ばあさまの独り言

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品良く燃えるドウダンツツジ

2016年11月12日 | 随筆
 わが家の庭の石池のほとりに、私がとても好きなドウダンツツジが一本植えてあります。未だ7~80センチ位の高さです。お隣の家のお庭にもドウダンツツジがあります。背が高く三段に刈り込まれたお隣の樹は、今紅葉の真っ盛りで、その緋色の紅葉の美しさに、毎日見惚れています。真っ赤というよりは、緋色に近い赤で、燃えるようです わが家のツツジは、えんじ色にくすんでいて、葉先が枯れてお世辞にも美しいとは言えません。
 これは夏の水やりの失敗のせいです。水を与えすぎると太陽が昇って暑くなった時にも、葉は水を吸って気孔が開いていますから、葉先から枯れてしまうのです。植物は正直ですから、おかしな時間に水を与えたり、多く与えすぎても、暑い日の葉水で葉がすっかり落ちるように、たとえ根元にだけやっても、気温が高くなると葉先からしおれて来て、やがてそこが枯れるのだということを、今年になってやっと気づいたのです。
 ずっとお留守の家で酷暑に耐えている樹でも、枯れないところを見ると、いかに水の与えすぎが悪いかも解るというものです。
 家族には、可愛がり過ぎて、せっせと水やりをし過ぎるから駄目だ、と注意されました。本当にそうなのですね。
 私がドウダンツツジに魅せられたのは、6年前に角館の武家屋敷を見た時の記憶によるものです。紅葉の美しい角館の武家屋敷の通りを歩いてみたくて、私達は秋の旅の幾ヶ所の中に角館を選んだのです。
 角館の桧木内川(ひのきないかわ)の川岸沿いに続く桜もみじの並木も見事でしたが、何と言っても武家屋敷の中央を通る道の、両側のもみじの美しさと、静かな武家屋敷のたたずまいが、忘れられません。
 紅葉の美しさは、その日のお天気の良さにも左右されますが、晴天の日に紅葉が鮮やかに織りなす道は、散策にはもってこいの心地よさでした。
 特に心に残ったのが、或る武家屋敷の、道路から家の玄関までの間にずらりと並んだ、ドウダンツツジのトンネルの美しさでした。奥ゆかしいという言葉がピッタリの美しい前庭でした。
 ドウダンツツジは、漢字表記にすると「灯台躑躅」と「満天星躑躅」の二種があります。灯台躑躅の表記の由来は、枝分かれした躑躅の姿が「結び灯台」(三本の支柱を交差させて、その上に油皿を置いて火をともす昔の照明器具)の脚部に似ており、その「トウダイ」が呼び名に変化したものといわれます。
 また満天星躑躅と書くのは、中国に太上老君(たいじょうろうくん)という、道教の神様がいて、この太上老君が誤って、天からこの木に霊水をこぼしてしまいました。すると、霊水が壺状にかたまって、満天の星のように輝いたといわれて「満天星」という表記になったのだそうです。
 花は白・ピンク・赤など様々なようですが、私は白と淡いピンクしか知りません。5ミリほどの白い小さなスズラン様の花が、本当に天上の星の様に、びっしりと垂れ下がって咲き、とても上品で愛らしい花です。秋は紅葉が見事で、春の白い花よりも一層人を惹きつけます。
 花言葉はドウダンツツジ全般に、「上品」「節制」だそうですが、本当に上品な花です。私達が良く利用していた図書館の前庭も、丈の低いドウダンツツジが広く植えられていて、見る度にその紅葉の見事さに溜息が出ました。小さくてもしっかり自己主張しているその健気さに頭が下がる思いです。

 媼住む満天星垣のその奥に  佐々木 紫

 大原や躑躅の中に蔵建てて  蕪  村 (何れも俳句歳時記主婦の友社)

 角館の「生あんもろこし」という餡のお菓子が気に入りました。見ることも好きですが、食べることも大好きです。

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