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急速に進行する円安

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5070.html
もう少し長期的に推移を見ると、相場は大きな変動を繰り返していることもわかります。問題は人為的・意図的な為替操作があったのか・・・というところですが、金融緩和を行えば通貨安につながりますので、何を持って“意図的”とするのかも判然としません。
【「為替レートを政策目標にしない」】
デフレ経済を克服するために2%のインフレターゲットを設定し、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3つを基本方針とする経済政策で臨むという「アベノミクス」を受けて、“日経平均株価は、昨年11月半ばから今週まで12週間連続で値上がりした。59年以来、これほど長期の上昇は実に半世紀ぶりだ。昨年11月以降、米ドルは対円で約16%値上がりし、長らく円高に苦しめられてきた日本企業はようやく一息ついた”【2月12日 Newsweek】と、急速な株価上昇・円安が進行し、景気回復への期待感が強まっています。
2012年10~12月期の国内総生産(GDP)の伸び率(実質)は前期比年率0・4%減と、前期の同3・8%減からマイナス幅が大きく縮み、日銀は国内景気について14日、「下げ止まりつつある」との判断を示しています。
当然ながら、円安は輸出企業にとっては福音ですが、輸入に依存する産業にとっては大きな問題となります。
また、貿易相手国には不利な条件変更ともなります。
従って、自国通貨を安くして自国の輸出企業に有利にしようとする「通貨安競争」は国際的には“禁じ手”となっており、意図的な通貨安誘導があったかどうかが問題となります。
日本の「アベノミクス」についても、意図的な円安誘導を行っているのではないか・・・との批判・懸念が国際的にありますが、12日のG7では「為替レートを目標にしない」ことが改めて確認されています。
****為替レート「政策の目標にしない」…G7が声明****
日米欧の先進7か国(G7)の財務相・中央銀行総裁は12日夜、「為替レートは市場において決定されるべきで、為替レートを(財政・金融政策の)目標にしない」などとする共同声明を発表した。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」が、円安誘導を意図したものではないかとの懸念が欧米の一部で出ていたため、G7各国で認識を再確認した。
G7は2011年9月に同様の声明を発表し、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは経済・金融の安定に悪影響を与えることなどを明記した。今回は、〈1〉財政・金融政策は、それぞれの国内目的を達成することに向ける〈2〉為替レートを目標にしないことを再確認する――との文言を新たに付け加えた。
日本は、アベノミクスが、自国通貨を安くして自国の輸出企業に有利にしようとする「通貨安競争」には当たらないと主張しており、声明も日本の主張にもある程度配慮する形となった。【2月12日 読売】
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ただ、アベノミクスが「通貨安競争」には当たらないとの日本の主張がG7で認められたのかどうかは判然としません。
“声明をめぐって、麻生太郎財務相は「デフレ対策が為替に使われたのではないことが正しく認識された」と発言したものの、G7高官が「円の過度な動きに対する懸念を示すつもりだった」と述べ、G7の足並みの乱れが露呈する形となり、為替相場が乱高下した”【2月15日 時事】
【新興国:「主要国側が通貨安政策をとっている」】
いずれにしても、日本の円安問題は今夜から始まるG20で論議を呼びそうです。
アメリカは日本の政策を一定に支持していますが、欧州には批判も多く、新興国も為替の問題には敏感です。
特に、日本の貿易相手国になる中国・韓国は厳しい批判を行うことが想定されます。
****円安で日本批判も―G20財務相・中銀総裁会議が15日開幕****
日本は15、16日にモスクワで開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、自国の為替政策への不満が噴出する恐れがあるなど、厳しい立場に置かれそうだ。
