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台湾向け武器売却と普天間問題

2010年02月01日 21時48分20秒 | 外交問題
オバマ政権の対アジア外交は、日本の特定勢力の者たちとワシントンにいる古いタイプの知日派の誤った共同作戦によって、苦境に立たされることになった。ワシントン界隈の国防族や対日外交利権者たちの中で、将棋の「捨て駒」の意味や効果について理解できる人間が殆ど存在してないということが、その大きな要因であろう。彼らの言う通りに交渉を進めようとすれば、失敗の罠に嵌るということである。それは、ハマってみるまでは「判らない」のだ。現実に失敗してみるまで、自らは気づくことができないのである。


まず、鳩山政権での日米同盟関係について、殊更問題視して取り上げたことが最初の躓きであった。特に、これまで日米同盟というネタで既得権益を確保してきたような、二言目には「国益、国益」と啼く鳥みたいな連中が、脅し半分で大袈裟に騒ぎ続けたのが何よりのマイナスだった。「給油活動は日米同盟の象徴」「給油活動停止は日米関係を壊す」等々、自分たちの築いてきた立場と特権を守ろうと必死になったわけである。彼らにとっては、新たな日米関係なんぞを構築されようものなら、これまでの自分たちの役割を取り上げられるのだから。

何かといえば、「国益」だの「安全保障」だのといった抽象的用語に逃げ込んで、何らの説明もしないのが常套手段である。彼らのいう「国益」というものがどういった定義ものであり、それがどのように定性・定量的に評価できるか、或いはどのように比較検討することができるのか、といったことを明らかにしている者など見たことがない。単なる「マジック・ワード」でしかないのである。煽動家というのと同種のもののように見える。


こうして、鳩山政権は元々が稚拙な外交手腕であったところに、外野の無分別な煽動が加わって、お得意の迷走が始まったのである。煽動家たちの言葉に反応してしまい、発言がふらつくわけだ。総理も、閣僚も。多くの国民には、何が議論のポイントなのか、なんてことは判るわけではないのだ。発言の声の大きさによって印象付けられてしまうだけである。要するに、専門外の人々を煙に巻くという常套手段が、煽動家たちによって実施されたということである。そういう曖昧な認識でしかない大衆によって答えられた、「世論調査」と称する煽動家たちにとって非常に都合の良い数字を用いて、彼らの主張の正当性を改めて大衆に印象付けることを可能にするわけである。


この手口は、普天間基地問題についても、同じように用いられただろう。
米国にとって、普天間基地が軍事的にはどういう意味を持っているか、ということは、いくつかの答えがあるだろう。それは、何も間違いというわけではない。どんな家庭にだって、例えば「自家用車があれば…」という理屈を考えるのは、そう難しい話ではないだろう。それと同じだ。普天間基地、或いは普天間代替施設があれば、「こんなことに使える、利用できる、利点がある」という理由を付けることなど、そう難しいことではないということだ。普通は、そこに比較検討というのがあるわけだ。先の話で言えば、自家用車を「持っている時」と「持ってない時」だ。

ところが、日本の、安全保障の専門家と称する連中が能書きを垂れる時には、「デメリット」を説明した人間など誰一人として見かけたことがない。普天間に基地があることにより、軍事的にどういった劣位が考えられるか、というものが一切ないのである。どうやら、彼らにとっては万能の、夢のような話であるらしい。副作用のない、「夢の薬」みたいなものである。そういう連中の説明は、信頼に値するものではないということは、このことをもってしても自明というものだ。参考までに、基地の騒音だの、周囲の住宅地だの、そういうのは軍事的理由とは呼ばないだろう、きっと。


日本の特定勢力が大袈裟に騒いだお陰で、事態が悪化したことがあったのだ。
その一つは、米国が日本に譲歩をするかのような印象を持たれてしまうことである。鳩山政権の「日米同盟見直し」みたいな路線ではないかと勘違いされやすい状況に、わざわざ陥ってしまったようなものだ。ここまで毎回毎回大騒ぎしていると、海外メディアの中で注目している人間の数もそれなりに増えてしまい、米国は退くに退けないよね、ということになってしまうだろう。今更、譲歩なんてできない、ってことだ。まるで、日本が強硬に追い出すという姿勢を貫いて、それに根負けして譲歩したかのような印象、ということだ。そういうのを避けたい、というのは当然で、だったら、問題を大きくしないようにしておけばよかっただけである。もし方針変更をする場合でも、譲歩した印象をもたれにくいからね。

