孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

オーストラリア  2日総選挙で「親中派」ターンブル政権が接戦を制するか?

2016-07-01 23:37:04 | 国際情勢

(5月、メルボルンのホザム選挙区で、ターンブル豪州首相(中央)と工場を視察するジョージ・ホワ氏(右)【7月1日 産経】)

先ほど北海道・道東旅行から帰宅しました。
今日、午前中は網走近郊の原生花園で自転車を借りて花が咲き乱れる中をサイクリング、午後に帰途につき、夜には自宅に・・・ということで、国内旅行は海外に比べて移動に要する時間が短くてすみます。

最近あまり国内線で荷物を預けることがなかったのですが、羽田でも鹿児島でも、ターンテーブルに着く頃には荷物が回りだすという手際の良さは、さすがに日本は素晴らしいと驚きます。
東南アジアの国では、特に早朝・深夜だったりすると荷物を受け取るのに30分以上かかったりもしますので。

与野党接戦も、ターンブル首相が政権維持?】
時間もないので、簡単にオーストラリア総選挙の話題を。

オーストラリアでは明日2日に総選挙が行われます。
事前の支持率では与野党が拮抗していますが、やや与党「自由党」が政権を維持するのでは・・・との観測がなされているようです。

****豪州総選挙】2日に投開票 「親中」ターンブル政権が辛勝か****
29年ぶりの上下両院解散に伴うオーストラリア総選挙は2日、投開票される。世論調査で二大政党の支持率は拮抗(きっこう)しているものの、与党、保守連合(自由党、国民党)が議席を減らしつつも政権を維持するとの見方が強い。
 
解散前の下院(定数150)の議席は、保守連合90(うち自由党58)、労働党55、その他5。労働党は議席を伸ばすものの、接戦選挙区で苦戦し、単独での政権交代に必要な21議席の追加は難しい見通しだ。
 
選挙結果が、親中色の強いターンブル政権に影響するかどうかも焦点の一つだが、防衛大学校の福嶋輝彦教授(豪州地域研究)は「豪州は親中と対中警戒のギャップが世界で最も大きい国。たとえ政権交代しても、南シナ海問題などへの姿勢が大きく変わることはないだろう」と指摘する。【7月1日 産経】
*******************

イギリスのEU離脱に伴う経済不安から、“経済通”のターンブル首相にとって追い風になっているとも。

****英EU離脱、与党に追い風か=2日、豪総選挙****
オーストラリアの総選挙が2日、行われる。経済重視の与党・保守連合(自由党、国民党)と、教育や福祉充実を訴える野党・労働党の支持率が伯仲し、大接戦となっている。
 
シドニー・モーニング・ヘラルド紙掲載の世論調査で、2大勢力としての支持率は中道右派の保守連合、中道左派の労働党が各50%で並んだ。ただ、選挙区ごとでは保守連合がわずかにリード。

英国の欧州連合(EU)離脱決定を受けて経済への不安感が強まり、投資銀行家出身で「経済通」として鳴らすターンブル首相に追い風になったとの指摘がある。
 
2期目を目指す首相は「危機時には強力な経済指導力が欠かせない」とアピール。ショートン労働党党首は、与党の減税策は「大企業を利するだけ」と批判し、巻き返しに懸命だ。【7月1日 時事】 
********************

与野党の二大政党が接戦の状況で、少数政党の影響力を指摘する向きもあります。

****豪総選挙は与野党の接戦に、少数政党が勢力図の鍵握る見通****
・・・ただフェアファックスの調査では有権者の27%が、両党以外に投票すると回答しており、政権を維持したいターンブル首相にとって厳しい状況が見込まれる。

独立系のニック・ゼノフォン上院議員が結成した新党も約50人の候補者を出しており、勢いづく可能性がある。

ターンブル首相は1日、労働党と連立を組む可能性のある少数政党について、鉱業投資ブームの衰退によって打撃を受けた経済のかじ取りや公共財政均衡化への取り組みは任せられないと主張。

