孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン タリバン復権3年 中ロの承認に向けた動きも 進展しない女性の権利

2024-08-14 23:04:58 | アフガン・パキスタン

(アフガニスタン・バグラム元米空軍基地で行われた、イスラム主義組織タリバンによる政権掌握3年を祝う軍事パレード(2024年8月14日撮影)【8月14日 AFP】 ヘリはかつての政府軍所有のものでしょうか?)

(パリ五輪のブレイキンに出場した難民選手団のマニジャ・タラシュ。英語で「アフガン女性を解放せよ」と書かれたマントを広げた。その後失格となった=9日、パリ(共同)【8月10日 共同】)

【タリバン復権3年 周辺国との外交関係は「承認された政府レベルにある」(外相)】
アフガニスタンではイスラム主義組織タリバンによる政権掌握から3年が経過しました。
国際批判にもかかわらず女性の権利が認めらないまま、タリバン支配は事実問題としては強固なものになっています。

****タリバン、政権掌握から3年 軍事パレード開催****
アフガニスタンで14日、イスラム主義組織タリバンによる政権掌握から3年の祝賀行事が行われた。

首都カブールから約40キロのかつて米軍が利用したバグラム空軍基地の跡地では、演説や軍事パレードが行われ、中国やイランの外交官らも出席した。

街では祝賀行事のための横断幕や看板を設置する作業員の姿が数日前から見られた。

アフガニスタンでは2021年8月15日、指導者らが国外脱出し、米国が支援する政府が崩壊。同日、タリバンが首都カブールに入城した。8月14日が記念日に制定されている。

イスラム教の厳格な解釈に基づく法律が導入されているアフガニスタンは、過去3年間でタリバン暫定政府の統治はより強固なものになった。

一方、女性に課している制限は批判されており、国際社会は暫定政府を承認していない。【8月14日 AFP】
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国際社会は暫定政府を承認していない・・・とは言うものの、タリバン暫定政権のムッタキ外相は周辺国との外交関係は「承認された政府レベルにある」と自信を見せています。

****ムッタキ外相「承認された政府」 タリバン復権3年、成果強調****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権の復権から15日で3年となるのに合わせ、ムッタキ外相が共同通信と単独会見した。

女性に対する人権侵害を主な理由に政権を承認した国はないが、ムッタキ氏は周辺国との外交関係は「承認された政府レベルにある」と主張した。また「強固な治安部隊と国民の支持で治安を確保した」と3年間の成果を強調した。

暫定政権は今年、国連主催の会議に初出席し、国際社会との距離を縮めている。ムッタキ氏は正統な政府として外交を進める姿勢を鮮明にし、統治継続にも自信を見せた。首都カブールの外務省で13日に会見に応じた。(中略)

暫定政権は中学生以上の女子教育を停止し、国連や非政府組織(NGO)での女性の就労も制限している。国際社会はこれを批判し政権を承認していないが、ムッタキ氏は「承認を公に表明するかどうかはそれぞれの国の政治に絡んだ問題だ」と指摘した。【8月14日 共同】
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タリバン暫定政権を「承認された政府レベル」として扱っているのが中国で、タリバン暫定政権が派遣した大使を受け入れています。

****中国がタリバンの大使を受け入れ 狙いは****
今、習近平政権の大きな関心は、国内の安定にあります。 アフガニスタンとは新疆ウイグル自治区で国境を接していますので、こうした地域に過激派が浸透しないよう、アフガニスタン側での治安対策の強化を求めたい狙いがあります。 

さらに、アフガニスタンに埋蔵されているとされる石油や重要鉱物などの資源開発、それに巨大経済圏構想「一帯一路」への取り込みも進めたい思惑がありそうです。 

ただ、人権よりも実利を重視しているとも受け止められかねない中国の姿勢には、国際社会からの厳しい目が注がれることになりそうです。【23年12月21日 NHK】
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ロシアもタリバン暫定政権との距離を狭めています。

****タリバン「テロ」指定近く解除か 乱射事件受け協力重視 ロシア****
ロシア外務省は1日、アフガニスタンで2021年に実権を掌握したイスラム主義組織タリバンの「テロ組織」指定解除について検討を進めていると表明した。タス通信に明らかにした。

法務省などと共に議論しており、プーチン大統領が「最終決定」を下すことになると説明した。  

モスクワ郊外で3月下旬に発生し、140人以上の死者を出した銃乱射テロでは、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行を主張。アフガンを拠点とするIS系の「イスラム国ホラサン州」(IS―K)が関わったとみられている。プーチン政権は、アフガンからの過激派流入を阻止するため、タリバンとの協力を深めたい考えとみられる。【4月2日 時事】
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プーチン大統領はタリバン暫定政権の承認に前向きな姿勢を示したとも報じられています。

