孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベネズエラ  国内外の選挙結果捏造批判にも居座るマドゥロ大統領 残された選択肢は国を去ること

2024-08-11 22:17:25 | ラテンアメリカ

(【8月8日 AFP】 鍋を叩いて抗議する人々 しかし、それだけでは軍・警察・民兵組織の暴力装置に守られた権力は微動だにしません)

【盗まれた選挙 居座るマドゥロ大統領】
バングラデシュ・ハシナ政権のようにあっけなく崩壊する政権もあれば、一方でどれだけ国内外の批判にさらせれようが、強権的に、選挙結果を捏造しても居座る政権もあります。そのひとつが南米ベネズエラのマドゥロ大統領。

ベネズエラは長年、石油収入に依存し、原油価格が下落した後もばらまき政策を続けた結果、財政が破綻しました。一時は天文学的数字のハイパーインフレーションで市民生活は満足に食事もとれないほどに崩壊。その後も野党弾圧などを理由にアメリカから経済制裁を受け、外貨不足とインフレが常態化しています。

7月22日ブログ“ベネズエラ大統領選挙 投票日は28日 野党候補が大きくリードした状況でマドゥロ大統領の対応は?”でも取り上げたベネズエラ大統領選挙(7月28日)では、マドゥロ大統領が選挙での敗北を認めるというサプライズは起きず、想定されたように結果を捏造して居座る構えを見せています。

マドゥロ政権の影響下にある選挙管理委員会は、全国から集めた投票結果を集計する際、野党側の立会人を排除して集計を進め、その結果、マドゥロ大統領の得票率は51・95%、無名だった野党候補ゴンサレス氏は43・18%と「マドゥロ勝利」を発表しています。

一方、野党側は各地で公表される票を積み上げてゴンサレス氏が7割を得票したと発表していますが、この数字は事前の世論調査や当日の出口調査とおおよそ一致するもので、選挙結果は政権側によって捏造されたものと思われます。

国内では野党側の抗議行動が続き、国際的にもアメリカや中南米諸国から「野党勝利」の主張が出てはいますが・・・

****抗議続くベネズエラ、野党指導者がサプライズ登場****
南米ベネズエラで3日、野党指導者で、逮捕の恐れから潜伏していたマリア・コリナ・マチャド氏が支持者の前に姿を現し、「私たちはかつてないほど強くなった」と訴えかけた。

7月28日実施の大統領選でニコラス・マドゥロ大統領の再選が発表されたことへの抗議が続いており、マドゥロ氏は「大統領職を奪取する」試みだと非難した。

ベネズエラ全土で平和的なデモが継続。マチャド氏は首都カラカスで「ベネズエラは勝利した!」と書かれた横断幕を掲げたトラックに乗って予告なしに登場し、支持者を沸かせた。

マドゥロ氏は選挙後の抗議デモを受けて、マチャド氏を逮捕すると警告。マチャド氏はこの日まで身を隠していた。

支持者らは、大統領選での野党連合候補の元外交官エドムンド・ゴンサレス氏の得票率は67%だったと主張。一部の南米諸国や米国は、同氏を次期大統領として認定している。

ベネズエラに投票結果の詳細を公表するよう求める声もあり、欧州連合加盟国のフランス、ドイツ、イタリア、スペインは3日、選挙結果に「強い懸念」を表明した。

マドゥロ政権と良好な関係を維持しているブラジル、コロンビア、メキシコも、結果の「公平な検証」を求めている。 【8月4日 AFP】
*******************

****ベネズエラ、野党候補の勝利認定すべき=大統領選巡り米国務省高官****
米国のニコルズ国務次官補(西半球担当)は31日、ベネズエラのマドゥロ大統領や諸外国に対し、28日のベネズエラ大統領選で野党候補ゴンサレス氏が勝利したことを認めるよう求めた。

ニコルズ氏は米州機構(OAS)の会合で、ベネズエラの選挙管理当局が詳細な開票結果をまだ公表していないのは、ゴンサレス氏が勝利したことを隠したい、あるいは結果を改ざんする時間が必要だからだと述べた。

選管当局はマドゥロ氏が勝利したと発表しているが、野党や独立系調査機関、多数の外国政府が信頼できないとして反発している。【8月1日 ロイター】
******************

****ベネズエラ大統領選、中南米5カ国も野党候補の「勝利」を表明****
ベネズエラ大統領選を巡り現職マドゥロ大統領の「当選発表」に国際社会から批判が高まる中、アルゼンチンなど中南米5カ国は2日、野党連合候補の元外交官ゴンサレス氏が勝利したと相次いで表明した。米国やペルーも同様の認識を示しており、米大陸でマドゥロ氏の3選を否定する動きが広がっている。

アルゼンチンのモンディノ外相はX(ツイッター)に「正当な勝者、次期大統領はゴンサレス氏だ」と投稿した。ウルグアイのパガニニ外相もXで「人々の意思が尊重されることを望む」と述べた。このほか、エクアドル、コスタリカ、中米パナマがゴンサレス氏勝利を表明した。(中略)

ベネズエラでは集計に不正があったと抗議するデモが広がり、地元NGOによると、これまでに少なくとも11人が死亡。マドゥロ政権は抗議デモに絡んで1200人以上を拘束した。

2日未明にはゴンサレス氏の陣営本部に武装集団が押し入り、書類などを持ち去った。マドゥロ派による犯行との見方が出ている。【8月3日 毎日】
********************

国内外の批判があるなかで、中国・ロシアやキューバなどがマドゥロ大統領勝利に祝意を送っています。

与野党は昨年、ノルウェーの仲裁のもと公正で民主的な大統領選を実施することに合意し、アメリカはこれを評価して一時的にベネズエラへの経済制裁を解除するという「アメ」も与えていましたが、有力野党候補マチャド氏を選挙から排除したあげく、無名候補にも敗れると選挙結果を捏造するという結果に。

