ISOな日々の合間に

土曜日は環境保護の最新の行政・業界動向、日曜は最新の技術動向を紹介。注目記事にURLを。審査の思い出、雑感なども掲載。

不二家の不祥事件

2007年01月21日 | 出来事
1.審査機関のコメントは社会の期待に沿うか
2.パロマの教訓も生かせなかった
3.規格にも弱点が・・・

1.審査機関のコメントは社会の期待に沿うか?

不二家が消費期限切れの原材料を使った洋菓子を製造・出荷した事件については、経済産業省がISO審査機関の上部機関である、日本適合性認定協会(JAB)に臨時審査の要請をしたと報道されました。例えば、YOMIURI ONLINE が分かりやすい解説を載せています。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070113i105.htm 
この事件のポイントは、消費期限を過ぎた原料を使っていたこと、製造後の消費期限の付け方が適正でないこと、細菌が検出された原料でも使用していた等、品質管理が杜撰であり消費者の信用を大きく失墜したことです。

では、「(株)不二家」を審査した認証登録機関はどのように対応しようとしているのだろうか?
日本適合性認定協会の以下のURLで組織名に「不二家」を入力し検索します。
http://www.jab.or.jp/cgi-bin/jab_search_j.cgi?MENU_FLG=1

「株式会社 不二家」がヒットし、組織名をクリックすると「ISO9001適合組織 詳細」が表示され、審査登録機関(詳細)の詳細部分をクリックすると「SGS」のHP(http://www.jp.sgs.com/ja/home_jp_v2?)が表示される。

審査機関「SGS」のHPには、1月19日付けでニュース「ISO認証取得企業の不祥事報道等への対応」が載りました。そこでは、
「当該審査登録先企業(不二家のこと)に対して、報道された内容についての事実確認を含む調査を実施し、この調査結果に基づき臨時審査の必要性を判断します。臨時審査を行った場合に、マネジメントシステムとして不具合な点(不適合)があれば是正処置を当該審査登録先企業に要求し、提示された是正処置の内容次第によっては、認証の一時停止、取消等を行う場合もあります。」とあります。残念ながら、その結果を何時、どのように公表するかについてコメントがなく、ISOに対する社会の期待に沿う内容かは大いに疑問が残ります。

今回の事件では、むしろ審査機関を審査しているJABが調査結果をどのように公表するかを注目したいと思います。
何はともあれ、最も大切なことは、信用を回復するためには、不二家が自身が問題点が何であったか、それをどのように真摯に取組み、解決したかを積極的に公表して行くことです。

2.パロマの教訓も生かせなかった。

一方で、不二家のISOの取り組みにも大きな問題がありそうです。上記「ISO9001適合組織 詳細」の下段になる「登録範囲」に注目すると、次のようになっています。
1.営業支店からの依頼に基づく、チョコレート・焼菓子・キャンディの設計及び製造
2.小売部門からの依頼に基づく、缶デザート・アイスの製造

製品の購入者が子供を主体とする一般の消費者であるにも拘らず、それを無視して製造部門の前工程である営業部門や小売部門(いわゆる社内組織)を顧客に見立てた仕組みです。この仕組みでは、製造部門が社内の組織や社内の都合を優先してしまい、消費者への目配りが疎かになってしまいがちであり、現にそのようになっていました。

昨年8月頃にパロマ工業製のガス瞬間湯沸かし器による事故が表面化しましたが、パロマのISO9001の仕組みも、営業部隊である親会社を顧客に見立てた仕組みであり、内向きの同族経営が仕組み上の欠陥として露呈したものでした。

不祥事への対応の拙さでは「雪印事件」を学んでいないと批判されていますが、ISO9001のマネジメントシステムの欠点・弱点に関しては「パロマ事件」を学んでいないと言えます。余りにも内向きの同族経営に驚くばかりです。今回の対応で顧客の信用を失ってしまうと、社員だけでなくフランチャイズ店で働く人々の生活も奪われ兼ねないことを経営層も社員も自覚していたのでしょうか。

3.規格にも弱点が。
以上のように検討してくると、ISO9001規格要求事項にも問題がありそうです。一般の消費者に販売する製品をつくっているにもかかわらず、親会社または社内組織を顧客に見立てたマネジメントシステムの適用範囲を無条件で認めてよいか大いに検討すべきだと考えられます。

冒頭の写真:街で見かけたフランチャイズ店

注:今週はフルに多忙なのでブログが滞ることに・・・。