孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国社会事情  離婚、出産、中絶、就職・・・そこから見える人間像は

2016-07-18 21:26:43 | 中国

(中国の人気アイドルグループSNH48 【3月25日 Record China】)

ここ数日の記事で見かけた中国社会事情です。

日本と中国の間には多くの深刻な政治課題がありますが、相手のことを知らないと、いたずらに邪悪な「ならず者国家」的なイメージを膨らませ、憎悪をつのらせることにもなりかねません。

最近、日本に多くの中国人観光客がやってきますが、当初日本に抱いていたイメージとは大きく異なるものを感じで帰国する人も多いと聞きます。

相手のことを知ることは、相互理解に向けた第1歩です。

急増する離婚
と言うことで中国社会事情ですが、まずは離婚の増加。

****中国で384.1万組の夫婦が離婚、夫婦の絆はなぜこんなにもろく****
○2015年、384.1万組の夫婦が離婚 離婚率は年々増加
民政部がこのほど発表した「2015年社会サービス発展統計公報」によると、2015年、全国各級の民政当局と婚姻登録機関が法に依り受理した結婚登記件数は1224万7000組、前年比6.3%低下した。2015年、法により処理された離婚件数は計384万1000組、同5.6%増加した。

2002年以降、中国の離婚率は上昇の一途をたどっている。2002年、中国の粗離婚率はわずか0.90パーミル、2003年に1.05パーミル、2010年には2パーミルを上回った。現在の統計データによると、2015年の粗離婚率は2.8パーミル、この数値は2002年の3倍を上回る。

いわゆる粗離婚率とは何かという疑問について、中国人民大学社会・人口学院の■振武院長(■は曜のつくり)は「統計学的に言えば、ここでいう『粗離婚率』とは、ある一定期間における総人口に対する離婚件数あるいは離婚したカップル数の比率を指す。『粗離婚率』と言われる理由は、離婚率を計算する際、厳格な意味で、分母は総人口ではなく既婚者数であるべきだが、既婚者数の統計を取ることが困難であるため、代わりに総人口を採用していることによる」と説明している。

○なぜ婚姻が破たんする傾向が増えているのか?
中国の離婚率が急上昇している原因について、■振武院長は、以下のような見方を示した。

まず、もともと全体的な離婚率が低かったことと関係がある。離婚率はこれまで、ずっと低い状態が続いていたため、いったん増加傾向を呈すると、非常に目立ってしまうという一面がある。また、中国経済社会の各方面における変化や世論の環境、社会通念の変化とも関係がある。

以前は結婚を維持できる環境は非常に安定的で、結婚そのものもかなり安定していた。だが、約10年前から、中国の経済社会に大きな変化が生じ、各種社会環境もそれに伴い大きな変化が生じた。そしてこれらの変化は、結婚を安定させる条件に衝撃を与える結果となった。

たとえば個人の経済的地位に急激な変化が生じ、社会的な立場にも変化が起こった。これに加え、人口流動率がますます高まり、これらの変量の中で、婚姻の安定性が崩れてきたのだ。

また、これまで、ある個人が離婚を持ち出すと、周りの人間が口をはさみ、あれこれ議論を展開し、離婚する当事者にとって大きなプレッシャーとなった。
だが、社会環境が多様化し、開放された今では、離婚・結婚をめぐる決定について、人々はより簡単に結論を出すようになり、決定に至るまでのプロセスも、以前のように慎重なものではなくなった。

これに対して、「より開放的な社会環境において、人々が結婚や離婚につて軽率で気まぐれな決定を下してはいけないが、個人の離婚の自由は尊重されなければならない」という考え方もある。■振武院長は、これについて、「ある婚姻が、個人の感情を抑えつけたもの、あるいは当事者が決して納得していないものであったならば、離婚という経験は、個人の感情面やその他の成長において、きっとプラスとなるだろう」との見方を示した。【7月16日 Record China】
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社会環境の変化と個人の意識の変化の結果、離婚率が上昇しているということのようです。

離婚に至るひとつの要因となっている社会現象が、農村からの出稼ぎの問題です。
出稼ぎに関しては「留守児童」の問題が大きく取り上げられていますが、当然ながら夫婦関係にも影響します。

****中国経済成長の影、長期化する出稼ぎで不倫横行、離婚率上昇****
2016年7月11日、第一財経網によると、河南省で出稼ぎ労働者の家庭を調査したところ、不倫がまん延していることが判明した。

中国製造業の武器である安価な労働力は出稼ぎ農民によって支えられてきた。しかしその弊害も少なくない。

若者の出稼ぎで、老人や子どもだけが取り残された「空心村」があちこちに誕生している。老人だけが働く老人農業、両親と会うことなく生活する留守児童など多くの社会問題を引き起こしている。

