベントが進んでいくから。「パートからパートへのリレーが着実に行われている」と表現すればいいでしょうか。
パートのつながりがあまりにもスムーズすぎて意識しませんが、そもそも最初の3つのパート「STORY」「FIRE」「WATER」で物語の前提を示して最初のイベントである救出劇につなげてタイトルドーンの流れが完璧すぎる。「心をつかむシーン」であるのはもちろんのこと「心をつかみ続けるシーンが連続して作品を構築している」というのがわかります。
それでdostiが終わってジェニーとアクタルの市場のシーンが終わったらすぐにナートゥ、ナートゥが終わったらラッチュ捕縛、ラッチュ捕縛からスコット邸襲撃、インターバルが終わったらラーマの回想……と、こうやって取り上げていくとわかるようにストーリーの緩急はあるのにダレないんですよねこの作品。どうなってんだ。この勢いがそれこそ最後のエッタラジェンダまでずーっと続くという……。
本作がラーマとビームのつながりや絆を描いた作品であるように、シーンごとのつながりも非常に強く、なおかつスムーズ。そして劇的。
個人的にこの「シーンごとのつながり」ですごいと思うのがタイトルからのdosti。救出劇のパートであれだけ盛り上げてるなら、普通はタイトルの後は落ち着いたパートになるはずなんですよ。しかし本作はそこからノータイムでさらにアクセルを踏むという。
そしてこのdostiのシーンでは「救出劇を経てラーマとアクタルが信頼を深める」以外にも「ラーマは反逆者を見つける、アクタルはマッリを見つけるという目的が果たせずに焦っている」「ふたりの信頼関係にはいずれ決定的な破滅が訪れる」という要素が散りばめられているんですね。
さらには終盤のバトルへの伏線であるみんな大好き肩車もここでやってるという。
作品全体の尺から見れば短いシーンであるにも関わらずカラビ・ヤウ空間に折りたたまれてるの?ってくらいの情報量が突っ込まれてるのが改めて分かります。人間業じゃねーよこんなの。
またシーンごとのつなぎ方が最高に上手くて好きなのがラーマのペンダントのシーン。ラッチュ拷問のシーンで振り上げたラーマの腕からペンダントが弾け飛ぶ→ペンダントを握りしめるラーマの手のアップ→すかさずペンダントを握りしめるシータの手のアップになるここの流れ最高に好き。例えるなら業物の日本刀でなんの抵抗もなく敵を唐竹割りにした感触がある。わかれ。
さっきから書いている通り、改めて本作を見ると3時間という長尺であるにも関わらずシーンごとの流れが非常にスムーズで、なおかつ見せ場がわんこそば状態で次から次へと来るので、いわゆる「体感5分」になるわけです。今回も見てて、「あれ? ナートゥってこんなに早かったっけ?」って思いました。dostiが終わったらすぐナートゥって感じだった。
本作は始まりから終わりまで本当に飽きない作品なんですよね。1ナノ秒たりとも観客をスクリーンから離さない。DVVからエッタラジェンダまでずーっと作品世界から心が離れません。
そして今日の上映終了後の拍手がまたすごかった。わたくし今まで上映終了後の拍手には何度も遭遇してきましたが、今日の拍手は間違いなく最長かつ最大でした。そして客席から「ありがとーーーーー!!」「また帰ってきてーーーーーー!!」の絶叫が。RRR、愛されすぎ。多分ここで上映中に蓄積された紙吹雪撒きたいクラッカー鳴らしたいナートゥ踊りたい絶叫したいの欲求が爆発したものと見られます。なんかもうRRRはマサラ上映が通常上映という認識すらありますよね。
まあ心配しなくても下手すりゃ今年中に帰ってきますって塚口だもの。
というわけで、RRRとはひとまずのお別れです。しかし、王が凱旋するようにこの作品もまたいずれ凱旋してくれるでしょう。信じて待つのみよ。
そして次は、というか明後日はK.G.Fでカラシニコフじゃい!