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公開講座『ルカーチの存在論』27周年第5回






危機はいつも危機ではない顔をしてやってくる。2017年10月22日の第48回衆議院選挙がまさにそれである。安倍政権5年の成果を問う選挙ではなく、モリカケのまやかしを問う選挙でもない。この選挙は、日本がアメリカと一体化して、新しい侵略戦争、新しい国際紛争を行う社会体制を完成させるための選挙である。自民党は、公約に憲法改正を入れている。自衛隊を、九条第2項を変えて明文化すると言っている。このことの意味は、北朝鮮の脅威から、日本を守るために、自衛隊を明文化するのではない。自衛隊の指揮権はすでに米国にある。米国の世界戦略が前提の自衛隊の明文化なのである。端的に言って、米国が自衛隊を海外展開しやすくするための加憲である。安保法制、共謀罪、秘密保護法は、このための法体制である。戦争社会体制の完成に障害になっているのは、九条のみである。

九条を改悪するための方法論は、ひそかに、公約に入れている。それは「緊急事態対応」という名称で呼ばれている。2012年に自民党が憲法改正案を発表したときに、その第9章で「緊急事態」を規定している。この端緒になったのは、東日本大震災である。災害のための法律はすでに整備されており、新たな立法の必要性がないことは、多くの人が指摘している。中でも決定的なのは、国家に権限を集中させても現場のニーズに対応できない、という地方自治体からの意見である。被災者の自治体に権限を統一したほうがはるかに、災害対応には有効である。このため、現在では、「北朝鮮危機」を利用した緊急事態条項の根拠づけがさかんに行われている。緊急事態条項とは、端的に言って、憲法の停止のことである。憲法で保障された諸権利がすべて停止される。さらに、自民党案には、緊急事態解除の規定がない。期限がないのである。緊急事態において衆議院の解散延長もこの改正案には含まれるから、論理的には、憲法停止状態は、永久に継続できる。総理への権限集中が無期限に継続された独裁体制が出現する、ということを意味している。九条は静かに死に絶える。これが麻生副総理の「ナチスの手口に学ぶ」ということである。新しい侵略の対象、新しい国際紛争の種を創りながら体制を維持する戦争社会体制はこうして完成する。

危機はいつも危機ではない顔をしてやってくる。2017年10月22日の第48回衆議院選挙がまさにそれである。自民党・希望・維新・日本のこころといった改憲で連合可能な極右保守政党の得票が2/3を超えれば、改憲発議が行われ、国民投票にかけられる。このとき、資金に上限のない改憲運動が広告会社を中心に全社会的に行われるだろう。「北朝鮮危機」は格好の利用材料である。「北朝鮮が攻めてきたらどうするのか!」そういう状況をつくらないために政治家が存在する。答えは、安保体制を廃棄して北朝鮮と平和友好条約を締結することである。それは日米合同委員会などの日本支配の多くのメカニズムを一掃し、沖縄をはじめとした国内の米軍基地を一掃することも意味する。

デッドラインは156議席である。改憲阻止の野党勢力でこの議席が確保できるかどうか。大量に人を殺し大量に殺される社会体制へ向かう道を選択するのかどうか―こうした危機の深さと学問はつねに連動していなければ、それは偽物である。




◆公開講座『ルカーチの存在論』27周年第5回は、つぎのとおりです。

(前半)石塚省二著『近代の終焉と社会哲学―東欧革命のアンプリカシオン』を読む(第4章 F・W・ズナニェツキの西欧文明批評)(発表者:冨田陽一郎)
(後半)『生命と情報』(発表者:鈴木孝利)
(後半)ジェルジ・ルカーチ著『社会的存在の存在論』日本語版作製の試み(発表者:尾内達也・和田裕)

★日時:2017年平成29年10月21日(土) 午後18時-21時
★場所:中央大学駿河台記念館(最寄駅 JR中央線御茶ノ水、東京メトロ新御茶ノ水)
★会費:2,000円

※ 講座終了後、デリ・フランス御茶ノ水店で懇親会があります。参加自由。大いに本音の意見交換をしましょう(だいたい、費用2,000円ほど)。懇親会の議論が、表の議論より面白いという評価もあります。

※ 近代世界の終りの中で起きている諸々の出来事について、根源的な思索と実践を重ねるために、ご参加をお待ちしています。

※ 過去の公開講座の様子は公式ページからご覧になれます。ここから>>>







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