G20に先立ち、先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁は12日、最近の急激な円安に端を発した為替操作をけん制する共同声明を発表。日本の声明への署名は不本意ともみられた一方、施策がG7から事実上容認されたとの認識も示した。
声明では各国の財政・金融政策について、「国内目標を達成することに向けられ、為替レートを目標にしないことを再確認する」と明記された。麻生太郎副総 理・財務・金融相は記者団に対し、声明の取りまとめについて「一般的にみんなでこの話を協議し合ったというのが実態だ」と述べた。
ただ、麻生財務相など日本政府関係者は共同声明について、特に円安をもたらした最近の大胆な金融政策など、日本の施策を擁護するものとの見方を示した。さらに財務相は、G20会合で外国為替をめぐる非難合戦が生じるのを阻止することが声明発表の狙いという見方を肯定した。G20 には韓国や中国など、日本の経済政策を公然と批判している参加国もある。
共同声明が日本の政策を容認したのか、あるいは批判したのか、その解釈をめぐってアナリストやトレーダーの間で意見が分かれるなか、円相場は上下に振れる展開となった。
市場が混乱したのは、日本の政策への見解についてG7内で足並みが乱れていることも要因となっている。ドイツとフランスが批判的な一方で、米国はある程度支持しているもようだ。
G7の指導者は概して、円高の是正を目指すことを示唆した日本政府関係者の発言に不快感を示しているものの、日本の金融政策については、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)の政策と類似していることもあり、これまで支持してきた。
カナダ銀行(中央銀行)のマーク・カーニー総裁は今週、「マクロ政策に大幅で非常に明白な動きがあったことをめぐり、日本当局が一定の為替相場を目標にしていると懸念する向きがある。G7ではこうした問題も協議した。今週末のG20会議でも議論に上ることは間違いないだろう」と述べた(後略)【The Wall Street Journal】
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G20で日本が批判の矢面に立たされる事態は覚悟したほうがよさそうです。
****通貨高に悩む新興国 主要国の為替政策批判****
主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が15、16日にモスクワで開かれるのを前に、自国通貨の上昇に悩む新興国から「主要国側が通貨安政策をとっている」と批判が強まっている。G20では、為替を動かす政策のあり方が議論の中心になる見込みだ。
「欧州が通貨安競争に加わったら、もっとひどいことになる」。ブラジルのマンテガ財務相は先週、英メディアのインタビューでこう警告した。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」で、円安が進んでいることを念頭に、欧州が日本に対抗してユーロ安を促す政策をとり、自国通貨レアルがさらに値上がりすることをおそれている。
円安が進むのとは対照的に、レアルは年明けから上昇基調が続く。同じように、メキシコやチリ、コロンビアなど中南米の有力新興国の通貨もそろって値上がりしている。
チリのラライン財務相は先週、「通貨安競争が進めば、新たな貿易保護主義につながる」と先進国を非難した。
韓国も神経をとがらせている。通貨ウォンの上昇で、輸出企業の業績に悪影響が出始めた。
韓国銀行(中央銀行)の金仲秀(キムチュンス)総裁は「特定の国にとっては失うものが多い。韓国がまさにそうだ。国際規範を逸脱しなければ自身を守る努力が必要だ」と対抗措置をとることも示唆した。ウォンは1月、大企業が採算割れとなる1ドル=1059ウォン(韓国貿易保険公社)を一時上回り、すれすれの状態が続く。
批判を高める新興国に対して、日本など主要国はどう説明するのか。G20での対応が注目される。 【2月15日 朝日】
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【“悪巧みは知らぬ顔で通せばよい”】
各国とも「本音では通貨安に期待している」状況、また、為替操作は多くの国が行っている状況で、日本だけが批判の矢面に立たされるのは・・・という不満もあるようです。
****世界は“為替操作国”だらけ…日本政府は素直すぎる****
・・・・実のところ、世界は“為替操作国”だらけだ。金融危機以降、5回の金融緩和を実施した米国やユーロ圏など、30カ国以上が自国の通貨安につながる超低金利策をとっており、実質金利がマイナスまたはゼロ近辺に張り付いている。
なのに、なぜ日本ばかりがたたかれるのだろうか?