多くの出稼ぎ農民を送り出している河南省で調査を行ったところ、その深刻な状況が明らかになった。

出稼ぎ農民の26.2%は1年以上帰省しないと回答している。電話などで家族と連絡する頻度も1カ月に1回あるかないかとの回答が29.7%に達した。

これでは村に残された子どもや妻との関係が次第に冷めていくのも無理はない。夫や妻とほとんど会えないことから不倫も横行。離婚率も上昇する兆しを見せている。

専門家は出稼ぎ労働によって伝統的な家族形態が危機にひんしていると危機感を募らせている。【7月15日 Record China】
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海外出産をサポートする仲介企業の数は100社以上
次に、「海外出産」の話題。
アメリカ・カナダや香港などの国籍を得るために海外で出産する女性が多いことは以前から話題になっています。

****子どもに米国籍、香港市民権を!海外出産が中国で人気に****
2016年7月12日、台湾紙・旺報によると、中国で海外出産が人気になっている。

最大のホットスポットは香港。年4万人もの中国人妊婦が香港での出産を選択している。単に医療設備が整っていることだけが魅力ではない。中国本土人の夫婦が香港で出産した場合、子どもには香港住民の権利が与えられることが魅力となっている。

香港以外でも米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどが人気だ。特に出生地主義を採用する米国、カナダでは生まれた子どもには国籍が与えられるというメリットもある。

海外出産をサポートする仲介企業の数は100社以上。もちろん費用は安くはないが、それを苦にしない富裕層が中国にはごまんといる。

中国には母親は出産後1カ月はじっくり静養する「月子」という習慣がある。富裕層をターゲットにした海外出産では、高級ホテル並の宿泊施設にヨガなど回復プログラムを盛り込んだ月子センターがセットになっていることも多い。【7月15日 Record China】
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中国ではありませんが、昨年10月にはアメリカ国籍を取得するためにアメリカ行きの機内で出産した台湾の女性が大きな注目を浴びました。
ネット書き込みによれば「女性が客室乗務員に機体が米国領空内に入ったどうかを確認していた」とのことです。

女性が産んだ赤ちゃんは思惑どおりアメリカ国籍を取得したものの、女性は国外退去処分となったそうです。
ここまでくると「すごい・・・」としか言いようがありません。

受け入れ側との軋轢も表面化しています。

****中国人の越境出産にカナダ人は「ノー!」、反対の署名運動が展開****
2016年7月10日、仏国際ラジオ放送ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)によると、カナダで「越境出産」しようとする中国人が増え続けていることに対し、カナダで国会ウェブサイトを通じた反対署名運動が行われている。カナダの中国系議員アリス・ウォン氏の支持も取りつけているという。

カナダでは、国内で生まれた外国人の子どもにも自動的にカナダの国籍が与えられるほか、その親や家族もさまざまな社会保障を受けることが可能となっている。署名運動では「納税者の負担が高まっている」とし、これを撤廃する法案を求めている。6月16日から署名が始まり、すでに3842人の署名が集まった。10月14日を期限に国会に提出されることになっている。

カナダを旅行で訪れ、出産する中国人は増加の一途をたどっているとされる。カナダ統計局の調べでは、2012年の報告書で新生児38万2568人のうち、カナダ国籍のない母親は699人で、547人に1人の割合となっている。

しかし、バンクーバーでは状況は特に悪化している。2016年の報告書では3月31日までの年度中に、市内のリッチモンド病院で生まれた新生児1938人中299人が地域住民の子どもではなく、そのうち295人は母親が中国人。この病院だけを例にとっても6人に1人が中国人の越境出産で生まれたという深刻な状況になっている。【7月11日 Record China】
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当然の疑問として、どうしてそんなに外国国籍取得にこだわるのか?という話になります。

習近平国家主席は「中国の夢」を高らかに打ち出していますが、国民は中国の現状と将来に大きな不安を抱えているようにも見えます。

万一の場合は、子供の海外国籍をもとにして、自分たち親も海外へ移住できるように・・・といった思惑もあってのことでしょうか?単純に子供の将来を思ってのことでしょうか?

