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詩的断章「根」













根がある
それは確かなことだった
みどりの夜
藤の長い蔓と
わたしは
水を奪いあう仲であるが
わたしの根は
見えない
その部屋へ帰るたび
根こそぎにされていく根がある
止まった時計に
散乱する電池
足の折れた座卓
黄ばんだ本の頁は
サン・シモンのところで
折ってある
三人で対話する術を
人類はまだ見いだしていない
わたしはふたりのわたしと
対話してみる
引越しの後始末は
わたしの始末
ふたりはとても
始末できないとわたしに云う
夏暖廉をかけたのは
つい昨日なのだが
もうずっと昔のことなのだった





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