孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

リオ五輪  問題山積 ロシアのドーピング、ジカ熱、財政危機、警官による「殺害行為」

2016-07-19 21:42:00 | ラテンアメリカ

(ブラジル・リオデジャネイロの空港で4日、「地獄へようこそ」と英語で書かれた垂れ幕を手に、給料の未払いに抗議する警官や消防士ら=AFP時事 【7月6日 朝日】)

現在、IOCが電話で緊急理事会 ロシアの参加は?】
8月5日には開幕するブラジル・リオ五輪ですが、いろんな問題が山積しています。

今夜のNHKの冒頭ニュースはロシアの“国家主導ドーピング”問題。IOC=国際オリンピック委員会は、今まさに電話による緊急理事会を開いており、ロシアのリオ五輪出場停止を含めて、対処や制裁について検討することにしています。

****ロシアの国家的ドーピング IOCが緊急理事会****
WADA=世界アンチドーピング機構は18日にカナダで会見し、おととしのソチオリンピックでロシアのスポーツ省などが関与し、国家が主導して組織的なドーピングを行っていたと指摘しました。

組織的ドーピングは、2011年からおよそ4年間行われたとしたうえで、2013年にモスクワで行われた陸上の世界選手権や、去年カザンで行われた水泳の世界選手権などと合わせて、陽性反応を示した577の検体のうち、ロシア選手を中心とする312の検体がすり替えられていたことが明らかになったとしています。

これを受けて、IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長は「報告の内容は衝撃的で、オリンピックとスポーツの信用に対するこれまでにない攻撃だ。問題に関与した個人や組織に対し、厳しい制裁を科すことも辞さない」という声明を発表しました。

IOCは現地時間の19日正午(日本時間午後7時)から電話による緊急理事会を開き、リオデジャネイロオリンピックを前に、ロシアに対する対処や制裁について検討することにしています。(中略)

ロシアのスポーツ相 ドーピングと無関係の選手は区別を
ロシアのムトコ・スポーツ相は18日、地元メディアに対し「IOCが選手一人一人に物語があることを考慮して決定することを望む」と述べ、ドーピングを使用した選手と無関係の選手は区別して対応すべきだという考えを示しました。

また、ロシアオリンピック委員会は19日声明を発表し、「ドーピングとは無関係の多くの選手がオリンピックに参加できなくても、それはしかたがないという意見には全く賛成できない」として、ドーピングとは関係のない選手の出場は認められるべきだという立場を改めて示しました。

そのうえで、「われわれは、すべての国際機関と協力する用意がある」として、国際機関と連携してドーピング問題の再発防止に取り組む姿勢を強調しました。【7月19日 NHK】
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“国家主導ドーピング”は2011年からだけでなく、冷戦時代のソ連・東ドイツなどに以前から指摘されていたものでもあり、おそらく体質的なものになっているのでは・・・とも思えます。

“無関係の多くの選手が・・・”云々はわかりますが、やはり一度きちんとした処分でけじめをつける必要があるでしょう。
ロシア不参加で日本のメダル数が水増しされても、イマイチの感はありますが。

【「海外では、わが国にジカ熱と銃撃戦しかないように報じられている」】
次は、ジカ熱。

****リオ五輪控え 政府がジカ熱対策を本格化****
政府は、リオデジャネイロオリンピックの開催を控えたブラジルで、今もジカ熱の感染が続いていることから、現地への渡航者に対して予防の徹底を呼びかけたり、帰国する人たちの検査体制を強化したりするなど、ジカ熱への対策を本格化させています。

リオデジャネイロオリンピックの開催を来月5日に控えた今も、ブラジルではジカ熱の感染が続いていて、政府は、期間中、現地への渡航者がおよそ1万人に達すると見込まれていることから、ジカ熱への対策を本格化させています。

具体的には、旅行業者と連携し、ツアーの参加者にチラシを配るなどして、虫よけ剤の使用や長そでの服の着用を呼びかけているほか、ブラジルから帰国する人たちの増加に備え、各地の空港の検疫所に人の体温を映し出す特殊なカメラを設置するなど検査体制を強化しています。

