電脳筆写『 心超臨界 』

幸せは外部の条件によって左右されるものではない
自分の心の持ちようによって決まるのである
( デール・カーネギー )

読む年表 明治~戦後 《 企画院設立――渡部昇一 》

2024-10-16 | 04-歴史・文化・社会
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そう願う心が臨界質量を超えるとき、思いは実現する
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企画院によって生み出されたのが、国家総動員体制であった。日本に存在するすべての資源と人間を、国家の命令一つで自由に動かせるということであり、まさに統制経済が行き着くところまで行ったという観がある。この体制では針一本、人一人を動かすのでも、政府の命令、つまり官僚が作った文書が必要なのである。昭和13年に制定された「国家総動員法」によって自由主義経済は封じられ、日本は完全な右翼社会主義の国家となった。もはや議会にそれを止める力はなかった。大正デモクラシーが育てた政党政治はもろくも崩れ去ったのである。


◆企画院設立

『読む年表 日本の歴史』
( 渡部昇一、ワック (2015/1/22)、p240 )

1937(昭和12年)
企画院設立
日本を右翼社会主義国家にした官僚たちの「経済版参謀本部」

軍部の台頭に呼応する形で右翼社会主義に傾斜していったのが官僚たちであった。

大恐慌前の日本の経済政策の基本は言うまでもなく自由主義であり、財閥の活動を奨励こそすれ、統制しようとはしなかった。それが、大恐慌が起こって世界的に自由主義経済が疑問視されるようになると、役人たちは「今こそわれらの出番ではないか」と考えるようになった。国の統制力が強いほど、官僚の権限も大きくなるからである。

世界的不況のいまこそ国が経済を統制して私有財産を制限し、貧富の差をなくすべきだと彼らは考えた。もはや政治家にまかせてはおけない。軍部が“天皇の軍隊”と言うのなら、東京帝国大学法学部卒業のエリートである自分たちも天皇に直結して、政治家から独立して行動できる、というのが彼らの理屈であった。こうして登場したのが、“天皇の官僚”を自称する「新官僚」であった。統制派が完全掌握した陸軍とともに、彼らは「革新官僚」として経済統制を推し進め、ナチスばりの全体主義国家をつくろうとしはじめた。それを象徴するのが、2・26事件の翌年、昭和12年10月25日に創設された企画院である。

これはシナ事変勃発に対応するため、戦時統制経済のあらゆる基本計画を一手に作り上げるという目的で作られたものである。言ってみれば「経済版の参謀本部」で、その権限はあらゆる経済分野をカバーする強大なものとなった。

その企画院によって生み出されたのが、国家総動員体制であった。日本に存在するすべての資源と人間を、国家の命令一つで自由に動かせるということであり、まさに統制経済が行き着くところまで行ったという観がある。この体制では針一本、人一人を動かすのでも、政府の命令、つまり官僚が作った文書が必要なのである。昭和13年に制定された「国家総動員法」によって自由主義経済は封じられ、日本は完全な右翼社会主義の国家となった。もはや議会にそれを止める力はなかった。大正デモクラシーが育てた政党政治はもろくも崩れ去ったのである。

そもそも企画院をつくった近衛文麿首相自身、社会主義的政策に共感していた人物だが、革新官僚たちの主張が共産主義に通ずるものであることに初めは気づかなかった。彼は、終戦直前になって「右翼も左翼も同じだということに、ようやく気づいた」と告白している。

昭和20年(1945)2月14日に近衛が昭和天皇に呈出した上奏文のなかに「右翼は国体の衣を付けた共産主義者であります。……彼らの主張の背後に潜んでいる意図を十分に看取(かんしゅ)できなかったことは、まったく不明の致すところで、何とも申し訳なく、深く責任を感じている次第です」という一節がある。首相として軍人や官僚たちと仕事をした人の最終的意見であるから、まさに注目すべきものであろう。
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