電脳筆写『 心超臨界 』

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D・パイプス

人間学 《 溺れる者を救うコツ――伊藤肇 》

2024-10-19 | 03-自己・信念・努力
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嶋田がかわいがっていた、ある広告会社の若い社長が「取引先の倒産のあおりをもろにかぶって、このままでは会社が潰れてしまいますので、何とか、お金を融通して下さい」とかけ込んできた時、嶋田はきっぱりと断ってしまった。そのかわり、「倒産整理ともなれば、誰しもあわてて財産を隠そうとするが、君は絶対にそれをやるな。一切合財を投げだして、裸一貫からやり直し給え」と忠告した。


『人間学』
( 伊藤肇、PHP研究所 (1986/05)、p173 )
第6章 原理原則の人間学

◆溺れる者を救うコツ

鳥窩(ちょうか)はいかにも禅者らしく、白楽天をつき放して教えているが、これを、も少し親切に説明しているのが芭蕉である。

俳句の真髄を問われた時、「不易流行(ふえきりゅうこう)」の四文字で答えている。

「不易」とは「易(かわ)らず」の意味で、俳句の芸術性と美意識をなす基本は永久に不変だ、ということである。そして、末節のほうは「時の流れに応じてゆけばよい」つまり「流行」である。

ジャノメミシン相談役の嶋田卓弥は、これを企業にあてはめて説明する。

「たとえば、うちの会社の場合でいえば、『ミシンをより多くの人々に、いかに買いやすく、親切にするか』という『不易』の原理原則さえ通しておけば、後は時の流れに応じて、いっこうに構わないのだ」

伊勢湾台風の時、嶋田がまっ先にやったのは「即刻、被災した全部のミシンを修理するよう」という指令だった。もちろん、自社のものも他社のものもなく、水に浸かったミシンを油の中で解体し、泥と砂をとって、組み直すのである。名古屋市の熱田支社では370台ほど直したが、うち180台は他者のミシンだった。

台風にやられなかった者が、やられた人たちに援助の手をさしのべるのは当然のことだが、ひどい業者は、この台風を「奇貨(きか)おくべし」とばかりに金儲けに狂奔した。台風をくいものにしたのだ。ところが、そういう手合は、その後、間違いなく没落してしまっているのである。

また、嶋田がかわいがっていた、ある広告会社の若い社長が「取引先の倒産のあおりをもろにかぶって、このままでは会社が潰れてしまいますので、何とか、お金を融通して下さい」とかけ込んできた時、嶋田はきっぱりと断ってしまった。

「溺れている人を助けるには、いったん沈んで気を失った時、静かに立ち泳ぎでひいて救うのがコツで、もがいている最中に近づくのは、いかなる水泳の達人といえども危険である」からだ。

そのかわり、「倒産整理ともなれば、誰しもあわてて財産を隠そうとするが、君は絶対にそれをやるな。一切合財を投げだして、裸一貫からやり直し給え」と忠告した。

たしかに倒産するか、しないかで気も動転している最中に金を貸してやっても、しょせんは「焼石に水」であろう。そんなことより、上手な倒産の仕方や、その後の対策を教えてやるほうが結果としてはひとりの事業家を救うことになる。

しかし、嶋田が自信をもって、それがいえたのは、伊藤忠商事の創業者、伊藤忠兵衛のエピソードを知っていたからだ。

「先物買をしていた原糸や製品が5分の1に暴落して、丸紅も伊藤忠も大戸を閉めてしまったのをこの目で見た。この時、立派だったのは、伊藤忠兵衛さんの態度だった。すでに株式会社だったから、法律上の責任はないものの、個人資産である芦屋の別荘から自宅までも全部提供して裸となり、『よろしくお願いします』と頭をさげられた。倒産の後始末が実に立派だった。それで当時の五大紡の首脳が、えらく感心し、『丸紅、伊藤忠を助けよう』ということになって、またたく間に立ち直ってしまった」

アメリカの神学者、ニーバーが、この芭蕉の「不易流行」と同じ台詞を吐いているのは興味深い。

「神よ! われらに与え給え、変えることのできないものを受け容れる冷静さと変えるべきものについて、それを変える勇気と、この両者を識別することのできる智慧とを」
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