読売新聞に「政治の現場」という欄がある。以前、主に北朝鮮外交について興味深い連載があったのだが、今はその続編として「続 小泉外交」というタイトルでイラク戦争に関わる連載が続いている。前のシリーズも良かったのだが、今のシリーズも私的には面白く読んでいる。いつの時代の出来事も、人間の考えや行動が歴史に結びついていると思うと、それぞれ物語があってとても面白いのです。はやりフィクション以上に、真実の物語というか出来事の舞台裏は興味が尽きない。
これは、女性週刊誌とか低俗なテレビ番組(こんなことを言うと非難されるかもしれませんが、私の中での興味ランキングが”低い”という意味です)などに見られる、読者や一般人出演者が語る実話に、多くの人の興味が惹きつけられるのと同じです。真実の方が想像を超えた物語であることが多く、だいたい「えーっ!信じられない」的反応となってしまうのですね。私などはほとんどそうです。関係ない話に脱線しました。
さて、先程の「続 小泉外交」ですが、3/18日付の第7回の記事は特筆するべき内容でした。これを取材した記者を褒めてあげたいです。以下に、一部分だけ抜粋したいと思います。
米同時テロ後に米政府から非常に頼りにされた1人の日本人外交官がいた。
・・・中略・・・
今も情報の最前線にいるため、外交官の名前を明かすことはできない。ここでは、彼をXと呼ぶ。
・・・中略・・・
Xは事件当日の夜に、複数のルートからマスードの死亡を確認し、東京の外務省に打電した。「世界で最も早かった」と言われる。同時に不安を覚えた。
・・・中略・・・
マスード暗殺が現実となり、Xは「今後、とんでもない事件が起こるのではないか」と心配した。予感は的中した。2日後、遠く離れた米東海岸で、最悪の形となって。
・・・中略・・・
同時テロの直後、Xの名前を挙げて日本政府に協力要請した。米国の情報機関にはアフガン国内の人的情報(HUMINT)が決定的に不足していた。
・・・中略・・・
日米間の情報協力では、日本が米国に依存する割合が圧倒的に高い。米国同時テロにおける今回のような情報提供は極めて異例だ。隠れた対米支援だった。
こんな感じで、情報の意義が外交と絡めて書かれていました。ここで重要なことは、同時テロ前の情報の意味でした。この重要性がもっと認識されており、米国側が掴んでいた情報と考え合せれば、何かの形が見えたかもしれません。そして、米国が推進してきたSIGINT(signal intelligence)重視には限界があることを示していました。結局のところ、テロリストも人間なのですね。人の繋がり、人脈というものが、必ずあるということですね。satellite+SIGINT は万能ではない、HUMINTとの組み合わせが有効、ということでしょう。冷戦終結後、昔で言うスパイたちの多くは用済みにされてしまったり、長年作り上げてきたネットワーク組織は崩壊(引退したり予算がなくなったりでしょう)したりで、大きく偏りが出来てしまったことが、米国のHUMINT弱体化の原因かもしれません。
日本は元々情報組織も、特別なSIGINTも持たないですから、概ね外国頼みであると思っていましたが、外務省には優れた人材がひっそりと存在していたということでしょう。戦前の外交官は、有名になった『ちうね』の活躍ばかりではなく、多くの優秀な人材がいました(と、私は評価していますが)。日本の為に活躍した人達は、今よりもずっと多かったと思います。最近の外交官たちの体たらくぶりには(公金を好き放題使う、裏金にする、絵画や家具を公金で増やす等、きりがないな)無念を通り越えていましたが、Xのような活躍を見せる人がまだいたんだな、と心強く思いました。同時に、このような人材育成を外務省はきちんとやってくれ、とも思います。前から書いてきましたが、外交・防衛政策は表裏一体であり、インテリジェンスを重要視する意味が理解される出来事であると思うし、また、これを紹介したこの記事に本当に感心しました。
地下鉄サリン事件後丁度10年ということで、当時の事件の反省やその後のテロ対策の取り組みとか、安全性確保への問題提起なども行われています。このような時期ですから、もう一度行政側も国民側も、日常の中にある危機とか万が一の事態への対応とかを考えてみるよい機会かもしれません。
