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モノも社会もイメージ次第
「ラーメンフォーク」のデザイナー・高橋正実さん(34)
【「拓くひと[半歩さきへ]」09.09.30日経新聞(夕刊)】
【ラーメンフォークの映像はこちら】
http://www.momastore.jp/search/item.asp?shopcd=11111&item=020-72602-KT
名古屋のラーメン店「スガキヤ」の一番の名物はフォークとスプーンが一体になった食器「ラーメンフォーク」かもしれない。デザイナーの高橋正美(34)が手掛けたシンプルだが使いやすいデザインは高い評価を受け、モダンアートの殿堂と呼ばれる米ニューヨーク近代美術館(MoMA)のミュージアムショップの大人気商品に。あまりの反響ぶりにMoMAはこのほど卸販売の開始を決めた。
スガキコシステムズ(名古屋市)が創業60周年を記念して1978年に開発した先代商品の刷新を依頼した。「めんとスープがよく絡み、はしよりもおいしく食べられる。大人も子供も使いやすい。そんな食器を目指した」。3本のフォークの歯を長めの4本に変更。左利きの人でも食べられるように歯の位置もスプーンの中央に取り付けた。
「スープも飲めるし、ツルツルも食べられる。おかあちゃん、これいいね!」。最近、母の作品とは知らずに4歳の息子がはしゃいだ。何も言わないのに自分の意図が素直に伝わった。
「デザインをしていて初めてうれしいと思った」
江戸の下町、東京都墨田区で生まれ育った。人形職人の祖父、ガラス・建材職人の父など職人気質の家族と多くの従業員に囲まれて育った。「人様に迷惑をかけるな」。下町では決まり文句の親の教えは、相手のことを最大限考える思いやりの精神をはぐくんだ。
「点から線へ。線から面へ」が発想の根幹。使う人のことを考え作品をゼロからイメージすれば、おのずと誰もが使いやすいデザインにつながっていく。11年前に意識せずつくった点字カレンダーが後に高い評価を得て、いつしか「ユニバーサルデザインの先駆者」と呼ばれるようになった。
次々と浮かぶアイデアは製品にとどまらない。少し前には江戸の下町文化を発信する和風旅館を思い描いた。地元の職人がつくった部屋や食器に江戸の料理、銭湯巡り――。「完全にイメージしきれている。なかなかすぐには理解してもらえないでうすけれどね」。10年先、100年先の地域再生の姿さえ高橋の脳裏には鮮明に描かれる。「様々な立場と角度から考え、社会の矛盾や問題を解決する」。デザインの力を信じる心は揺らがない。
(敬称略)
(文 関口圭)
(写真 編集委員・井上昭義)
【 これらの記事を発想の起点にしてメルマガを発行しています 】
モノも社会もイメージ次第
「ラーメンフォーク」のデザイナー・高橋正実さん(34)
【「拓くひと[半歩さきへ]」09.09.30日経新聞(夕刊)】
【ラーメンフォークの映像はこちら】
http://www.momastore.jp/search/item.asp?shopcd=11111&item=020-72602-KT
名古屋のラーメン店「スガキヤ」の一番の名物はフォークとスプーンが一体になった食器「ラーメンフォーク」かもしれない。デザイナーの高橋正美(34)が手掛けたシンプルだが使いやすいデザインは高い評価を受け、モダンアートの殿堂と呼ばれる米ニューヨーク近代美術館(MoMA)のミュージアムショップの大人気商品に。あまりの反響ぶりにMoMAはこのほど卸販売の開始を決めた。
スガキコシステムズ(名古屋市)が創業60周年を記念して1978年に開発した先代商品の刷新を依頼した。「めんとスープがよく絡み、はしよりもおいしく食べられる。大人も子供も使いやすい。そんな食器を目指した」。3本のフォークの歯を長めの4本に変更。左利きの人でも食べられるように歯の位置もスプーンの中央に取り付けた。
「スープも飲めるし、ツルツルも食べられる。おかあちゃん、これいいね!」。最近、母の作品とは知らずに4歳の息子がはしゃいだ。何も言わないのに自分の意図が素直に伝わった。
「デザインをしていて初めてうれしいと思った」
江戸の下町、東京都墨田区で生まれ育った。人形職人の祖父、ガラス・建材職人の父など職人気質の家族と多くの従業員に囲まれて育った。「人様に迷惑をかけるな」。下町では決まり文句の親の教えは、相手のことを最大限考える思いやりの精神をはぐくんだ。
「点から線へ。線から面へ」が発想の根幹。使う人のことを考え作品をゼロからイメージすれば、おのずと誰もが使いやすいデザインにつながっていく。11年前に意識せずつくった点字カレンダーが後に高い評価を得て、いつしか「ユニバーサルデザインの先駆者」と呼ばれるようになった。
次々と浮かぶアイデアは製品にとどまらない。少し前には江戸の下町文化を発信する和風旅館を思い描いた。地元の職人がつくった部屋や食器に江戸の料理、銭湯巡り――。「完全にイメージしきれている。なかなかすぐには理解してもらえないでうすけれどね」。10年先、100年先の地域再生の姿さえ高橋の脳裏には鮮明に描かれる。「様々な立場と角度から考え、社会の矛盾や問題を解決する」。デザインの力を信じる心は揺らがない。
(敬称略)
(文 関口圭)
(写真 編集委員・井上昭義)
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