また、広い敷地を持つ公園や学校、それに寺社など、蚊が多く発生すると考えられる国内の施設の管理者に対し、蚊の駆除を要請するなど、国内での感染拡大の防止に向けた対策も強化しています。【7月17日 NHK】
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ただ、南半球のブラジルは気温・降水量の関係で蚊の活動は停滞期に入っていることもあって、こうした各国の懸念・“過剰反応”に対し、ブラジル側は苛立ちを見せています。

****ジカ熱懸念、払拭に全力=リオ五輪でブラジル政府-現地リポート****
リオデジャネイロ五輪開幕に向け、ブラジル政府はジカ熱への懸念払拭(ふっしょく)に全力を挙げている。すでに沈静化しつつあり、保健省は「観客や選手が大会中に感染する確率は100万人当たり1.8人」という研究結果を示して、安全性を強調。不安をあおる海外の「過剰反応」にいらだちも見える。
 
112年ぶりに五輪に復活するゴルフでは、男子の世界ランキング上位選手がジカ熱を理由に次々と出場辞退。過密日程も理由だが、空洞化を心配する声も高まった。
 
世界保健機関(WHO)などによると、ジカ熱は妊婦以外に与える影響は少ないとされる。症状が軽く、感染に気付かない事例も多い。

エバンドロ・シャガス研究所のペドロ・バスコンセルス所長は「メディアの報道はセンセーショナル過ぎる」と指摘。リオ市のパエス市長も英紙ガーディアンのインタビューで「海外では、わが国にジカ熱と銃撃戦しかないように報じられている」と不満をぶちまける。
 
実際、気温や降雨量の低下で、ウイルスを運ぶ蚊の活動が停滞し、5月の感染確認例は3カ月前と比べて約9割減少。バイア連邦大学のグビオ・ソアレス博士は「この2カ月間、ジカ熱の感染者はほとんど確認できない」と話す。
 
それでも、ジカ熱をめぐる国内外の受け止め方にはギャップがある。日本の外交筋は、東日本大震災で海外に広がった原発事故の風評被害を例に「一度、悪いイメージがつくと、情報の修正は難しい。4年後の東京五輪でも同様の情報の温度差は起こり得る。人ごとではない」と警戒している。【7月16日 時事】
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確かに「一度、悪いイメージがつくと、情報の修正は難しい」という問題があります。

おそらく、海外には日本の原発事故に“過剰反応”する人々も多いかと思います。
あるいは、日本人が身近の危険に鈍感になっているのでしょうか。

****韓国の青少年100人が福島訪問へ=韓国ネットは否定的****
2016年7月15日、韓国・聯合ニュースによると、昨年に韓国の青少年約150人と共に福島を訪問して批判を浴びた市民団体が、今年も同じイベントを推進し、韓国の環境団体からの反発に遭っている。

市民団体「ふくかんネット」は8月1日から10日まで、韓国の青少年約100人、引率者約20人と共に福島や東京を訪問する予定。「ふくかんネット」は昨年も韓国の青少年約150人と共に同地域を訪問した。

韓国の環境団体は「イベントが行われる場所が、2011年の福島原発事故によって放射性物質が大量にふりまかれた地域からわずか70キロしか離れていない上、安全性が保証されていない山林地域を訪れるプログラムが含まれている」と指摘。「ふくかんネット」にイベントの詳細を公開するよう求め、危険性のあるプログラムの中止と安全教育や放射性物質の危険性を知らせるプログラムを追加するよう訴えた。

「ふくかんネット」は、福島県を中心に韓国の言語・文化・経済・歴史などに対する理解を深め、両国間の交流活動を展開している非営利法人(NPO)。

この報道に、韓国のネットユーザーらは「イベントの主催者も参加する子どもたちもおかしい」「両親は同意しているのか?」「第2のセウォル号事件が起こりそう」「他の地域ならまだしも、なぜわざわざ福島へ?」「昨年も同じことがあったのに、政府はまだ福島を訪問禁止地域に指定していないの?」など、青少年の福島訪問に否定的なコメントを寄せた。【7月16日 Record China】
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日本に対する悪意の反応というより、実際、日本・福島=危険というイメージが定着しているのでしょう。

警官らが「地獄へようこそ」】
次に地元リオ州の財政問題。

****ブラジル・リオ州が財政非常事態、連邦政府に支援要請****
ブラジルのリオデジャネイロ州は17日、財政が危機的状態にあるとして非常事態を宣言し、8月の五輪期間中に公共サービスを提供できるよう連邦政府に資金支援を要請した。

官報に掲載された布告によると、「警備、医療、教育、交通、環境面の運営が完全に崩壊する」のを避けるため、臨時の資金拠出が必要になる。

リオデジャネイロ州は主に石油産業に収入を頼っており、過去2年間の石油価格下落で財政が打撃を受けた。

リオデジャネイロ市のパエス市長はツイッターで「州財政の非常事態により、五輪プロジェクトやリオ市の約束の実行に遅れが生じることはあり得ない」と述べた。

市長はまた、五輪開会の数日前に完工が予定される地下鉄拡張工事を除き、五輪関連の建設プロジェクトはすべて市が責任を担っており、ほとんど完工していると強調した。【6月20日 ロイター】
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給与未払いのため、警察官や消防士の抗議デモも起きており、その横断幕には「ようこそ地獄へ 警官と消防士は給与が支払われておらず、リオデジャネイロを訪れる人々は安全ではない」との物騒なメッセージも。

ただ、当局側の説明では、州の財政問題は五輪とは関係ない、期間中の治安も守られるとのことです。

****リオ五輪「地獄へようこそ」 警察官ら給与求め抗議デモ****
・・・・通常は州が治安を担当しているが、五輪期間中は全国から8万5千人の軍と警察が動員されて治安維持にあたる。リオ市のパエス市長は「五輪開催と州の危機は関係がない」と説明。

モラエス法相は5日、「政府は治安確保の費用として29億レアル(約916億円)の支援を決めた。警察官への給料支払いなどに使われ、リオ市の治安は安定する。期間中は全く心配しなくていい」と、不安の沈静化に努めている。【7月6日 朝日】
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なお、五輪期間中の混乱にもっと影響しそうな問題も。

****ブラジルの税関職員が無期限スト、リオ五輪開催目前****
7月12日、リオデジャネイロ五輪の開幕を3週間後に控えたブラジルで、税関職員が賃上げを求めて14日から無期限のストライキに突入する。

五輪開催中は数十万人の観光客が同国を訪れることが見込まれているため、ストが終結しなければ空港などでの混乱が予想される。(後略)【7月13日 ロイター】
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税関の混乱は外国人観光客には深刻な問題です。ストが現在どうなっているのか知りません。

警察の暴力 主な対象は貧民街の黒人男性
「リオ市の治安は安定する。期間中は全く心配しなくていい」(モラエス法相)とのことですが、ブラジル・リオの抱える深刻な問題がこの治安。

もちろん、住民や観光客が犯罪に巻き込まれる・・・という通常の意味での治安問題もあるのですが、治安を守るべき警官による「殺害行為」が国際的な批判を集めています。

****リオ警察による殺害行為、昨年645人 人権団体報告****
ブラジルのリオデジャネイロ州で昨年、少なくとも645人が警察によって命を奪われた――。8月の五輪開催を前に、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)は7日、リオの警察のそんな実態をまとめた報告書を発表した。「正当防衛」の名の下に、不当な殺害行為が繰り返されていると批判している。
 
リオ市は複数の麻薬組織の地盤になっていて、警察と犯罪組織の銃撃戦が日常化している。一方で、警察の発砲による犠牲者の多さが問題視されてきた。
 
109ページにわたる報告書は、過去10年間で8千人以上が警察に殺害されたと指摘。今年も1〜5月だけで322人が警察の発砲などで亡くなっているという。【7月10日 朝日】
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単に警官の発砲・射殺が多いだけでなく、“ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、警官らが致死性の武力の不正な行使の事例を隠蔽しようとした確かな証拠を64の事例で見つけたとしている。”【7月16日 サンパウロ新聞】という隠蔽工作が横行しているようです。

これは、リオには軍警察と文民警察があり、文民警察が捜査を行い、パトロールしたり、犯罪者を捕まえたりするのは軍警察の仕事・・・という組織の問題も絡んでくるようです。軍警察が止むを得ず犯人を殺害した場合、それも文民警察の捜査の対象になりますが、素人が考えても、まともな捜査が行われるようには思えません。


****10年間で8000人殺害=リオ州警察****
・・・ヒューマン・ライツ・ウォッチはこの件に関し、文民警察の捜査並びに検察当局の手抜かりを批判。

「処刑や隠蔽を実行した警官らが裁判にかけられることはめったにない。文民警察は情けないほど不十分な捜査を行ってきた。しかし、これらの事件の罪逃れに終止符を打つ責任は、最終的には、警察活動を外部から制御する権限を憲法によって与えられており、文民警察の仕事を監督し独自の捜査を行うなどしているリオ州検察当局にある」と両組織を糾弾している。【7月16日 サンパウロ新聞】
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警察による“殺害行為”が多いとされるのが、ファヴェーラと呼ばれる貧民街の住民、特に黒人男性です。
国際人権団体アムネスティでは、警察・軍による暴力に抗議する署名活動を行っています。

****リオ・オリンピックに正義を!警察の暴力を防ごう*****
オリンピックのようなスポーツイベントの開催時は、テロや暴動対策が取られます。そのために、徹底した警備計画が作られます。

しかし、警察や軍がその地域をコントロールするために警備計画を利用することがあります。時には、計画を盾に、過剰な制圧行為に出ることも。

ブラジルでFIFAワールドカップが開催された2014年、ファヴェーラ(貧民街)の治安強化のため、警察や軍は大会前から軍備を増やし、駐留する作戦を展開しました。

作戦は「先に撃て、質問は後だ」という姿勢で進められ、多くの犠牲者が出ました。研究機関の統計によれば、この年、リオデジャネイロ州では警察の取り締まりで命を落とした人の数が、40%も増加しています。

オリンピックでもこうした治安作戦が予定されています。すでに住民に死傷者が出ており、4月にはファヴェーラで警察によって5歳の男の子が撃たれて亡くなっています。(中略)

警察の標的となる黒人男性
ブラジルは世界でも殺人件数が多い国として知られています。年間6万件もの殺人が起きていますが、このうちの数千件は警察が関わっています。

2015年にはリオデジャネイロ市だけで307人が警察の捜査中に殺されています。同市で発生した殺人の、実に5分の1に当たります。

今年に入ってからも、警察の捜査中に殺された人が100人以上にのぼるという報告もあります。

犠牲者の大半は、ファヴェーラに住む若い黒人男性です。社会に根強く残る黒人に対する人種差別から「犯罪予備軍」と見なされ、標的になりやすいのです。

こうした警察が絡んだ殺害はほとんど捜査されず、処罰も十分ではありません。殺人であるにもかかわらず、公平に裁かれていません。(後略)【アムネスティ・インターナショナル日本】
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しかし、フランスで起きたテロ事件を受けて、より一層テロ対策は強化される方針ですから、「先に撃て、質問は後だ」という警察による犠牲者も増えることが予想されます。

****ブラジル 仏テロ事件受け五輪の警備態勢強化へ****
・・・・今回の事件を受けて、これまでの警備態勢を見直し、態勢の強化に乗り出すことを明らかにしました。

具体的には、競技会場の周辺では会場に入るまでのチェックポイントの数を増やしたり、警備を担当する兵士を増員したりすることを検討するとしています。

オリンピックの警備態勢について、テメル大統領代行は8万5000人の兵士や警察官などを配置するとしていました。

今週には、ブラジルメディアがフランスの情報機関の話として、ブラジルにいる過激派組織IS=イスラミックステートのメンバーが、フランスの選手団に対するテロを計画していたと報じたことも踏まえ、ブラジル政府は警備態勢の見直しを急ぐ方針です。【7月16日 NHK】
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警備強化は国際的には歓迎されるのでしょうが、その実態は・・・。

何かと厄介ごとが多いオリンピック、何を好き好んで開催するのだろうか?とも思うのですが、次は日本・東京です。

五輪そのものや、ましてメダルの数などはともかく、一人でも多くの外国人に日本に来てもらい、今の日本を見てもらうというのは非常に意義深いことではあります。
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