(核実験成功を喜ぶ平壌市民 【2月12日 テレ朝news】http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/230212070.html)
【適切な制裁は必要との認識。ただ、日米韓と同じ側に立つことはあり得ない】
国際世論を無視して長距離弾道ミサイル発射や核実験を繰り返す北朝鮮を制御するには、経済的にも、国際関係においても後ろ盾・生命線となっている中国がどこまで本気になるかにかかっていることは、昔から言われていることで、今回核実験についても基本的には同様です。
その中国の北朝鮮への対応は、若干の変化の兆しもなくはないところですが、アメリカの影響下にある韓国の勢力が自国国境に達するのを避け、緩衝地帯としての北朝鮮を維持したいこと、また、北朝鮮政権崩壊に伴う自国内の朝鮮民族問題の表面化を避けたいことから、中国としては北朝鮮現政権が崩壊するような混乱は望んでおらず、「相次ぐミサイル発射と核実験で、中国も北朝鮮への適切な制裁は必要との認識だ。ただ、日米韓と同じ側に立つことはあり得ない」と一般的には見られています。
****北朝鮮制裁、切り札盛るか 国連憲章第7章、焦点 刺激恐れて中国慎重****
国連安全保障理事会は12日、北朝鮮の核実験を非難する報道声明を発表。オバマ米大統領も、一般教書演説で北朝鮮に厳しく対処する姿勢を明確にした。国際社会は今後、国連安保理を舞台に北朝鮮への追加制裁を議論するが、決議に強制力をもたせる国連憲章第7章への言及が盛り込まれるかどうかが焦点になる。
「相次ぐミサイル発射と核実験で、中国も北朝鮮への適切な制裁は必要との認識だ。ただ、日米韓と同じ側に立つことはあり得ない」。中国の外交政策にかかわる研究者は13日、こう話した。
中国は、昨年12月の事実上の長距離弾道ミサイル発射に対する1月の安保理決議で、北朝鮮が核実験などに踏み切った場合は「重大な行動を取る」との文言に同意した。
一方で、今回の核実験後の安保理緊急会合では、経済制裁などの強制措置を定めた「国連憲章第7章に基づく決議」に言及した報道声明の原案を拒否した。
その背景を外交筋は「金正恩(キムジョンウン)政権の強硬姿勢が中国の予測を超え、圧力を強めすぎることへの懸念が出ている」と見る。首脳外交のパイプがあった故金正日(キムジョンイル)総書記の時代と違い、金正恩第1書記の出方を読み切れないがゆえに、慎重になっているとの分析だ。
これに対し、米国などは安保理で、北朝鮮にこれ以上の「暴走」を許さないための実効性の高い追加制裁を求める方針だ。
安保理は2006年、09年の核実験、昨年末のミサイル発射を受けた決議で、大量破壊兵器関連物資・技術の輸出入禁止▽ぜいたく品の輸出禁止▽団体・個人の資産凍結――など、広範な制裁を科している。複数の安保理関係者によると、新たな決議案に米国は、特に実効性が高いとされる金融制裁強化を盛り込みたい意向だが、中国との間でせめぎ合いが予想される。
今月の議長国を務める韓国は中国への「包囲網」を敷き、何とかして制裁決議をまとめたい考えだ。1月から非常任理事国となった韓国は当初から北朝鮮問題への積極関与を表明。ニューヨーク入りしている金星煥(キムソンファン)外交通商相も今月中の決議採択に意欲を示した。
ただ、中国は北朝鮮を刺激しすぎないぎりぎりの線を探り続けるとみられ、交渉には時間がかかるとの見方が出ている。(後略)【2月14日 朝日】
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なお、国連憲章第7章に基づく安保理決議は全国連加盟国に対して法的拘束力を持ちます。
殆んどその動向がわからない北朝鮮指導部と、これまた情報が限定されている中国指導部の関係という話になると、よくわからないとしか言いようがありませんが、今回核実験に関しては、中国も圧力強化の姿勢は見せています。ただ、体制崩壊につながらない範囲内で・・・ということです。
****北朝鮮核実験:中国、圧力強化へ****
北朝鮮の3回目の核実験について伝統的な友好国の中国は12日、外務省が「断固として反対する」との声明を発表した。再三の自制要求が無視され、中国人が最も重視する春節(旧正月)の連休中に実施をぶつけられたことは、最近の中朝関係のきしみを象徴しており、中国としても北朝鮮への圧力強化に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれている。