冒頭記事によれば、政権掌握3年の記念式典にイランも参加しているとのことですから、イランとの関係も接近していると見られます。

【歩み寄りは見られない女性の権利の問題】
一方、欧米は女性の権利の問題を最重視していますが、タリバン側の歩み寄りはまだありません。

****タリバンが出席し国連会議、女性の参加はなく アフガニスタン情勢を協議****
国連は1日までの2日間の日程で、アフガニスタン情勢について話し合う会議をカタール・ドーハで開催した。アフガニスタンで2021年に復権した武装勢力タリバンの代表団も初めて出席した。タリバン政権はどの国からも政府として承認されていない。

複数の外交官は、タリバン代表団との2日間の協議は実りあるものだったとしている。

タリバン政府の主張により、市民社会団体の代表者の同席はかなわなかった。そのため、アフガニスタンからの代表団には女性が1人も含まれておらず、人権団体や活動家たちから批判の声が上がった。国連関係者は2日、アフガニスタンの市民社会団体と個別に面会した。

解決策の提示なく、タリバン政府はどうするつもりか
この会議の主催者や参加者からは、大々的な発表も、大きな打開策も、そして解決策も提示されなかった。もとからそのいずれも期待されていなかった。その代わりに、タリバン当局者や外交官たちは落ち着いていて、ひとまずは前向きな様子だった。

BBCが話を聞いた外交官たちによれば、協議のトーンは「敬意のある」「積極的で」「率直」なものだったという。何度も繰り返されたのは、「これはプロセスだ」という言葉だった。

ザビフラ・ムジャヒド報道官率いるタリバン代表団からは、譲歩も誓約も得られなかった。BBCのキャロライン・デイヴィス記者が、タリバン政府は何を提示するつもりなのかを尋ねると、同報道官は「我々は、彼ら(国際社会)が何を望み、我々がシャリア(イスラム法)に基づいて何ができるのかを見極め、前に進む」と答えた。

「シャリアに反するものについては我々は議論しない。シャリアの枠組みに収まるものなら、それを解決する。これはプロセスであり、これからも続いていく。これが我々をどこへ導き、我々がどれだけ改善していけるのか、そのうちわかるだろう」

女性めぐる問題は国内で解決と
今回議題となったのは、麻薬対策や民間セクターに関するもので、人権や女性の役割をめぐる問題よりは取り上げやすいテーマだった。

後者について、タリバンは国内の問題だとの見解を崩さなかった。「我々はこの種の問題を、他国と議論したくはない。我々は自国で解決策を見つける」と、ムジャヒド報道官は述べた。

タリバン復権から3年近くたった今も解決策がないことをBBCが指摘すると、同報道官はこう答えた。「我々はそのことを無視しているわけではない。我々は取り組んでいる。シャリアに基づく解決策を模索している」。

「ジェンダー・アパルトヘイト」
アフガニスタンでは女性や子供は中学校に通うことや、公園やスポーツジムに行くこと、特定の仕事に就くことなどが禁じられている。こうした制限が増えているアフガニスタンの状況を、国連は「ジェンダー・アパルトヘイト」と呼んだ。(中略)

欧州連合(EU)のアフガニスタン担当特使、トーマス・ニクラソン氏は「彼ら(タリバン)は(女性の権利について)話し合う準備ができているが、実行する準備ができていないと私は思う」とBBCに述べた。
「私は女性の権利をめぐる状況が変わると希望を持っている。ただ、時間的な見通しについてはわからない」(中略)

会議の成果は
(中略)タリバンが実権を握ってから3年近くがたった。BBCが取材した外交官たちの間には、一つの考えが広まっていたと、デイヴィス記者は指摘する。それは、少なくとも意見が一致するいくつかの部分で関わっていかなければ、アフガニスタンの状況はほとんど改善しないだろうというものだったという。

「とにかく、どこかからか始めなければならないと、我々は感じた」と、国連のディカルロ氏は2日の記者会見で述べた。【7月4日 BBC】
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「とにかく、どこかからか始めなければならない」というのそうでしょうが、「彼ら(タリバン)は(女性の権利について)話し合う準備ができているが・・・」というのは、やや楽観的なようにも。中国・ロシアがタリバンに接近すれば、タリバンに変革を迫る圧力も減弱します。

発言者のトーマス・ニクラソン氏自身も「希望とは必ずしも理性的なものではない」と付け加えたとのこと。

なお、過去2回の会議にタリバンが参加しなかったこともあって、今回(3回目)はタリバンが出席しやすい形で会議が開催されました。

しかし、アフガン人女性は招待されなかったことに、人権活動家らから批判の声が出ています。また、女性問題が議題とされなかったことについても、「少女や女性の人権は最優先事項ではないとする誤ったメッセージを伝えてしまう」(ノーベル平和賞受賞者マララ・ユスフザイさん)という批判も。

先日行われたパリオリンピックでは、IOC=国際オリンピック委員会はアフガニスタンの選手男女6人を招待しましたが、タリバンは女子選手3人について、自国の選手として認めない方針を示しています。

