ばあさまの独り言

ばあさまから見た世の中のこと・日常生活のこと・短歌など

薄日さす初冬の午後

2013年12月05日 | 随筆・短歌
 一昨日は薄日のさす穏やかな一日でした。たまたまお昼を食べに家から7~8分のイタリアンレストランへ珍しく家族で出掛けました。異業種のお店が集まる団地で、もう何年か前に開店していたのですが、家族で外食するのは祝い事くらいですから、今まで一度も行ったことが無かったのです。
 入ってみると外見よりも広く、模様ガラスで仕切られた空間は、個室のようで居心地が良く、とても美味しいランチを頂きました。久しぶりの団らんを外で過ごして、満足しました。
 お店を出てから私と夫は、そこから又8分位のカラオケ店へ繰り出したのです。半年以上カラオケから遠ざかっていましたので、会員券利用も久しぶりでした。何時も歌う歌は決まっているようなものなのですが、それでも年年耳にする回数の多い歌は自然に歌えるようです。夫は最近お気に入りの「千の風になって」や何時も変らぬ「白虎隊(詩吟入り)」を、私は島津亜矢の「帰らんちゃよか」や啄木の「初恋」等、他に聞く人もいない気安さに、下手な事は気にせずに大声で歌って来ました。
 「誰か故郷を思わざる」と言う古い歌がありますが、夫はある集まりの宴会の二次会で、締めくくりの歌が何時もこの歌だったそうです。肩を組んでみんなで歌った当時が懐かしいらしく、何時も最後に選曲しますので、その都度二人で歌います。
 二時間歌ってストレスを解消し、満足して帰って来ました。夜になって、夫は樺太から小学5年で引き上げて来た頃のふる里の山河について懐かしみました。戦後何も娯楽が無かった時代に、住んでいる集落のもう少し奥に、若い人達が演じる演芸会があり、見に行った事、自分の集落の小中学生達だけで山に行き、薪を拾って味噌汁を作って食べたりしたことなど懐かしんで、ふる里のイメージには、どうしても山や河の背景が必要だと言います。
 私は一月遅れの雛の日に、茶事といって、母にお寿司などを作って貰って、日当たりの良い芝の土手などで、友達と集まって食べた楽しい想い出があります。神社の春祭りの夜店や、夏の盆踊りが懐かしいです。今はもうどちらも無くなっているようです。
 いじめは全く無かったとは言えないようでしたが、皆限度をわきまえていて、激しそうな喧嘩でも、終わるとサラリと仲良くしていましたから、登校拒否など、見たことも聞いた事もありませんでした。
 新しい中学校を建てる時に、授業をしないで、自分達の手で土を運んだりした想い出もあり、「二十の扉」などラジオ番組を真似て、問題を出し合いながら楽しく働いたこと等、二人とも学校が違うのに、何故か同じような経験をしています。
 戦争が終わって、物資の不足な時代を生きぬく為には、老若男女総じて労働に携わらなければなりませんでした。やがて高度経済成長の時代を過ごして来た私達です。それでも平和であって、みんな明るかったと思います。やっと手にした平和を大切に思い、今も日本の平和に感謝しています。
 最近は、昔の祭りや行事が見直されて、再び脚光を浴びているようですが、平和でないと出来ない、祭りや行事に触れることが出来る人々は幸せに違いないと思っています。
 現職の霞ヶ関の官僚が書いた「原発ホワイトアウト」を読みました。背筋が寒くなりました。
 扉に「歴史は繰り返す、一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」とカール・マルクスの言葉が引いてありました。歴史に学ばないことの愚かさを痛く感じました。
 千年に一度の大地震が先の3.11だったとしたら、平安時代から今日の科学の進歩から推し量って、後997年後には人類は空を一人一人低空で安全に移動出来る手段も持っているかも知れません。もしそうならば、高い防潮堤は、政府のいうように東北には不要でしょう。必要なのは、東南海トラフの地震に備えて、東京湾とか、大阪・四国などではないでしょうか。
 有史以来数千年でしかありません。核廃棄物の放射能が無害になる100万年後には、人類はどんな言語を持ち、現在の津波や原発事故の歴史が、どのように伝えられているのでしょうか。
 不安の先取りはしたくないですが、せめて安心安全な国として、後世の人々に日本(地球)を引き継いで行くことが、私達の使命だと思われます。
 誰か故郷を思わざる、という心はきっと何時の世も同じだと思います。12月の薄日の一日は、今の日本の束の間の幸せに似て、穏やかでした。また、太陽ははっきり見えませんが、そこにあってくれて、私達に幸せを運んでくれています。大事にしたい一日一日だと思っています。

一日の日程終えて見る暦十年先を推し量りつつ(実名で某誌に掲載)
昨日より今日がやさしくあるように老いてゆきたし侘助の咲く(同上)


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