中絶はラブストーリーに欠かせない要素に
出産の次は中絶の話題。

****衝撃!中国の人工中絶は年1000万件以上、日本は・・・・―中国メディア****
2016年7月11日、中国中央テレビ(CCTV)によると、中国で人工中絶が毎年1000万件を上回っていることが分かった。

「世界人口デー」に当たる同日、中国で人工中絶に関する番組が放送された。中国では、いわゆる「青春映画」の多くに人工中絶を行うシーンが登場する。メディアのこうした映画に対して、今や「中絶がなければ青春じゃない」といった評価まで下している。中絶はラブストーリーに欠かせない要素になってしまったのか。

中国青少年生殖健康調査の報告によると、中国の未婚の青少年のうち、およそ6割が婚前交渉に寛容的な態度を示しており、22.4%が実際に性行為を経験済みだという。

しかし一方で、性の知識が十分に浸透しているかと言えばそうではなく、報告によると正しい性の知識を身につけている青少年は全体のわずか4.4%。性行為を経験した若者の過半数が初体験の時に避妊具を使用していなかったことが分かった。

また、性行為を経験した女性の21.3%が過去に妊娠した経験があり、4.9%が複数回の人工中絶を経験していた。

国家衛生計画生育委員会によると、中国では毎年1000万件以上の人工中絶が行われている。この数は、世界の4分の1を占めるとも言われる。

中絶を行った女性のうち、過半数が25歳以下の若い女性。2回以上人工中絶を行っている女性も全体の半数を超えているという。

専門家は、人工中絶による合併症は予測が難しい上、その後に再び妊娠しても流産や早産のリスクが高まると警鐘を鳴らし、正しい性教育の普及と性行為の低年齢化を食い止めることによって望まぬ妊娠を減らすことを呼び掛けている。

ちなみに、日本の人工中絶の件数は年々減少傾向にあり、2013年の時点で約19万件となっている。【7月13日 Record China】
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【「95後」の約半数が「就職しない道を歩む」】
次に、若者の就職事情。

****若者の約半分が「就職しない」を選択―中国****
騰訊(テンセント)のウェブブラウザ・QQブラウザはこのほど、2016年の大学卒業生の卒業後の進路についてのビッグデータ報告書「QQブラウザビッグデータ:95後の就職観」を発表した。

それによると、16年の大卒者は伝統的な就職に対する考え方や就職ルートにとらわれることがないだけでなく、卒業後の進路の選択肢に多様化、ネットワーク化、娯楽化という3つの新しい傾向がみられるという。北京商報が伝えた。

同報告によると、95後(1995年以降に生まれた人)のうち52%が「就職への道のりで最後までがんばる」と答えたが、驚いたことに残り48%は「就職しない道を歩む」と答えた。

就職しない学生の進路は実にバラエティに富んでおり、引き続き学問の道を究めるとした人、起業を選択した人、ネット有名人になって動画を投稿するという人、実家に戻り結婚して子どもを生むという人などさまざまだ。

新しい経済環境の中、新モデル、新メカニズム、新プラットフォームが爆発的かつ持続的に成長し、これにともなって新しい就職の資源と方法が次々に開発され、就職の選択がより柔軟になり、大学生の就職観や就職の方法が以前にも増して多様化した。新しい就職のチャンスも生まれ、95後の大卒者たちの進路選択にはより多くのチャンスが与えられるようになった。

起業で選択する分野をみると、インターネットが引き続き95後の主流で、このうち46%は海外通販、O2O(オンラインツーオフライン)、セルフメディアなどの新興ネット起業を選んだ。

また自分が学んだ先端知識を故郷に持ち帰り、農業における起業の方法を模索し始めた95後が増えている。

ネットの発展とともに成長した95後は、ネットから派生した各種の目新しい職業に飛び込んでみようという意欲が非常に高い。今や誰もが情報の発信者になれる時代で、95後は携帯電話を肌身離さず、ネット有名人になる人もたくさんいる。

同報告書によれば、95後の間で人気がある新しい職業番付では、アナウンサーを選んだ人がかなりの数に上り、以下、ネット有名人、声優、メークアップアーティスト、コスプレイヤーなどが続いたという。【7月13日 Record China】
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いかがでしょうか。
出稼ぎ・海外出産など日本と事情が異なる現象もあります。その違いに着目すれば、いくらでもその差をあげつらうことはできます。

ただ、環境・事情が異なれば対応も異なってはきますが、基本的には日本人と同様に結婚生活・出産・就職などの問題に直面している人間像が感じられるように思えるのですが。

海の向こうに全く理解不能な人間が暮らしている訳ではなく、自分たちと同じように苦闘し、人生に対処しようとする人たちがいる・・・・といったところでしょうか。

そうであるなら、お互いによりよい関係を築くこともできるのでは・・・とも。
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