ばあさまの独り言

ばあさまから見た世の中のこと・日常生活のこと・短歌など

詩と曲の織りなす名曲に酔う

2010年01月20日 | 随筆・短歌
 私は余り歌を歌うことが上手くはありません。やや音痴に近い位です。でも歌うことは嫌いではなく、夫と二人で、カラオケルームへ出かけることもあります。(初めはうつ状態の私の為に、夫が無理矢理歌いに連れ出した事から始まったのです)最近は少し回数が減っていますが、以前は良く行きました。悲しい時、寂しい時、唱いながら涙を流したりしましたが、二人で二時間くらい唱うと気持が晴れて、清々して帰って来ました。
 腹式呼吸ですから、お腹にも力が入り、食欲も出て、健康にも良いと思っています。良く通うようになって、もう何年にもなります。最近は何かと時間に追われるようになって、なかなか出かけられなくなりましたが、時間を作ってまた行こうと思っています。
 処で、良い歌というものは、優れた歌詞に優れた曲が相まって、できるものであることは、言うまでもありません。ですから歌う時、作詞者の訴えようとするものを表現したいという気持になりますし、聴く時も、歌詞を深く味わいながら聴きます。
 しかし小さい頃に、口覚えで唱っていて、何を言っているのか、知らずに唱っていた歌詞もあり、この年になって初めてしみじみとその歌詞に感動することもあります。
 誰でも知っている歌に例を取りますと、卒業式に必ず歌われた「仰げば尊し」の「思えばいと速し(とし)この歳月」という「とし」が当時ひらがなであったために、その意味も解らずに「なんということなのだろう」と疑問を感じながら歌っていたのです。またその次に出て来る、「今こそ別れめ」の「め」も「目」だと思いこみ「時期」という意味だと長いこと思っていました。別れましょうという意味だと知ったのは、成人してからでした。小学一年生で覚えた歌ですから、知らないまま唱って来ていて、恥ずかしいと思っています。
 後に文法が好きになって、気になる言葉があると、文法を調べるようになりました。堀辰雄の「風立ちぬ」という小説の中に「風立ちぬ、いざ生きめやも。」という詩句が出てきますが、この、めやも、がどういう品詞に分かれるのか分からず、従って意味も正しく把握出来ず、これも文法の本を手に調べたこともあって、何かと言葉は気になります。
 「歌は世につれ、世は歌につれ」と言うことばがありますが、青少年の頃から、50代位までの歌は、何かと想い出と共にあって、歌ったり聴いたりする度に往時が想い出されて胸が熱くなります。
 昔の歌は日本語のイントネーションに合わせて、音階が出来ており、無理なく歌えましたが、今は平坦な歌が多いようで、変な処で音階が急に飛び上がったりして、歌詞と共に有るというより、歌詞と曲がバラバラに存在しているようで、私のような老人には、胸にしみこんでこない気がしてなかなか馴染みにくい思いです。
 土井晩翠の「荒城の月」の「春高楼の花の宴」というところで「えん」は半音で習いましたが、いつの間にか全音に変わっています。あそこは半音が多分正しいのではないかと思いますし、その方が曲としても美しいし、しみじみと味わえます。何だか長所を台無しにしてしまったようで、とても残念に思います。(米良美一のCDは半音で唱っています)
 先頃アンサンブル・プラネタのCDをネットで買いました。アカペラですが、一枚は、有名な歌曲集で、一枚は日本の叙情歌です。前者ではメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲に詩を付けて歌ったりしていますから、意味は解らずとも音として、その美しいハーモニーを楽しんでいます。けれども矢張り、音だけで詩の解らない歌は、美しくても心を揺さぶる力に欠けて物足りなく、日本語の歌詞のCDも買ったのです。
 金子みすずという詩人の詩が好きですが、彼女は若くして亡くなったので、曲の付いたものが少なく、残念に思っていました。以前佐藤しのぶが歌っているのを見つけて、期待してネットで買いましたが、今ひとつ、みすずの心の世界に入ることができませんでした。
 美声であるということは、一流のオペラ歌手としては、必須の条件なのかも知れませんが、心を歌うとなると失礼かも知れませんが、美声であるということよりももっと大切なものが無ければならないと思ってしまいます。船村徹が歌う歌には何時も泣けくるというのが、その良い例だと思います。日本人のシャンソン歌手として好きな人は、越路吹雪です。あの迫力と豊かな情感には、いつも虜になってしまいます。「千の風になって」というあの有名になった歌は、何人もの歌手が歌っていますが「Yucca」(ユッカ)という人が歌っているのが一番心に響きます。
 人にはそれぞれ好き嫌いがありますし、歌は、その時代の世相を現す鏡のような面もありますから、このばあさまの年齢では、こんなことしか解りませんが、是非もう少し、現代の若者の歌も聴いて、時代に置いて行かれないようにしたいものだと考えたりしています。

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