マドゥロ大統領には民意を反映した選挙を実施する考えはなく、選挙は自身の政権の正統性をアピールするための道具に過ぎません。

国民がいくら鍋やフライパンを叩いて抗議しても、政権を譲る考えはありません。

【軍・警察・民兵組織という暴力装置で守れた権力】
国内が混乱した場合、軍の動向が決定的影響を持つというのが現実で、野党側も軍に国民の側に立つように求めていますが・・・

****ベネズエラ国防相、マドゥロ大統領に軍の「絶対的な忠誠」表明****
ベネズエラのパドリノ国防相は6日、7月28日の大統領選を巡り現職マドゥロ大統領と野党候補だったドムンド・ゴンサレス氏双方が勝利を主張する中、マドゥロ氏に対する軍の「絶対的な忠誠」を再確認すると表明した。

ゴンサレス氏と野党連合を率いたマリア・コリナ・マチャド元国会議員は5日公表の書簡で軍に「国民の側に立つ」よう求めていた。

パドリノ氏はテレビ演説で、野党側の要求を「愚かで非理性的」と一蹴し、「われわれの団結と確立された制度を壊そうと狙っているが決して壊すことはできない」と強調。軍幹部や警察が同氏の周りを囲んだ。

野党側はゴンザレス氏の得票数が600万票強と、マドゥロ氏の270万票の2倍以上だったと主張。3万台の投票機分の投票用紙の写しをインターネット上で公開している。

選挙管理委員会は投票用紙の写しを公表しておらず、7月29日以降、ウェブサイトもダウンしている。【8月7日 ロイター】
*********************

軍幹部も既得権益を得て、体制の枠組みの一環となっているものと推測されます。

チャベス前大統領以来の強固な支持者が一定に存在するのも事実ですが、軍・警察そして民兵組織という暴力装置に守られた権力は鍋やフライパンを叩いただけでは微動だにしないのが現実です。

【マドゥロ強権支配が更に6年続くのか 残された選択肢は国を去ることだけ】
国民に残された対応としては、国を去ることだけか・・・

“経済苦と強権統治から逃れようと、すでに全人口の4分の1にあたる770万人以上がブラジルやコロンビア、米国などに逃れ、今後さらに増えるとみられる。”【8月5日 読売】

****また6年...独裁者マドゥロ「怪しい再選」で次に起きること ベネズエラ国民4人に1人が移住を検討****
<26年ぶりの変革に国民は期待を寄せたが、今回も勝ったのは現職ニコラス・マドゥロ大統領。「不正が行われた」との見方がもっぱらだ>

ベネズエラ大統領選挙が行われた7月28日、国民は夜遅くまで起きて開票結果を見守った。1998年に左派のポピュリスト、ウゴ・チャベスが政権の座に就いて以来の大きな政治的変革を期待したのだ。

だが勝利したのは、チャベスの後継者で3期目を目指す現職のニコラス・マドゥロ。独裁的な左派政権がさらに6年間、続くことになる。

(中略)ゴンサレスは支持者に対し、デモなどは行わず、暴力に訴えることのないよう呼びかけた。これを受けて、首都カラカスの多くの地区では29日、鍋やフライパンをたたく音が響いた。これは中南米の伝統的な抗議行動のやり方で、「カセロラソ」と呼ばれる。

政権打倒を狙った試みはこれまで何度も行われたし、経済制裁などの外国からの圧力もあったが、いずれも結果には結び付かなかった。専門家や政治家は政権交代の可能性について悲観的な見方を示す。

「国際社会の選択肢は限られているし、(マドゥロ政権と野党側や諸外国との)対話からも、近い将来ベネズエラで大きな政治的変革が実現する見通しは暗いことがうかがえる」と、アンデス大学(コロンビア)のサンドラ・ボルダ教授は本誌に語った。

マドゥロ政権発足以降の10年間に、数百万人のベネズエラ国民が国を去った。ハイパーインフレの原因となった経済政策や周辺諸国からの圧力、そして新型コロナウイルスのパンデミックがその流れに拍車をかけた。

米シンクタンクの移民政策研究所のデータによれば、2010年以降、アメリカへのベネズエラ人移民の数はほぼ3倍に増えた。

ベネズエラ情勢の先は見えない。フリオ・ボルヘス元国会議長ら野党指導者からは、軍に対して「国民の意思を守る」行動を取るよう呼びかける声まで出ている。

ベネズエラの調査会社デルフォスが6月に行った全国規模の世論調査によれば、約4人に1人が外国への移住を検討していて、その主な理由は経済問題だという。ちなみに移住を考えている人のうち、約半数は大統領選で野党が勝利したり、経済情勢が改善すれば国に残ると答えている。

今後、マドゥロが野党への圧力を強めるシナリオもあり得る。特に標的になりそうなのがマチャドだ。タレク・ウィリアム・サーブ検事総長は、マチャドが「アメリカの勢力」と手を組んで、大統領選の開票システムをハッキングしたと非難している。

国際社会におけるベネズエラの政治的孤立がさらに深まる可能性もある。もっともマドゥロはこれまで、そうした状況をうまく切り抜けてきた。

例えば19年にはフアン・グアイド国会議長(当時)が暫定大統領への就任を宣言し、2人の大統領が並び立つという事態が続いた。グアイドはアメリカなど西側諸国の支持を集めたが、マドゥロ政権を倒すことはできず失脚。フロリダで亡命生活を送っている。【8月6日 Newsweek】
***********************

気が滅入る現実です。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« LGBTを西側の価値観として否... | トップ | フィリピン  南シナ海の緊... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ラテンアメリカ」カテゴリの最新記事