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経済学は難しい6

2005年03月21日 13時09分00秒 | 経済関連
以前の記事(経済学は難しい5)に幾つかコメントを頂いたので、思ったことを記事に書いてみます。

経済原理とか理論を考える時、時間や在庫量といった要因はきっと無視できないのだろうと思います。全部に当てはまるのかどうかは判りませんが、恒常的状態に近づくほど、それはそれで効率化が図られるのだろうと思います。トヨタのカンバン方式とか、確かに有名になったものでもありますね。これが、古典的な経済理論と大きくかけ離れているか否かは、私の知識では判断できないのですが・・・。


昔、「たまごっち」という商品が登場した時に、経過時間と伴に、品切れのため深刻な在庫不足に陥りプレミア状態とも言える状況となったように思います。つまりこの状況下では、収益優先なら在庫の心配よりも生産速度を出来るだけ上昇させた方が一時的には儲けが大きいですが、その後「模倣品」とか「海賊品」などが市場に登場して「たまごっち」関連市場は全体として下落し、在庫が積みあがることになります。本家の商品も大きく影響を受けます。最大に儲けようと思う時、「たまごっち」にカンバン方式は有効かどうかは、私には判りません。観測する時間帯(過熱中かブーム終了後か、リバイバルブーム後か)によっても違いが出てくるように思います。収益効率とか生産・在庫・需給・価格などは変数が多くて、正確な記述が難しいのかな、と感じます。


加えて市場の消費者や投資家、生産者(経営者)の「心理」というかなり不確定な要素が時間という軸の中に存在することが、記述を困難にさせるのだろう、とも思います。これが定量的に評価でき、経済原理や理論に正確に組み込むことが出来るならば、かなり現実の現象に近い記述も可能になるのではないかと。


ブラック・ショールズ理論にしても、理想的なオプション価格を考慮する上では役立ちますが、この理論通りの変動が必ず起こるとも言えません。あくまで判断材料の一つに過ぎず、現在価格が割安と考えるかどうかの判断に用いられると思いますが、割高と判断されたにも拘らずもっと価格上昇となる株もあれば、割安と判断されたのに全然上がらないものもある。当然突発的な出来事(何処かの国の経済危機とか大会社破綻とか天災被害とか・・・・色々)は予測できないし、市場参加者の心理がそれほど判るわけではないので、連想買いとか逆の売りとかも判断できないし、暴落のような雪崩現象も反映されないし、バブルのような暴騰も反映されない。現在の理論というのは、そういうレベルなのではないか、と思っています。


昔の景気刺激策が、現在の経済状態に有効か無効か、というのも、正確に判断ができにくい部分があると思う。部分的には有効だが、全体としてはそうでもないとか、かえって逆効果ということも有り得るかもしれない。これは、複雑化したモデルであれば、そういうふうになってしまうんではないかな、と感じます。


例えば、人体の中にある普遍的な物質に「アドレナリン」があります(エピネフリンとも呼ばれる)。時々スポーツ選手とか芸能人などのコメントでも用いられますね。「アドレナリン出まくりでした」のような感じで。これは生体内の殆どの細胞に作用しますが、その作用様式は複雑で個別に観察すると本が何冊も書けるほどです。


一般的に知られる反応としては、心臓が止まりそうとかの時に医療系ドラマなどで「ボスミン!」とかドクターが叫んでたりしますが、これは商品名であって一般名ではありません(「ホッチキス」といいますが、これはホッチキスさんが作ったことから付けられた商品名で、一般名は「ステープラー」ですね。でもよく知られるのは「ホッチキス」の方で、このような一般名称化したものは結構あります)。アドレナリンの作用は、心臓をドキドキさせたり(恋ではありませんよ、笑)、血流を多くしたりする作用があります。ですから、緊急薬品としてよく用いられる古典的薬物ですね。ウソをついてバレそうになった時、心臓が「ドキリ」としてドクドクと鼓動が感じられたりするのも、このアドレナリンが体内で分泌されて心臓や血管系に作用した結果、そうなるのです。