理由は国際金融のプロトコル(儀礼)違反。国際金融筋には情報漏洩(ろうえい)など数々のご法度があるが、細心の注意を払うべきは為替に対するコメントだ。為替は当該国が得すれば相手国が損するゼロサムゲームなので、相手国を刺激する発言は国家戦略的にタブーである。
為替は世界で最も合理的と見なされている巨大金融市場だが、金融緩和は結果的に通貨安につながる。通貨安となった当該国は輸出に拍車がかかるが、競合する輸出品を売る国や輸入国の貿易収支には負の影響を与える。
その暗黙のルールに日本の閣僚や政権幹部が相次いで違反した。希望する円レートの目標レンジを具体的に指摘した政権幹部もおり、日本政府として為替水準に関与できる、または操作できる立場にあることを世界に宣言してしまった。
そもそも「通貨戦争」なる言葉を言い始めたのはブラジルの財務相で、10年に米国の量的緩和策を批判したのがきっかけだった。この量的緩和策はオバマ政権の掲げる輸出拡大計画を援護射撃する意味合いがあり、米国への輸出競争力が落ちたブラジルが怒った。
米国こそ「火付け役」なのだ。だが、FRBやオバマ政権の幹部は為替にかかわる発言を一切避け、揚げ足を取られなかった。
日本政府は素直すぎる。悪巧みは知らぬ顔で通せばよい。「為替は市場が決めることですから」と。【2月12日 産経】
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麻生太郎財務相は、日本政府の“無作為”について、彼独特の言い回しを行っています。
****円安「おれたちは何もしていない」 麻生財務相****
「おれたちはまだ何もしていない。ちょっとアゴでするだけで株価は2割強上がり、為替もスルスルと円安になった」。麻生太郎財務相(副総理)は14日の麻生派の会合で、自らのアゴを突き出しながら日本政府による「円安誘導」との指摘を打ち消した。
「輸出企業はえらい利益が出ている。各国の大臣は『どうしたらできるか聞きたい』というが、勝手に世の中が上がっている」とも強調。15日からの主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議への出席を前に、「日本だけトリックしているように思われるとかなわん」と予防線を張った。【2月14日 朝日】
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“ちょっとアゴで”何をするのか? この人がしゃべると、余計に事態が混乱するのは以前からのことです。
なお、次期日銀総裁候補の1人とされる岩田一政日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)は、1ドル=95円程度が妥当だとの見解を示しています。
****1ドル=95円が「妥当」、岩田元日銀副総裁が自民議連で表明****
岩田一政日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)は14日午前、 現在の円相場は割高であるとの見方を示したうえで、交易条件からみれば1ドル=95円程度が妥当だと述べた。
日銀法改正を目指す自民党議連「デフレ・円高解消を確実にする会」(山本幸三会長)で述べた。出席した自民党関係者が明らかにした。
次期日銀総裁候補の1人とされる岩田氏は会合で、実質実効為替レートを基にした「均衡レート」の試算を披露。15─30%のかい離があるとして、対ドルでは90円から100円程度までが「均衡への回帰」だと指摘し、その中間点となる95円付近が妥当との考えを示した。「円高是正はどうしても必要だ」と述べたという。 (後略)【2月14日 朝日】
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【最近の為替相場をめぐる「騒ぎ」は無益】
こうしたなか、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、為替相場を巡る論争が過熱することを憂慮する発言を行っています。
****為替めぐる「騒ぎ」は無益=議論過熱に警鐘―ECB総裁***
モスクワで開催されている20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に参加している欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は15日、最近の為替相場をめぐる「騒ぎ」は無益だと語り、議論の過熱に警鐘を鳴らした。ロシア中銀との会合後の記者会見で語った。
ドラギ総裁は「為替相場は金融政策の目標ではないが、経済成長や物価安定には重要」と指摘。あくまでもこうした視点の範囲内で、為替動向を観察するとした。その上で、「ここ数週間の為替をめぐる騒ぎは、不適切、あるいは無益で、自己破滅的だ」と表明。構造改革などの議論の重要性を強調した。【2月15日 時事】
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