孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

韓国  高まる核武装論、先制攻撃論など対北朝鮮強硬論 

2013-02-16 21:11:48 | 東アジア

(韓国軍の駆逐艦から発射される巡航ミサイル “北朝鮮の核実験強行を受け、韓国軍は北朝鮮全域が射程に入るミサイルを実戦配備した。配備されたのは射程距離500キロ以上の巡航ミサイル”【2月16日 聯合ニュース】http://app.yonhapnews.co.kr/yna/basic/articleJapan/new_ArticlePhoto/YIBW_new_showArticlePhotoView.aspx?contents_id=PYH20130214080100882

独立した国家として最小限の核カードを
北朝鮮が国際批判を無視する形で長距離弾道ミサイル発射・核実験を繰り返す中で、対北朝鮮で融和的・抑制的な対応をとることも多かった韓国で、核武装論や先制攻撃論などの強硬論が高まっていると報じられています。

****韓国、高まる核武装論 対北、広がる無力感****
北朝鮮での相次ぐ核実験強行を受け、韓国で「わが国も核武装すべきだ」との議論が起きている。
主に保守陣営から出ているもので、与党セヌリ党では13日の幹部会で「最小限の自衛策として、北朝鮮の核問題が解決した場合に廃棄することを前提に、わが国も核武装宣言をすべきだ」との意見が堂々と示された。またソウル市内では、保守団体が核武装論を主張する集会を開いている。

韓国の核武装論は北朝鮮に対する独自の“交渉カード”としてしばしば登場しているが、米国との関係をはじめ国際的環境などから現実性は今のところはない。しかし、6カ国協議をはじめ北朝鮮の核問題解決に対して無力感が広がっており、その欲求不満が独自の核武装論を招いている。特に韓国の場合、1992年に北朝鮮との間で非核化宣言をしながら、これまで北朝鮮に全く無視されてきたという経緯がある。

保守派の論客として影響力を持つ金大中・朝鮮日報顧問は核武装論者として知られるが、これまでの寄稿文で「今すぐ核武装を宣言しようというのではない。われわれの核保有に関する足かせを解き、核を持つかどうかという問題を真剣に議論することを宣言しようというのだ。独立した国家として最小限の核カードを持とうということだ」(昨年7月10日付の朝鮮日報)と主張している。
また産経新聞の正論メンバーの一人である評論家の趙甲済氏は、独自核武装論の持ち主として、以前から韓国内で講演会や寄稿文を通じ論陣を張っている。

韓国の核開発は、朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代の1970年代後半、米国のカーター政権に在韓米軍撤退の動きがあったことなどを背景に独自開発の計画があったが、米国の強い圧力で中止されたといわれている。また北朝鮮の核武装については、若い世代などの間には「南北統一すればわれわれの核になる」と民族主義感情から容認する声も聞かれる。【2月15日 産経】
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“若い世代などの間には「南北統一すればわれわれの核になる」と民族主義感情から容認する声も聞かれる”というのは、日本とは全く異なる韓国の事情を反映した声です。
“米国との関係をはじめ国際的環境などから現実性は今のところはない”とは言うものの、こうした主張が表面化すれば、おのずと日本でも「中国、北朝鮮、更に韓国も・・・」ということで、日本の核武装論が高まることも考えられます。

韓国国会においても、“米国の戦術核の韓国への配備や核保有について、政府の見解を問いただす質問が相次いだ”とのことです。

****韓国で高まる強硬論、核配備求める議員も 対北朝鮮****
北朝鮮の3回目の核実験を受け、韓国では一部から「核配備」を求める強硬な意見が噴き出し始めている。国防省も北朝鮮全域を射程に収める巡航ミサイルを公開し、韓国の「軍事的対応力」を強調するなど、北朝鮮との対決モードは高まるばかりだ。

14日、国会では与党議員らから、米国の戦術核の韓国への配備や核保有について、政府の見解を問いただす質問が相次いだ。
金滉植(キムファンシク)首相は「核不拡散条約(NPT)に加盟しており、韓(朝鮮)半島の非核化は国家戦略目標」「米国の『核の傘』の下で対応している」などと従来の見解を繰り返した。しかし、議員らからは、朝鮮半島非核化宣言が北朝鮮の「無効化宣言」で有名無実化し、核実験で北朝鮮の脅威が高まる中で、政府に再考を迫る声が上がった。

韓国軍は北朝鮮に対し、強硬なメッセージを出し続けている。金寛鎮(キムグァンジン)国防相は同日、視察先の部隊で「北は核実験に続き、今後も挑発をしてくる」と指摘。「挑発してきたら我々が持つミサイルで敵の脈を断ち、息の根を止められるよう準備せよ」と命じた。

さらに国防省はこの日、北朝鮮全域が射程に入る巡航ミサイルの映像も公開。韓国のテレビは、艦上などから発射されたミサイルが標的を突き破り、破壊する様子を繰り返し流した。
同省関係者は「北朝鮮のあらゆる施設を、必要な時に正確に打撃できる」と強調。公表の理由については「韓国も十分な対応能力があることを示すため」と説明した。【2月15日 朝日】
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先制攻撃も想定して、米韓の防衛戦略の本格的な見直し
上記記事にもあるように、国防省サイドの鼻息が荒いようです。韓国軍の制服組トップからは「先制攻撃も辞さない」という強気の発言もあったとか。

