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詩的断章「H」







H





空耳か
裸木の空を見上げる
叫びとも悲鳴とも
つかないものの
うねり聲が聞こえてくる
北風を引き裂き 樹々を震わせ
あっけらかんと
明るい虚空なのだが


茶碗に
欅から雪の影が
延びている
他者は 隠されている
秘曲のように


Aは黒
Eは白
Iは赤
Uは緑
Oは青


ランボーはそう歌ったが
母音の秘曲には
H
が隠されている
音のないのHが


Ahhhhhhhhhhhhhhhh
Ehhhhhhhhhhhhhhhh
Ihhhhhhhhhhhhhhhhh
Uhhhhhhhhhhhhhhhh
Ohhhhhhhhhhhhhhhh


すべての母音は色を失い
裸木の
虚空へと
いま落ちてゆく
その微かなうねり-
他者は 隠されている
秘曲のように


空耳か
Hhhhhhhhhhhhhhhhh
風が梢を渡った
わたしはH
ひとりの
他者である


初出「浜風文庫」








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一日一句(1388)







雪催すなはち花待つ心かな






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