中国中央テレビは12日、春節で華やぐ各地の様子を伝えていたが、北朝鮮での核実験実施の可能性が伝えられると韓国メディアの報道を引用しながら速報し、北朝鮮と国境を接する吉林省で住民が1分ほどの揺れを感じたと報じた。
中国外務省の声明では北朝鮮に対し、「非核化の承諾を守り、情勢を悪化させる行動を停止するように」と要求。一方で、関係国に対し、対話と協議を通じ、6カ国協議の枠組みで朝鮮半島非核化の問題を解決するように呼びかけた。
09年の核実験の際に出した声明では、北朝鮮に「6カ国協議の軌道に戻るよう強く要求する」と訴えていたが、今回は関係国への呼びかけで6カ国協議の重要性を主張するにとどめた。北朝鮮が1月23日に国連安保理での制裁決議採択を受けて「6カ国協議の共同声明(05年9月)は死滅した」と表明したことを考慮した可能性もある。
当初は決議採択に難色を示していた中国が最終的に賛成したことに北朝鮮は強く反発した。今月に入ってからも中国側の働きかけが難航しているとの見方が強まるなか、中国外務省の華春瑩(かしゅんえい)副報道局長が定例会見で「中朝の対話ルートは滞りない」と強調する一幕もあった。
だが、北朝鮮への影響力低下が指摘されるなか、中国国内でも強硬な対応を求める声が強まっているのも事実だ。1月25日付の国際情報紙「環球時報」は社説で「(北)朝鮮が新たな核実験を行ったり、再び衛星を打ち上げたりすれば、中国は援助を減らすべきだ」と主張。同紙は今月6日にも「3回目の核実験に踏み切れば重大な代価を支払うことになる」として改めて援助削減を訴えた。
中国の楊潔※(よう・けつち、※は竹かんむりに褫のつくり)外相はケリー米国務長官との電話協議で3回目の核実験があった場合に追加措置を取ることで一致している。遼寧社会科学院の呂超研究員は「安保理で中国は新たな決議に賛成することになるだろう」とみる。ただ、北朝鮮の体制崩壊につながるような事態は中国としても望んでおらず、呂研究員は「あくまでも対話を通じて抑制的な対応を取るべきだ」と主張する。【2月12日 毎日】
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中国の北朝鮮に対する最近の“強硬姿勢”は国際社会からの批判をかわすポーズにすぎず、北朝鮮と関係の深い軍と保守派を主な支持基盤とする習近平指導部は、基本的に北朝鮮との良好な関係を維持するとも指摘されています。
****北核実験 中国、悩める制裁と配慮 習指導部、支持基盤に親北の軍****
北朝鮮の核実験を受けて中国外務省は12日、「断固とした反対を表明する」などとする声明を出した。自制を促したが無視され、北朝鮮にメンツをつぶされた形の中国は当面の間、国際社会と歩調を合わせて一定の範囲内での追加制裁に同意するとみられる。ただ、こうした“強硬姿勢”は国際社会からの批判をかわすポーズにすぎない。
北朝鮮と関係の深い軍と保守派を主な支持基盤とする習近平指導部は、基本的に北朝鮮との良好な関係を維持するとみられるからだ。
2006年と09年に北朝鮮が核実験を行った際、中国の胡錦濤指導部は今回と同じように批判的な声明を発表。中朝国境に検問所を設け、ぜいたく品や軍需品などの輸出を禁止するなど経済制裁を実施した。
しかし、軍や国内の親北朝鮮派などの反対でいずれも長く続かなかった。その後、中国の北朝鮮への援助や貿易は以前と比べてむしろ拡大。中国税関当局の統計では12年の中朝貿易総額は初めて60億ドル(約5700億円)を突破、08年の2倍以上となった。
習近平指導部は、胡錦濤政権より北朝鮮との関係を重視しているといわれる。欧米や日本など国際社会との協調路線を推進した温家宝首相が中枢から去り、北朝鮮通といわれる張徳江副首相が最高指導部の序列3位に入ったことも背景にあるといわれる。
北朝鮮の金日成総合大学への留学経験がある張氏は金正恩(キム・ジョンウン)家族と太いパイプがあり、厳しい対北制裁に強く反対しているとの情報もある。
習近平政権は沖縄県・尖閣諸島や南シナ海の離島の領有権などをめぐり、日本や東南アジアとの対決姿勢を強めている。