****韓国「先制攻撃も辞さない」発言は本気か****
「北朝鮮が核兵器を使用する意図が明確であれば、戦争の危険を冒してでも、まずはそれ(核兵器)を除去すべきだ」。北朝鮮が3度目の核実験の準備を進めるなか、韓国軍の制服組トップから「先制攻撃も辞さない」という強気の発言が飛び出した。

合同参謀本部の鄭承兆議長は先週、国会国防委員会の全体会議で北朝鮮への強硬姿勢を明言。「アメリカに相談する必要はない。これは自衛権の問題だ」と語った。
最大の後ろ盾である中国を含む国際社会から強く非難されても、北朝鮮が核開発を放棄する気配はない。対韓国窓口機関である祖国平和統一委員会のサイトは鄭の発言を「愚か」と批判し、「本当の戦争を味わうことになる」と牽制した。

ただし現実には、韓国が先制攻撃に踏み切る可能性は低いと指摘する声もある。朝鮮半島で全面戦争が勃発すれば、韓国も戦場になる可能性が高い。だからこそアメリカは長年、軍事的挑発を自制するよう韓国に求めてきた。鄭も後に発言をトーンダウンさせたが、核戦争のシナリオがかつてないほど現実昧を帯びているのは間違いない。【2月19日号 Newsweek日本版】
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こうした先制攻撃発言との関連はわかりませんが、米韓は先制攻撃も想定した防衛戦略の本格的な見直しを始めています。

****北核ミサイル兆候で先制攻撃も…韓国防衛見直し****
北朝鮮が長距離弾道ミサイル発射や3回目の核実験を強行し、核搭載ミサイルの実戦配備が現実味を増してきたのを受け、同盟関係にある米韓は、相互防衛条約に基づき韓国防衛戦略の本格的な見直しを始めた。
北朝鮮の核ミサイル発射の兆候を捉えた場合、先制攻撃で制圧することも想定する見通し。米韓は今年10月の米韓定例安保協議(SCM)までに新戦略の策定を目指す。

韓国国防省の林官彬国防政策室長は6日の国会で北朝鮮の核の脅威への対抗策に関し、「これまでは米国が核の傘を提供してくれるという程度の対応しかなかった」と認めた。その上で、米韓が「北朝鮮の(核)脅威に合わせた抑止戦略」を検討中だと明らかにした。

新戦略の立案に着手した背景には、米韓が現在運用する兵器体系では北朝鮮の核ミサイルの飛来を防ぎきれないという厳しい現状認識がある。韓国メディアによると北朝鮮は、韓国を射程に収めるスカッドミサイル(射程300~1000キロ・メートル)を約640基保有。米韓は、北朝鮮のミサイル基地をリストアップしているが、北朝鮮全土を24時間監視できる軍事偵察衛星や偵察機はない。【2月15日 読売】
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中国:北朝鮮への独自の圧力を強める可能性
一方、北朝鮮には再度の核実験実施の兆候もあるようです。
****北朝鮮:追加核実験の準備か 南側坑道で活発な動き****
16日付の韓国紙、中央日報は、北朝鮮が3度目の核実験を実施した北東部咸鏡北道(ハムギョンプクド)豊渓里(プンゲリ)の核実験場で、追加の核実験の準備とみられる活発な動きが確認されたと報じた。韓国政府当局者の話として伝えた。

これまで使われていないとみられる南側坑道周辺の動きが特に活発で、先週坑道を埋め戻す土砂を載せたとみられる車両が頻繁に往来していたのに続き、最近、幹部用とみられる高級車やシャトルバスが訪れたという。当局者は「(核実験が行われたと推定される)西側坑道の最終準備段階の様子と似ている」と説明した。【2月16日 毎日】
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こうした北朝鮮の動きを抑えられるのは中国だけですが、2月14日ブログ「中国 北朝鮮を追い込むような制裁には今も消極的 ただし“血盟”関係変化を窺わせる動きも」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130214)で取り上げたように、欧米と協調した北朝鮮制裁の可能性は薄いのが現状です。

ただ、中国としても、朝鮮半島の緊張を高めるような北朝鮮の勝手な行動を放任することもできないのではないでしょうか。
****核で安全は「幼稚な考え」=中国紙****
中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は16日の社説で、核実験などで危機を高める北朝鮮について「あまりにも小国で、核による戦略的なリスクをコントロールできない。核爆弾を持っていれば安全と考えるなら幼稚だ」と非難した。その上で中国政府は放射性物質の漏えいなどで東北地方の安全や安定が損なわれる場合、強硬に対応すべきだと訴えた。

一方、社説は中国が北朝鮮に「懲罰」を与える場合でも、「超えてはならないラインを友好国に知らしめる警告であるべきだ」と主張。「米国が主導する対北朝鮮制裁に積極的に協力することはできない。北朝鮮を中国の敵にしてしまうことになり、戦略的には愚の骨頂だ」と強調した。【2月16日 時事】 
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韓国での核武装論の高まり、米軍の戦術核配備や米韓の戦略見直しなどの動きは中国としても警戒すべきところで、そうした動きを加速させないために、北朝鮮への独自の圧力を今後一定に強めることもあるのではないでしょうか。

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