崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

中国ひき逃げの2歳児を18人が放置

2011年10月20日 06時11分25秒 | エッセイ
 昨夜NHK9時のニュースウォッチでショッキングな映像を見た。中国広東省仏山市の路上で2歳の女児が車にひかれ、倒れて苦しむ女児のすぐ脇を歩いて素通りする若い男性をはじめ通りかかった18人が助けようとせず、別の車にひかれてしまって、死亡させた映像が防犯ビデオに映っていた。廃品回収業の女性(58)が「誰の子だ」と女児を抱えながら付近を歩き回り、救急搬送されたという。
 孟子は幼児が井戸に落ちそうなことを見て黙っている人はないだろうという普遍的な心「性善説」を主張したのは多くの人は知っている。また善きサマリア人の例話は世界的に知られている。本欄では日本には正義感が弱いとしばしば触れたことがある。しかしこの事件を見ると中国社会の大きい問題点を象徴的に表すと思う。古代の素晴らしい思想家、文学者を排出した中国が長い間、社会主義、唯物主義を信条にして、教育精神も問題になっている。私は社会主義の国家であるロシアと中国を頻繁に調査旅行をしたが、ロシアはヒョードルに西洋化になった時代もあり、文学や芸術も人々の心にあり、中国とは比べものにならないほど倫理道徳の意識を持っていると感じた。
 古代文明の発祥地という自慢心をもっている国々は現在その影を残していない。ギリシャ、ローマも偉大な遺跡に比して大した国家とは言えない。歴史や伝統を現在の人がどう持ち続けるかが問題である。経済一辺倒に近代化を進める国家の恐ろしさを露呈した中国は「善きサマリア人」を教育すべきである。いつまでも経済的に競争を優先する困った隣人から善き隣人へ、百年かかっても教育が始まらなければならない。


孟子
今、ちっちゃい子供が井戸に落ちかけていたとする。これを見たらどう行動するか?誰でもこれはいかん!とあせってかわいそうだ!と思って助けるだろう。その瞬間、これをネタに子供の父親母親に取り入ってやろう、などとと考えないだろう。地元の英雄になって友達から賞賛されたい、などと考えないだろう。見殺しにした薄情者めと悪名を受けるのはいやだ、などと考えないだろう。こうやって考えれば、惻隠の心(かわいそうだ、と思う心)がないのは、人間でない。

イエス
イエスは「ある人がエルサレムからエリコに下って行く途中で,強盗たちに襲われました。彼らはその衣をはいだうえに殴打を加え,その人を半殺しにして去って行きました。たまたま,ある祭司がその道路を下って行くところでしたが,その人を見ると,反対側を通って行ってしまいました。同じように,ひとりのレビ人もまた,そこまで来て彼を見ると,反対側を通って行ってしまいました。ところが,その道路を旅行していたあるサマリア人がやって来ましたが,彼を見て哀れに思いました。それで,その人に近づき,その傷に油とぶどう酒を注いで包帯をしてやりました。それから彼を自分の畜獣に乗せ,宿屋に連れて行って世話をしたのです。これら三人のうちだれが,強盗に襲われた人に対して隣人になったと思いますか」。彼は言った,「その人に対して憐れみ深く行動した者です」。するとイエスは言われた,「行って,あなたも同じようにしてゆきなさい」。(ルカ 10:30‐37)

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2 コメント

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道徳・社会に思う (高木章)
2011-10-22 14:43:33
はじめまして。東京在住の高木章と申します。

私は某放送局に勤務するかたわら、長年趣味で続けてきたオーケストラを通じて、素晴らしい指揮者と数年前に出逢い、音楽を通じて障がいのある方とも「ともに生きる社会を」、そして今年は東日本大震災復興にむけて「がんばろう日本」…そんな活動をしています。

19日の夜報じられたこの中国のひき逃げ事件、おおきな反響を読んでいますが、私もブログに3つほど連続して記事を書きました。よかったらいま最新記事(トップのメニュー紹介の下より)をお読みいただけたら幸いです。

人の心、社会・時事に思うこと、本当の豊かさって何だろう…?
音楽の話題以外にそうした社会的なテーマも書いていますので、よろしかったらそちらもご覧いただけたら幸いです。
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拝読しました (崔吉城)
2011-10-24 15:53:44
 多様な内容、特に音楽などでのご活躍を伺いました。これからも時々拝見します。
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