人体は非常に精密に出来ている複雑なモデルですが、許容範囲も当然広く(そうでないと直ぐに死んでしまう)、ある一定限度までには耐えられるように出来ています。ですが、アドレナリンを許容量以上に投与されると死にます(そりゃそうだ)。体内成分であっても危険であることは間違いないのです。また、作用する量が少量の時には、心臓のポンプ機能(バクバクして血液を送り出す量が多いか少ないか)の増強よりも末梢血管の作用が先に出るため見かけ上血圧が上昇しますが、それよりも多くなってくるとポンプ機能がはっきりと亢進し(心拍数が増え、一回に送り出す量も増える)、末梢血管の血流が増加(血管が拡張して筋肉などに多く血液を送る)するので、見かけ上血圧は低下する作用となります。ですが、全力疾走するような場合には、他の体内物質の作用もあるため結果的には心拍数も血圧も上昇するのです。このように、非常に複雑なバランスになっており、同じ物質を作用させても反応はことなります。これが細胞レベルということになりますと、ある種類の細胞に対しては「促進」的に作用し、別な種類では「抑制」的に作用するというふうに、全くの逆の現象となりますし、当然個体差もあります。これは、同じ1mgを作用させても、レセプター(アドレナリンがくっついて作用する受容体)の量とか分布、個人の体格とか筋肉量など、様々な変動要素があります。従って、「アドレナリンをどのくらい投与すればよいか」というのは、大まかに体重当たりこれくらい、という量が目安としてありますが、実際の投与段階では、「投与してみなければ正確には判らない」ということになります。


経済理論もこれに似ていると感じており、ある細胞や組織で見た場合には概ね正しくとも、他の細胞・組織では効果がない、とか逆の反応となってしまうとか、個体全体で見た場合にはまた別な現象として捉えられるとか、そういう違いがあるのではないでしょうか。


非常に有名となった「バイアグラ」(これも商品名ですね)は、血管を拡張させる作用がありますが、全身に作用するのではなく、ある程度の「組織特異性」があります。そのためにED治療薬として用いられますが、元々薬が酵素系のものですので、これに影響を受ける他の物質(一般的には飲んでるお薬ですね、心臓の治療に用いられる薬剤などです)は、作用の仕方に影響を受ける場合があります。この副作用によって死亡例が報告されていますね。このように、たとえ「あそこにしか作用しない」といううたい文句であっても、個体の特定状態の時に作用させてよいものかどうかは、難しい判断となる場合もあり得るのです。


経済政策とか金融財政政策というものも、これと似ており、症状とか個体の特性を理解しようと(=経済理論を研究するとか学問的に分析するとか)努めてみますが、完全なものとしては判らないですし、とりあえず血流を増やす作用がある薬(例えば、バイアグラとかボスミンとか)を使おうか、という判断も成り立つかもしれないのですが、薬剤選択、使う量、時期などに誤りがあれば、症状は回復しない、ということになりますね。


酔狂人さんが指摘されていた、時間という要素も大切な場合が多々あります。生物の活動に合わせて、時間周期による体の変化も当然ありますし、薬の利き方にも違いがあります。なので、結論的には現状の経済理論は色々あるでしょうが、限りなく一般化された法則とか公理のようなものというのは、見つけるのがなかなか困難なのではないのかな、と感じます。また、診立てによっては、意見が色々出ても不思議でもないのかな、と。

「今、心拍数が低いから高くなるようにアドレナリンを投与しよう」
「アドレナリンは劇薬だから慎重に投与すべきだ。もっとマイルドな薬を投与しよう」
「それでは効果がない。少なければ逆効果なんじゃないか」
「いや、足の筋肉が多く酸素を消費しているから、そこの血流を絞ろう」
「そうではない、贅肉が多いのが負担になって問題だから、脂肪燃焼がいい」
「そんなんじゃ、心臓はもっと弱ってしまうよ。もっと、全身の血流を増やそう」
「末梢にばかり血が集まってるじゃないか。足の筋肉を減らそう」
・・・・・・

こんな感じで延々と続くような・・・実際はどうなんでしょうか?


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
長い~ (こねこ)
2005-03-22 16:18:15
まさくにさん、こんなに長い投稿を書くのにはどのくらいの時間がかかるのでしょうか?



アタシだったら三日くらいかかるかも。
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供給曲線の問題をまとめてみました (酔狂人)
2005-03-23 07:20:55
トヨタ生産方式やTOCと供給曲線との問題をまとめてみました。

http://d.hatena.ne.jp/suikyojin/20050323
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Unknown (まさくに)
2005-03-24 00:25:55
>こねこさん

いつもすみません。意味無く長かったりします(泣)

たまに仕事中も文章が頭に浮かんじゃったりします。



>酔狂人さん

有難うございます。そちらにお邪魔しました。
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