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主に映画、ゲーム、同人誌の感想などをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはいいトシしたおっさんのブログ。

冬コミ戦利品レビュー・東方編その17

2019-04-28 23:19:39 | 同人誌感想

 ラスト3冊!

・ムガムビル5+OMAKE BOOK(薬味さらい)
 独特のタッチで幻想郷を描くサークルさん、早くも5冊目の総集編です。
 それでは、収録作品ごとに感想を。
・アマノザコ
 人間の里で起こった正邪による人さらい事件。その被害者となったのは子鈴だった。
 前回、前々回の総集編でも、正邪は自分の意志で行動しているというよりは、むしろ天の邪鬼としての性分を制御できずに振り回されているという印象でしたが、今回は里の人間に利用されるという立場に。
 東方においてはいわゆる一般人というのはあまり表に出てこない存在で、個別の顔もあまり持たない存在でもありますが、今回の話はそうした人間たちが正邪を都合よく利用しようとする構図がなかなかゾッとします。
 さらには、天逆毎として祭り上げられたことでその存在すら歪められてしまいそうになる姿が悲痛でした。
 また正邪は、勢力に属さないいわゆる一匹狼ですが、作中ではさまざまなキャラクターによって語られていた正邪の印象も興味深いところ。
 そして、よくよく考えてみれば、東方キャラの中でも天邪鬼である正邪ともっとも元ネタ的な意味で因縁深いのは、当然毘沙門天の化身である星なんですよね。
 ラストでは、最初は読んでて毘沙門天の化身たる星は、正邪を天邪鬼として調伏することである意味正邪を救ったものだと思っていましたが、実際には星が自分を退治しに来ることを見越した上で天邪鬼として退治されることで、自分の存在を変質から守ったという展開が、まあ実に正邪らしいなあと。
 正邪は幻想郷の中では決して強い存在ではありませんが、結局変則的な形とは言え、今回の事件の紛れもなく「敗者ではなかった」んだろうなあと思いました。
 しかし、ラストで針妙丸が言っている通り、彼女が天邪鬼でいる限り……というのは、なんとも救いのない話です。もっとも、彼女自身は救いなんて求めてはいないんでしょうけど。
 そして最後はドレサグで持っていかれた……。
・望郷アラカルト
 草の根ネットワークの3人の短編集。
 「陸封の姫」、まあ人魚姫には悲恋がつきものですよね。ある意味ネクロフィルとも言えるかなこれは。わかさぎ姫の人魚としてのメンタリティが垣間見える一編。
 「赤風船」、最初のコマで脳裏に「バイトヘル2000」という単語が浮かび上がりました。なんで赤蛮奇はこんなバイトしてるんだ……。そして早苗さんが壊滅的なまでに早苗さんで安堵すら覚える。オチはカーズ。
 「始原に哭く」、赤蛮奇はこういうシチュエーション好きそうだよね……。
・厄焼
 雛のいきなりの空気を読まない発言で吹く。そして妖怪カエル女のありがたいお言葉で吹く。このサークルさん描かれるところのケロちゃんはほんといい性格してるよなあ。あと妖怪ヘビ女の方も。
 話の方はごく短い短編ですが、そこには幻想郷の神々の人との距離感というか、人が人を見る目とはまったく異なる視点を強く感じました。
・こどくのまほう
 ショッキングな冒頭から中盤まで展開がなかなか読めず、ハラハラしながら読んでいました。
 例のTシャツのせいでなにかとネタにされがちなヘカーティアですが、本作ではその力の異常なまでの強大さと、幻想郷の神々とはまた違う、ギリシャ神話由来の神の残酷性が強調されています。
 そして、最終的には人の手によって……というのもギリシア神話的なものを感じます。
 あとゲスト出演の純狐さんの瞳孔がフルオープンしてて超怖い。
 しかし魔理沙は毎回いろんなヤバそうなのに気に入られてるなあ。
・風ニモナレズ
 文と、事故で顔を失い天狗の一員として生きることとなった少女の話。テーマ的には、「アマノザコ」の逆バージョンといったところでしょうか。
 存在を歪められることを自力で堪えた正邪に対し、この少女はそれができず、人間でも天狗でもない存在に成り果ててしまった少女。
 ラストシーンの霊夢の「鳥は鳥らしく……」のセリフは、実は「こどくのまほう」の魔理沙にもかかっている気もします。
 そしてあとがきで余韻が完全に台無しじゃねえか!!!
・3×3×3…
 恒例の描き下ろしマンガ。
 これまでの総集編の描き下ろしでは、その巻に収録されている作品のネタを使った総まとめ的な話になるのが恒例でしたが、読む前は今回の巻に収録されている話でどんな構成になるのかまったく想像がつきませんでした。
 「こどくのまほう」のあとがきで、90年代の劇場アニメ的な、というコメントがありましたが、こっちは「アイテムを集めて閉鎖空間から脱出する」あたりがTVアニメの特別版としての劇場版アニメと言った感じ。
 しかしまあ、この「弱小ポジションのキャラが圧倒的に強大な敵に立ち向かう」という構図は無条件に燃えますね。前回に引き続き。正邪が非常に美味しいところをその天邪鬼としての性分を十二分に活かして持っていく展開が好き。
 あと、今回はヘカーティアを出しているので、やろうと思えば(あるいは思わなくても勝手に)話の風呂敷はどんどんインフレして広げられたと思うんですよね。しかしそこをあえて「偽りの幻想郷」という閉鎖空間に持ってきたところが非常に上手いと思いました。
 そしてオチでも台無しっぷりも好き。
・カバー裏
 こんな展開誰が予想できるってんだ……。赤蛮奇ってほんとネタ的においしいなあ……。
・OMAKE BOOK
 まあ、ヘカーティアを出した以上このネタをやるのはもはや義務と言えるでしょう。おぜうはこういうの好きそうだよね……。
 あと早苗さんは前の話で人間やめてからなんかもう完全にブレーキが吹っ飛んでるよね……。
 ケロカナちゃんはもうひどいとかそういうのを超越しており直視できません。
 あれ? おまけ本を見る限り、今回の真の勝者はケロカナちゃんってことになるのでは……?

 今日はここまで。

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