ある共産党筋は「この時期に北朝鮮と対立したくないのが本音だが、核保有を支持することもできない。とりあえず前政権と同じような対応で時間稼ぎするしかないだろう」と予測した。【3月13日 産経】
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【北朝鮮一辺倒であることを許さない圧力が国内外で強まっているのも事実】
結局のところ、中国は北朝鮮を追い込むような対応はとらないということですが、ただ、「血で固めた友情」と言われた両国関係に変化もみられることも事実です。
****血盟変調? ミサイル制裁決議で北朝鮮、中国に反発****
朝鮮戦争をともに戦い、「血で固めた友情」ともいわれる中朝関係が、変調の兆しをみせている。両国の微妙な間合いは北朝鮮の3度目の核実験を受けた今後の国連安全保障理事会の論議にも、影響を与える可能性がある。
◆「すでに友人でない」の声
・・・・中朝を行き来する中国人商人によると、「中国はすでに友人ではない」といった見方が最近、北朝鮮で広まっているという。
北朝鮮が昨年12月、事実上の長距離弾道ミサイル発射実験に踏み切ったことに対して安保理が1月22日に制裁強化決議を採択すると、北朝鮮は中国への不快感を示していた。
決議が出た後の1月23日の朝鮮中央通信は、金正恩(キムジョンウン)・第1書記の「整形手術疑惑」を伝えた中国メディアを名指しして、「恥を知れ」と厳しく糾弾。翌24日に北朝鮮の国防委員会が出した声明は、米国などへの反発と同時に「世界の公平な秩序維持の先頭に立つべき大国まで、米国の専横と強権に押されている」として、暗に中国やロシアを批判した。いずれもこれまでにはない異例のことだ。(中略)
昨年11月に発足した習近平(シーチンピン)指導部は、尖閣諸島や南シナ海の問題が深刻さを増す中、アジア回帰を進める米国とどう向き合うかという課題と直面する。北朝鮮を特別視すべきでないとの世論の高まりも無視できない。中国政府は制裁で北朝鮮を追い込むことには今も消極的だが、北朝鮮一辺倒であることを許さない圧力が国内外で強まっているのも事実だ。 【2月14日 朝日】
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北朝鮮に反発する中国国内世論には、生意気にも中国の言うことをきかないことへの苛立ちのほか、核実験の環境への影響も関係しているとも報じられています。
****北の核実験、中国住民にも抗議の声広がる****
北朝鮮の核実験に対し、北朝鮮の後ろ盾とされる中国の住民の間にも抗議の声が広がっている。
安徽省合肥市では13日、男性(41)が市中心部で北朝鮮による核実験反対を訴える紙を掲げ、当局に一時拘束された。男性は読売新聞の取材に「中国との国境地帯で核実験をする北朝鮮に対し、見て見ぬふりをする政府に抗議したかった」と話した。
中国版ツイッター・微博には、北朝鮮と隣接する中国東北部・遼寧省瀋陽市の北朝鮮総領事館前で抗議の紙を掲げる男女の写真が公開された。
黒竜江省ハルビン市の大通りでも、「我々の人、土地、水、空気、食糧を守れ」「中国政府は自国民を守る義務と責任がある」と書かれた布が掲げられたという。
環境汚染を心配し、全国規模のデモを呼びかける書き込みもあった。
こうした書き込みの一部はすでに削除された。北朝鮮と関係の深い中国政府に批判が向かわないよう当局が目を光らせているとみられる。
中国にとって、1950年代に朝鮮戦争を共に戦った北朝鮮は「血盟」関係にあり、左派(保守系)の間では親近感を抱く人が多い。
だが、核問題では中国の説得を受け入れず挑発行為を繰り返すため、特に若い世代を中心に反発も高まっている。中国国内での環境意識の高まりも、核実験を強行した北朝鮮へのいらだちにつながっている模様だ。【2月14日 読売】
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中国政府の動きとしては、韓国紙・中央日報が14日、中国政府が、3度目の核実験を強行した北朝鮮に対する独自制裁として、北朝鮮北東部羅先(ラソン)などの経済特区の共同開発計画の「全面的見直し」を検討していると報じています。【2月14日 読売より】