それを、何らの思慮もないような国内連中が、大騒ぎして反対したものだから、"Futenma"の関心が高まり、米国政府の会見においても質問などに取り上げられてしまう、ということになるわけである。賭け金を釣り上げる、とはまさにことのことだ。


これ以上にまずかったのが、台湾問題をほじくり返されたことだった。
元々普天間問題が、日米の2国間問題であるうちは、まだ政治的に大きな話題とはならないだろう。特に米国にとっては、そういう位置付けのものであったであろう。しかし、台湾問題ということになると、これはただの日米間の話ではなくなる。米国のアジア地域での立場という、重大なメンツがかかってきてしまうということだ。これが何よりもまずかった。
このことは、朝鮮半島有事の話なんかよりも、はるかに重い話なのだ。在韓米軍再編は、韓国の実力と役割向上ということで、評価できるからいい、という面が大きいだろう。対北朝鮮との関係では、十分韓国が優越していると評される部分は多い、ということだ。ところが、台湾ではそうはいかない。台湾は、対中国というのが評価対照であって、韓国vs北朝鮮という同じくらいの粒を比較しているものではないからだ。

なので、台湾問題に目を向けさせたことが、何よりも失敗だったのだ。どうして台湾問題が浮上してきたかといえば、これまた思慮の乏しい連中が「在沖海兵隊は台湾にヘリで飛んでゆく」という、殆ど現実には実行されないであろう役割を普天間基地の部隊に与えてしまったが故である。こういう話を内外に―特に当事者たち、台湾と中国―に広く知られてしまうと、その可能性がいかに乏しくとも、普天間基地にいた部隊がいなくなることは、あたかも「台湾を見放した」というシグナルとして受取られるかもしれない、という危惧を米国が抱くことになってしまったのではないか。米国にとっては、台湾への強い「支援メッセージ」を送る必要がある、と判断せざるを得ない、というであろう。

これが、この時期の「台湾への武器売却」という話が出された理由だろう。


いずれにせよ、もしも普天間基地の代替施設を沖縄以外へ移転してしまった場合、「過ったシグナルとなってしまうのではないか」という危惧を増大させたのは、日本の既得権益死守組の連中と、米国側担当者の杜撰な対応だったであろう。「過ったシグナル」とは、一つに日本が米国から離れて親中路線に邁進するとか、アジアからの米国外しを目論んでいるのではないか、といった、空想的な話である。もう一つが、米国は中国とのG2協力関係を築くことに精を出し、台湾のことを見捨ててしまうのではないか、ということである。これが、賭け金を釣り上げてきた効果に他ならないわけである。

そう受取られてしまうのではないか、という不安は、こんなに話を大きくしたりしなければ、生じることはなかったはずである。普天間問題を誰の目にも大して触れることもなく処理しておけば、たとえ米国が譲歩したとしても、これほど問題になどなることはなかっただろう。米国内でこの話を理解できる人間など、極めて少数しか存在しなかっただろう。かなりの日米関係のマニア的な人くらいだろう。だから、米国内で譲歩への強烈な批判や反対など起こるわけがないのだ。その程度の問題なのである。また、韓国や台湾にしても、知ってる人は殆ど皆無に等しかっただろう。在沖海兵隊の規模がフェードアウトしていったとしても、今ほどには関心を持たれることもなかったかもしれない。


だが、思慮の浅い連中が大騒ぎをして、問題を大きく成長させてしまったので、状況は一層複雑になった。そういう連中を動員したのも、焚き付けたのも、当然のことながら誰かがいたわけで、その代償を払うことになるだろう。

捨て駒というのは、捨てることにこそ、その真髄があるのである。誰がどう見ても、タダで捨てるのは損だろう、と考えがちなのだが、敢えて捨てることで勝利を導くものなのである。そういう考え方が出来る人間が、米国側にはいなかった。
賭け金の小さかったうちに普天間を譲っていれば、別な部分で日本から得るものがあれば、政治的には十分釣り合っていたはずである。しかし、ここまで大きくしてしまうと、見合いのものも当然に価値の大きいもの以外には受け入れられないということになってしまうので、簡単には譲歩できないということになってしまうのだ。それほど大きなものとは、何があるか?
直ぐには思い浮かばないけれども、簡単にはいかないことに違いはない。





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