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西行全歌集ノート(41)




■旧暦6月7日、水曜日、晴れ

土曜日は、公開講座『ルカーチの存在論』25周年第3講。青砥のかつしかシンフォニーヒルズ別館会議室にて。今回も非常に面白かった。受講者が講師になり講師が受講者になって、互いに、議論し啓発し合いながら、自分の問題意識を深めてゆく。ここには、知識を伝える偉い先生はいないし、カリスマ的な知識人もいない。生活の営みと批判的な知の営みを相互に媒介する。われわれが、アカデミアを名乗る所以である。

前半は、「精神医療の現場から」と題して報告があった。この報告で衝撃的だったのは、イタリアは1998年に精神病院を全廃したことである。それに代わって地域精神保健センターによる在宅ケアが中心になっている。在宅ケアと言っても、形だけのものではなく、苦悩をシェアできる濃厚なコミュニケーション、信頼関係、連帯感、対等な人間関係など、高度に人間的なものである。精神病患者は、犯罪に関与するとか、危険だとかといった偏見は、いまだに、根強くあり、これが精神病者の強制入院や隔離を正当化してきた。これについては、アメリカ、イタリアで調査した結果から、患者の犯罪率は非常に低く、狂気の状態で犯罪に関与した事例は、むしろ、精神病院のあった時代に多かったということがわかってきている。精神病の危険性自体は、本来の病気自体から引き起こされたものではなく、社会の関与の仕方にあるのである。イタリアで改革をはじめた精神科医のフランコ・バザーリアは、フッサールやサルトルの影響が大きく、「人は自分の狂気と共存でき、人生の主人公として生きることができる」という信念を持っていた。この信念自体は、立派なもので患者にとって正しいと思うが、病を経験した者からすると、「ひとは狂気と共存してはならない」のである。なにより狂気から脱出することが先決なのである。狂気は、個性でもかっこいいものでもなく、また、何らかの才能の前触れでもなく、ひたすら不幸な状態の持続なのである。それは、暗く冷たく寂しく、色彩のない恐怖の支配する死の世界である。2001年時点で、世界の精神科病床185万床のうち、日本には32万床がある。世界全体の約5分の1に相当する多さである。この現実は、実は、日本社会が、先進諸国の中でも、とくに、ひどい物象化の支配する、交換価値に規定された人間関係の社会であることを示唆している。

第3講の様子は、公式ページon FBで確認できます。ここから>>> 内容的なアップは、後日になる予定です。

日、月、火と午前中仕事、午後から外の仕事に出て、きょうは、終日、うちで仕事の予定。翻訳の仕事は難航している。まだ、スタートできない。現在の状況を考えると、一度、選択したテキストに迷いが生じ、原著者にその旨率直にメールしたら、いろいろ、書評を送ってきてくれて、これを読んで再考してくれと云う。そして、きのう、新刊が出たので、これについても検討してみてくれと云う。ドイツ語版が先に出て、英語版が7月末に出るらしい。新刊は、タイトルとアマゾンの概略しか読んでいないが、どうなのかなと思っている。つまり、批判的な視座があまり確保されていない印象だからだ。これについても、実際に検討してみないと、わからないだろうけれど。そんな状態で、やや、混乱している。



旅人の分くる夏野の草茂み葉末に菅の小笠はづれて    西行「山家集」夏

Traveler pushing his way
through a summer meadow
grasses so thick
his sedge hat seems
to float over their tips

translated by BURTON WATSON


※ 夏野を「a summer meadow」と訳していて、ちょっと、意外だった。このうたは、背丈まである草を歌っているが、meadowは辞書にはたいてい、放牧地のような低い草を意味するとなっている。grassesも個々の草に注目した表現で出てくる。この言葉もNEWOEDによれば、vegatation consisting of typically short plants with long narrow leavesとなっていて、typicallyと断ってはいるが、やはり背丈は短い。全体を読めばわかるが、草の先端に菅の帽子が浮いて漂っているみたいだと言っているから、このgrassもmeadowも、あきらかに、人の背丈ほどを前提にした草である。grassesもmeadowも、こういう使い方もできる、ということが発見だった。おそらくは、夏草に相当するあの野蛮に生い茂った丈高い深い草を区別する言葉が英語にはないのだろう。


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一日一句(1181)







夏川や珠のごとくに硝子片






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一日一句(1180)







かなかなや後後の世のかなかなや






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一日一句(1179)







身の内の深山ひとつ閑古鳥






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一日一句(1178)







夏深き染井吉野の幹しづか






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戦争法案批判




■学生さんたちの戦争法案廃案運動、SEALDsの安保法制動画がよくできていますので、ご紹介します。何度も、権力側の妨害で削除されています。お早めにご覧ください。




【#本当に止める】6分でわかる安保法制 720p






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詩的断章「燃えるうさぎ」







燃えるうさぎ



夏の風には色がある
大の字に寝れば
風の耳は青
風の足は黄
風の胸は紺
娘がまだ小学生だったころ
からだも眼も真っ赤な
うさぎの画を描いてきた
どうして赤いの
と聞くと
人参ばかり食べているから
と云う
四角く角ばった
うさぎは
どこかユーモラスで
どこか哀しい
それから
死の灰が街へ降った
妻と娘は家を出た
うさぎは真っ赤に
燃えていた
夏の風には色がある
うさぎに吹く風を知っている
それは
数えきれない欅の葉に生れた
数えきれない
燃える夕日の風である





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公開講座『ルカーチの存在論』25周年第3講







■公開講座『ルカーチの存在論』25周年第3講が開催されます。ご興味のある方の参加をお待ちしています。

※ プログラム 
(前半)精神医療の現場から―真喜志優介
(後半)『ポストモダン状況論』を読む 第3章 「二つのマルコポーロ」― 外岡則和

※ 日時 7月18日土曜日午後6時~10時

※ 場所 かつしかシンフォニーヒルズ 別館会議室(最寄駅京成線青砥駅)

※ 会費 2,000円(年会費一括払いは年10回で15,000円)

◆土曜日の「アベ政治を許さない」全国一斉スタンディングデモのあとに! 現在の問題はすべて関連しており、その関連性、構造的暴力を批判的に解きほぐすために! 一緒に、考えましょう。議論しましょう。そして行動しましょう。





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一日一句(1177)







まぼろしとうつつのあはひ白日傘






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詩的断章「いいひと」







いいひと


というのは構造的暴力に眼をつぶるひとである
だからいいひとなのだ
構造には手を触れず
いいことを言ったりやったりする
自分はいいひとだと思っている
利権体制に手を触れないことを
中道と心得ている
いいひとは
とんでもないひとである

いいひとは
権力に弱い
えらいひとには
さからわないように
プログラムされているからだ
そう いいひとはロボットである

いいひとは
趣味人である
じぶんの悪にうすうす気がついているので
政治を自分の世界から疎外して
ないことにする
宗教と政治は話題にしない
むかし
ゴダールは卵を焼くのも政治だと言った
いいひとは
閉じこもる
自分の世界に

そして恐れる
自分を開いている人々を





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