その女性選手であるユースフィ選手は、「アフガニスタンの少女や女性たちは最も重要な教育を含む基本的な人権を剥奪され、公園に入ることも許されない。彼女たちの奪われた夢と願いを代表したい」とパリオリンピックに向け決意を示す声明を発表していました。【7月9日 NHKより】

また、ブレイキンに出場した難民選手団のマニジャ・タラシュ選手(アフガニスタン出身)は、“ダンスを始めると頭のバンダナを取り去った。女性は全身を覆うブルカの着用を求められるアフガンの状況に抵抗するかのように黒髪をあらわにした。さらに黒いスエットシャツを脱ぐ。現れた水色のマントには英語で「アフガン女性を解放せよ」と書かれていた。”【8月10日 共同】とのことですが、観客や対戦相手から大きな拍手が送られたものの、試合後に「服装に政治的なスローガンを書いた」として失格になっっています。

“ブレイキンで難民選手団選手 アフガンの女性解放訴え パリ五輪”【8月10日 NHK】
“ブレイキンの難民選手、失格に 「アフガニスタン女性に自由を」”【8月10日 共同】

【閑散とした遊園地 怯える美容師】
アフガニスタンの国内現状については以下のようにも。

****女性の姿ないアフガン、遊園地閑散・美容院は地下営業…タリバン実権掌握3年****
アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが実権を掌握してから15日で3年となる。女性の人権侵害などを理由に暫定政権を承認する国はなく、孤立が深まっている。戦争状態から脱して治安は回復したが、制裁と抑圧下にあり、祖国を見限って国外移住に希望をつなぐ人も多い。(カブール 吉形祐司、写真も)

国外移住希望者も
首都カブールにある遊園地「シティーパーク」は閑散としていた。時折響く歓声が園内にこだまし、入場者の少なさを印象づける。園内の光景は異様だ。観覧車も回転ブランコも無人。そして、女性の姿がない。

「10年前の開園当初は昼食もとれないほど多くの来園者がいた。過去3年は、ご覧の通りだ。女性の入園が禁止され、家族で入れないからね」。関係者が肩をすくめた。110人いた職員は今、23人だという。

「たまにしか来ない。家族で一緒に入れないから」
息子2人にせがまれて訪れた無職の男性(35)が話し始めると、別の男性が近づき会話を遮った。警備担当で「取材には許可が必要」だと言う。外務省発行の取材許可証を示すと写真を撮影し、「これではダメだ。報告しておく」と告げた。無職の男性は「今も以前も、家族で来たことはない。何も変わっていない」と口をつぐんだ。

タリバンが導入した女性の教育や就業制限などは続き、昨年、禁止された美容院は街角からなくなった。「地下営業」をする美容師4人に取材を試みたが、安全を理由に拒否。1人は「4日前に姉妹4人とともにタリバンに逮捕された」と仲介者が打ち明けた。

電話で接触したある美容師は「怖い。私を国外に連れ出してほしい。外国でなら、起きたことを全部話すから」と訴えた。地下営業の仕事場で他殺体となって見つかった美容師もいるという。誰の仕業か不明だが、同業者の間では隠れた営業でタリバンともめ事があったとの見方が広がっている。

カブールの街は、治安悪化の元凶だったタリバンが実権を握ったことで平穏が戻った。タリバンと敵対するイスラム過激派組織「イスラム国」のテロはあるが、標的は限定的だ。市場や商店街は活気づいている。

しかし、市民は一様に経済的な苦境を口にする。現実は、外見上の街の表情とは違う。

露天商が集まる中心部のタイマニ・プロジェ通りでスイカを売るアフタブッディンさん(29)は政府の元職員で、タリバンに役所を追われた。銀行に再就職したが、勤務先の支店はタリバンが利子を禁じたため閉鎖され、スイカ売りに転身した。「収入は1日に300アフガニ(約620円)。以前の5分の1で夏だけの仕事だが、他に選択肢がない」と嘆く。

自営業のカリミさん(38)は過去、米軍の燃料調達に協力していた。「将来に何の保証も安全もない。娘は学校に行くことも許されない」と、米政府が発給する特別移民ビザを申請した。祖国への未練はない。ビザ申請の手続きを終えたのは2022年7月。自宅には、いつでも出発できるようまとめた荷物を置いたまま、米政府からの連絡を待ち続けている。(後略)【8月14日 読売】
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上記記事後半は麻薬問題の現状についてのものですが、確かに路上に溢れていた薬物依存者は強制排除されたものの依存者は跡を絶たない、確かにケシ栽培は95%減となったものの、一部のタリバンとつながる農家が栽培を続け、密売ビジネスにかかわるタリバンの一部有力者の懐を潤しているという現状が報じられています。

そのあたりの話はまた別機会に。
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