過去記事:
防衛政策への提言
統合情報会議
安全保障あれこれ
防衛情報とインテリジェンス
これは、女性週刊誌とか低俗なテレビ番組(こんなことを言うと非難されるかもしれませんが、私の中での興味ランキングが”低い”という意味です)などに見られる、読者や一般人出演者が語る実話に、多くの人の興味が惹きつけられるのと同じです。真実の方が想像を超えた物語であることが多く、だいたい「えーっ!信じられない」的反応となってしまうのですね。私などはほとんどそうです。関係ない話に脱線しました。
さて、先程の「続 小泉外交」ですが、3/18日付の第7回の記事は特筆するべき内容でした。これを取材した記者を褒めてあげたいです。以下に、一部分だけ抜粋したいと思います。
米同時テロ後に米政府から非常に頼りにされた1人の日本人外交官がいた。
・・・中略・・・
今も情報の最前線にいるため、外交官の名前を明かすことはできない。ここでは、彼をXと呼ぶ。
・・・中略・・・
Xは事件当日の夜に、複数のルートからマスードの死亡を確認し、東京の外務省に打電した。「世界で最も早かった」と言われる。同時に不安を覚えた。
・・・中略・・・
マスード暗殺が現実となり、Xは「今後、とんでもない事件が起こるのではないか」と心配した。予感は的中した。2日後、遠く離れた米東海岸で、最悪の形となって。
・・・中略・・・
同時テロの直後、Xの名前を挙げて日本政府に協力要請した。米国の情報機関にはアフガン国内の人的情報(HUMINT)が決定的に不足していた。
・・・中略・・・
日米間の情報協力では、日本が米国に依存する割合が圧倒的に高い。米国同時テロにおける今回のような情報提供は極めて異例だ。隠れた対米支援だった。
こんな感じで、情報の意義が外交と絡めて書かれていました。ここで重要なことは、同時テロ前の情報の意味でした。この重要性がもっと認識されており、米国側が掴んでいた情報と考え合せれば、何かの形が見えたかもしれません。そして、米国が推進してきたSIGINT(signal intelligence)重視には限界があることを示していました。結局のところ、テロリストも人間なのですね。人の繋がり、人脈というものが、必ずあるということですね。satellite+SIGINT は万能ではない、HUMINTとの組み合わせが有効、ということでしょう。冷戦終結後、昔で言うスパイたちの多くは用済みにされてしまったり、長年作り上げてきたネットワーク組織は崩壊(引退したり予算がなくなったりでしょう)したりで、大きく偏りが出来てしまったことが、米国のHUMINT弱体化の原因かもしれません。
日本は元々情報組織も、特別なSIGINTも持たないですから、概ね外国頼みであると思っていましたが、外務省には優れた人材がひっそりと存在していたということでしょう。戦前の外交官は、有名になった『ちうね』の活躍ばかりではなく、多くの優秀な人材がいました(と、私は評価していますが)。日本の為に活躍した人達は、今よりもずっと多かったと思います。最近の外交官たちの体たらくぶりには(公金を好き放題使う、裏金にする、絵画や家具を公金で増やす等、きりがないな)無念を通り越えていましたが、Xのような活躍を見せる人がまだいたんだな、と心強く思いました。同時に、このような人材育成を外務省はきちんとやってくれ、とも思います。前から書いてきましたが、外交・防衛政策は表裏一体であり、インテリジェンスを重要視する意味が理解される出来事であると思うし、また、これを紹介したこの記事に本当に感心しました。
地下鉄サリン事件後丁度10年ということで、当時の事件の反省やその後のテロ対策の取り組みとか、安全性確保への問題提起なども行われています。このような時期ですから、もう一度行政側も国民側も、日常の中にある危機とか万が一の事態への対応とかを考えてみるよい機会かもしれません。
過去記事:
防衛政策への提言
統合情報会議
安全保障あれこれ
防衛情報とインテリジェンス