電脳筆写『 心超臨界 』

あなたが他人を責めるとき
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( ロバート・アンソニー )

不都合な真実 《 リニア建設の非合理性――福井義高 》

2024-05-18 | 05-真相・背景・経緯
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リニア建設は、上場企業の投資案件としても、鉄道輸送体系の観点からも、地震対策としても、合理性がありません。国鉄改革の枠組みが幸いし、非常に儲かる会社となったJR東海の経営者が、その収益を使って鉄道人としての夢を実現したいという思いは、同じ元国鉄職員として筆者にも理解できます。ただし、従来型の第二新幹線ならともかく、リニアには賛成できません。筆者にとって不可解なのは、上場企業としてのJR東海に投資している株主たちが、これほどビジネスとして筋が悪い計画をそのまま見過ごそうとしていることです。


◆リニア建設の非合理性――福井義高

『鉄道は生き残れるか』
( 福井義高、中央経済社 (2012/8/8)、216 )

*輸送量増が見込めないリニア新幹線

現在、鉄道に関する話題で最も夢のある話といえば、なんといっても電動リニアによる中央新幹線計画でしょう。しかも、従来の整備新幹線と違って、JR東海は自己負担で建設し、現行の東海道新幹線と一元的に経営するというのですから、上場企業としての合理的判断に基づいているはずです。

しかし、Ⅳ章で述べたように、首都圏の通勤路線なみの輸送密度を誇る東海道新幹線とはいえ、その輸送量は、今後減少する就業人口に関連しており、長期的に増加するより減少すると考えるほうが自然です。

東京・大阪間の飛行機利用者がすべて転移しても、現在の東海道新幹線輸送量(密度)の1割程度なので、就業人口減少に伴う輸送量減をカバーするのがせいぜいだと思われます。

かつての国鉄再建計画のように、極めて楽観的に考えて、輸送量1割純増が実現できても、輸送密度でいえば1日2万人程度、長野あるいは九州新幹線なみです。

一方、従来の新幹線と違い、確立した技術に基づく標準的工法がないリニアには整備5線よりはるかにコストがかかるでしょう。収入は整備新幹線なみで、コストはそれ以上かかるのが確実なプロジェクトを実行するのは、私企業としては無謀といわざるを得ません。

さらに、JR東海が認めているように、リニアはまず名古屋まで先行開業し、大阪までの延伸はかなり後になる予定です。東京・大阪間の利用者は名古屋で乗り換えなければならず、飛行機からの利用転移よりも、飛行機への転移のほうが多くなる可能性が大です。東京・名古屋間を飛行機で移動する人は現在すでにゼロです。要するに、当分、収入増につながりにくい、中途半端な状態が続くわけです。

そのうえ、大阪までつながっても、現在、飛行機と競合する東京と岡山あるいは広島間の利用者は大阪で乗り換えを余儀なくされ、輸送量は減少するでしょう。

結局、従来の新幹線が、線路幅(軌道)が違うことで、在来線の輸送体系を「破壊」したのと同じことが、東海道・山陽新幹線とリニア中央新幹線との間にも起こるのです。

*従来型の新幹線をもうひとつ作るほうがまだ合理的

採算性はともかく、輸送体系上は従来型の中央(第二東海道)新幹線を作るほうがはるかに合理的です。もともとリニアは、新幹線では時速250キロ程度が限界であるという前提のもとで始まった構想です。

ところが、技術進歩でこうした限界論が思い込みに過ぎないことがわかったのです。現在では時速320キロ運転が実現し、騒音問題をクリアできれば360キロも可能とされています。したがって、東京・名古屋間を直線に近い従来型新幹線規格で結べば、現在の所要時分1時間40分を1時間程度にすることは、今の技術でも十分可能です。

従来型企画であれば、東京・名古屋間の第二東海道新幹線と名古屋以西の現行東海道新幹線をつなげることができます。その場合、名古屋・大阪間は現行の50分のままでも、東京・大阪間は1時間50分となり、現在の東京と名古屋、仙台あるいは新潟の間と同じく、飛行機利用はほぼ新幹線に転移するでしょう。したがって、そもそも名古屋・大阪間に新線を建設する必要性は薄いと思われます。

新線を名古屋止まりとしても、東京・岡山間は2時間40分、東京広島間は3時間20分、東京・福岡は4時間30分となり、首都圏から山陽方面への飛行機利用者もかなりの程度、新幹線に戻ってくることが確実です。

それでも、東京・名古屋間の新幹線複々線化のコストをまかなうほどの輸送量増にはならないでしょう。上場企業のプロジェクトとしてはやはり疑問です。

しかし、第二東海道新幹線ができれば、羽田発着便は大幅な減便が可能、というより余儀なくされるので、新幹線がない地域への路線あるいは国際線を滑走路増設なしで実現することができます。つまり、空港整備のための資金が節約できます。これを第二東海道建設のために使うというのは、国民全体の観点から考えて経済合理性があり、それならばJR東海株主にとっても、新線建設は悪い話ではありません。

*大規模災害時の代替ルートなら北陸新幹線延伸のほうが安上がり

もし、東京・名古屋間新幹線の主な理由が、東海地震等の大規模災害に備えてスペアが必要ということなのであれば、北陸新幹線を関西圏までつなげるほうがはるかに安上がりです。JR東海が建設資金の一部を負担し、通常時には不要な予備の列車を購入する代わりに、北陸新幹線の運営主体となるJR東日本・西日本には、JR東海に非常時のダイヤ編成権を認めることを義務づけるのです。

具体的には、非常時に供給余力のある大宮以北の線路を使って列車を増発し、運輸収入も得られるオプション契約をJR間で結んでおけば、JR東海は東海道新幹線が復旧できるまでの輸送力と収入を確保できます。東海道新幹線が長時間止まるような事態となれば、利用者も大宮始発は不便だとか、1時間余分にかかるとかいっている場合ではないはずです。

さらなるウルトラCとして、現在の長野新幹線部分(高崎・長野間)も含め、北陸新幹線をJR東海が買い取り、東海道新幹線のバイパスとして一括管理する案も、決して荒唐無稽とはいえません。

*儲かりすぎるJR東海の道楽?

リニア建設は、上場企業の投資案件としても、鉄道輸送体系の観点からも、地震対策としても、合理性がありません。

国鉄改革の枠組みが幸いし、非常に儲かる会社となったJR東海の経営者が、その収益を使って鉄道人としての夢を実現したいという思いは、同じ元国鉄職員として筆者にも理解できます。ただし、従来型の第二新幹線ならともかく、リニアには賛成できません。

筆者にとって不可解なのは、上場企業としてのJR東海に投資している株主たちが、これほどビジネスとして筋が悪い計画をそのまま見過ごそうとしていることです。

いや、まじめに議論する筆者のような「万年書生」を冷笑しつつ、抜け目ない投資家は、リニア計画など所詮は実現する気のない広告戦略と見抜いているのかもしれません。
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