テレビ局チャンネル7に対し、「(連立与党以外の)選択肢は混乱、不透明な情勢、機能不全、赤字や債務の増大、増税、投資や雇用の減少を意味する」と語った。【7月1日 ロイター】
*****************

存在感を増す中華系住民
ターンブル首相は「親中派」とも評されていますが、オーストラリアと中国の強い経済的結びつきを考えると、親中政権となるのも無理からぬところです。

そうした経済関係を反映して、世論調査で「アジアで最高の友人」に中国を選ぶ者が30%と、日本(25%)よりも多かったそうです。ただ、南シナ海問題では、アメリカと行動を共にすべきとの回答が74%を占めているとも。

****豪州人が考える「アジアで最高の友人」、中国が日本を上回る****
2016年6月22日、環球時報によると、豪州のローウィ国際政策研究所がまとめた報告書で、豪州人の中国に対する複雑な感情が浮き彫りとなった。

同研究所が21日に発表した報告書によると、豪州人の30%が「アジアで最高の友人」に中国を選び、日本(25%)よりも多かった。以下、インドネシア(15%)、シンガポール(12%)、インド(6%)、韓国(4%)が続いている。ただし、好感度では日本が70ポイントなのに対して、中国は58ポイントとなっている。

知り合いの中国人に対してポジティブな印象を抱いている人は85%に上り、中国の文化や歴史が好きだという人は79%、中国の経済成長を楽観視している人は75%となった。記事は専門家の話を引用しながら、多くの豪州人にとって中国は非常に重要な経済パートナーであると考えていると伝えた。

「米国との関係と中国との関係ではどちらが重要か」という質問では、それぞれ43%で並んだ。14年に同様の調査を行った時は、米国との関係が48%、中国との関係が37%だった。

一方で、86%が中国の人権問題にマイナスのイメージを持っており、79%が中国のアジア太平洋地域での軍事活動に不安を抱いていることがわかった。中国の豪州への投資については、37%がポジティブなイメージを、59%がネガティブなイメージを抱いている。

南シナ海問題では、米国と行動を共にすべきとの回答が74%となった。米国は豪州の安全に重要であると考えている人は05年の調査以来、90%を下回ったことはなく、高い水準を保っている。

一方で、米国に対する好感度は5ポイント低下し68ポイントとなった。また、米国との同盟を支持する人は昨年から9ポイント下がって過去最低の71%となった。【6月23日 Record china】
*********************

一方、人口構成比でみても、中華系が4%を占め、その影響力を無視できない状況になっているようです。
ただ、中華系が中国現政権を支持しているという訳でもないようです。

****豪州総選挙】人口の4%、高まる中華系の影響力 “強圧”中国政府との距離感悩ましく 対中依存の経済「転換が必要」とも****
豪州は経済の中国依存に加え、国内の政治面でも中華系住民の影響力の拡大に直面している。中華系は2011年の推計で86万人(豪州生まれ含む)、人口の約4%を占め、現在は100万人を超すとの見方もある。ただ、国内外で強圧的な姿勢を示す現在の中国に対する、中華系豪州人の見方は複雑だ。
 
豪州第2の都市、メルボルン郊外の商工業地域にある下院ホザム選挙区。与党、自由党から立候補したジョージ・ホワ(華●(=王へんに玉)●(=青の月が円、右に見))氏(34)は、中国・上海から2007年に豪州に留学後、定住した「新移民」だ。当選すれば、中華系新移民で初の下院議員となる。移民政策に寛容な野党、労働党ではなく、自由党から出馬したのは「党の『小さな政府』の理念が私と同じだからだ」と話す。
 
大学時代に「豪州の政治が知りたい」と党のボランティアに参加し09年に入党。卒業後、IT企業を立ち上げ、12年に国籍を取得した。14年には州議会選に出馬し落選している。
 
ホザムは過去36年間、労働党が議席を守ってきた同党の強固な地盤だ。だが、今回はターンブル首相やアボット元首相をはじめ、自由党の重鎮が次々と応援に入る。背景には、僅差で負けた前回選の経験から、ホワ氏の擁立で選挙区内の8%超とされる中華系住民の票を取り込もうとする思惑も透けてみえる。
 
中国共産党の一党独裁下で成長したホワ氏だが「中国の政治は身近になかった」と中国の内政や外交には関心がないようだ。それどころか、中国への鉱物輸出に依存してきた豪州は「経済の構造転換が必要だ」と訴える。
■  ■
豪州の中華系の団体で最も政治的影響力が大きいとされる「オーストラリア中華系フォーラム」(本部シドニー)のケンリック・シエ(謝維礼)議長(34)は、豪州生まれのマレーシア系華人だ。団体は超党派だが、自身は労働党の職員でもある。
 
1985年に設立され、中華系の地位向上に関するロビー活動などを行ってきた。会員は、70〜80年代に東南アジアや香港から来た移民や90年代以降に中国本土から来た富裕層、台湾系を含め広範で、年次会合には有力政治家が顔を出す。
 
会員の政治的関心は高いが、必ずしも中国支持ではない。与野党の候補者を招いた6月の討論会では、南シナ海問題で「同盟国の米国とビジネスパートナーの中国との間で、豪州はジレンマに直面している」と対応を問う質問が出た。
 
シエ氏も「完璧な政府はない」と中国政府への直接の批判は避けつつ、「南シナ海や台湾への攻撃的姿勢は支持しない」と話す。
 
そこには自由と民主主義の豪州で生きていく上での、“祖国”中国への複雑な距離感が表れているようだ。自らは中国人か豪州人かと聞くと、ホワ氏もシエ氏も「中華系豪州人だ」と声をそろえた。【7月1日 産経】
*******************

昔から「華僑」という形で世界各地へ進出・移住している中華系ですが、存在感を増すとともに、問題も生じています。

イタリアでは中華系住民と現地社会の摩擦も
欧州イタリアには10万人を変える中華系住民が暮らしているそうですが、社会的摩擦も報じられています。

****イタリアで華人300人が警官と衝突、当局は先導した華人らを逮捕****
2016年6月29日(現地時間)、イタリア・フィレンツェの衛生部門と警察当局が工場への定期検査を行った際、工場内の華人らともみあいになる事態が発生し、約300人の華人が関与した。環球時報が伝えた。

イタリア紙ラ・レプッブリカによると、フィレンツェの衛生部門と警察当局は29日に3年に一度の定期検査を実施。その際、4人の警官は検査に協力的でないとして華人ともみあいになった。ところが、警官が幼児をだっこしていた年配女性を押し倒してしまったことで衝突が激化。約300人の華人が参加する事態に発展し、当局は付近の高速道路を封鎖し、パトカーや消防車、救急車を出動させた。同騒動を受け、中国大使館は30日にイタリアの警察当局に冷静な検査を行うよう抗議している。

警察側は「華人が検査に協力せず警官を襲撃した」と見ている一方、華人は「当局の検査は暴力的だった」と述べている。衝突により数人が負傷。警官数人が華人らに取り押さえられ、大使館が仲裁に入るまで拘束されていた。騒動を先導した華人数人は警察に逮捕された。

報道によると、同様の騒動は今回が初めてではなく、2013年12月にプラートで起きた工場火災の際に華人7人が死亡したが、華人団体は警察側の対応が不十分だとして抗議。さらに、今年1月にはローマで起きた倉庫火災で華人1人が犠牲となり、華人団体は警察の管理に落ち度があったとして抗議した。当局の調べにより、確かに工場と倉庫に違法行為が確認されたという。

現在、イタリアには10万人を超える華人・華僑が生活している。一部の華人経営者で違法雇用や脱税といった不法行為が確認されており、現地警察が重点的に取り締まる対象となっている。一方で現地華人は警察が自分たちを敵視していると感じており、警察に不満を抱いている。【7月1日 Record china】
**********************

オーストラリアの場合、かつての「白豪主義」の話はともかく、近年でも「レッツ・ゴー・カレー・バッシング(Let's go Curry Bashing!)」という合言葉でのインド系留学生などへの排斥行動などが問題となったこともあります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする