孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

欧州  馬肉混入問題で大騒動

2013-02-13 21:50:37 | 欧州情勢

(英米文化では馬は愛すべき存在であり、決して食べるものではないようです。 “flickr”より By Tahneelynn  http://www.flickr.com/photos/tahneelynn/8467242982/

偽りのラベル表示に怒る消費者
日本でも2007年にミートホープによる食品偽装問題が話題になりましたが、イギリス、アイルランド、フランスなど欧州では、牛肉と偽って馬肉が加工食品に使用されていた食品偽装問題で持ちきりです。
対象商品、関係国が拡大するなかで、欧州各国のTVニュースは連日トップニュース扱いで報じています。

****欧州で馬肉混入スキャンダル 食品のラベル表示に不信高まる****
牛肉と偽ってラベル表示された馬肉が食品に混入されていた問題が、一大スキャンダルとして欧州全域に広がっている。ラベル表示がどの程度正確なのか、食品が複雑な経路をたどって消費者に届けられているのではないかなど、疑念が高まっている。

問題は、アイルランドの食品基準監督当局が先月、テスコなど英国の大手スーパーで販売されていた牛肉バーガーに馬肉が混入していたと発表したことが発端だ。しかし最近数日間、他の食品にも同様の懸念が浮上した。例えば、牛肉とラベル表示された冷凍ラザニアに馬肉が最大100%使用されていたことを当局が突き止め、他の諸国にも波及した。

英国とフランスのスーパーは何百万個もの製品を撤去し、騒ぎはアイルランドからスウェーデン、ルーマニアに広がっている。また一部の国では当局が食肉業界関係者と会い、偽ったラベル表示をした食品がどのように店舗の棚に並べられたのかを見極めようとしている。

消費者たちは、偽りのラベル表示に怒っており、食肉処理場と、食品を消費者に届ける供給業者との間の複雑なネットワークや、国境を越えて輸送される食品がどう管理されているかをめぐり懸念が強まっている。【2月13日 The Wall Street Journal】
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イギリスでは警察による食肉処理場等への強制捜査も実施されています。

****英警察、馬肉問題で国内2工場を強制捜査****
ケバブやハンバーガーに使われていた牛肉に馬肉が混入していた問題を捜査している英警察は12日、イングランド北部の食肉処理場とウェールズの食肉工場の強制捜査を行い、施設内にあった全ての肉を押収した。欧州各国に広まっている今回の馬肉騒動で、このような捜査が行われるのは初めて。

この問題をめぐっては、組織犯罪の関与や健康被害を懸念する声が上がっており、13日には欧州連合(EU)が緊急会議を開く予定だ。

フランスでは、食品小売業者ピカール(Picard)が、検査の結果、同国の食品会社Comigelが製造した「ビーフ」ラザニアから馬肉が検出されたと発表した。

Comigelは先週、スウェーデンの冷凍食品大手フィンダス(Findus)に対し、自社が製造した食品に馬肉が混入していたことを知らせた。以来、英国、スウェーデン、フランス、スイス、オランダの小売業者らは、Comigelの食品を店頭から回収している。【2月13日 AFP】
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日本では“馬刺し”などを食べますので、偽装はともかく、「馬肉だっていいじゃないか・・・」なんて思ってもしまいますが、この馬肉混入あるいは偽装の問題が欧州で大きく取り上げられている背景には、イギリスなどでは馬肉を食べる習慣がないことがあります。
日本でも牛肉と豚肉の偽装ならともかく、もし犬の肉などが混入していたら大騒動になるでしょう。

【食文化の問題も】
欧州全体が馬肉の食習慣がないのだろうか?・・・とも、気になっていたのですが、下記記事によれば、フランスやオランダなどでは馬肉の食習慣も存在しているようです。

****馬肉偽装問題、食文化を考える契機に*****
ヨーロッパは今、馬肉の話題で持ち切りのようだ。先頃、牛肉100%と表示された加工食品の一部に、さまざまな比率で馬肉が混入していることが発覚して、一大スキャンダルとなっている。馬肉混入の疑いのある食品には、バーガーキング社のハンバーガーや、市販の冷凍ラザニアも含まれている。
中には、牛肉として売られているのに、中身は100%馬肉だった事例まである。

ベジタリアンにとっても肉食系の人々にも、このスキャンダルはショッキングだったようだ。バーガーキング社は渦中の食肉加工業者との取引を停止したと報じられた。冷凍食品のフィンダス社も、イギリスとフランスで冷凍ラザニアを小売店から回収した。シェパーズパイやムサカも同様に姿を消した。

豚、鶏、牛は当たり前に食べるという人でも、馬を食べるのには言いようのない抵抗感がある。
ただ、この感覚はアメリカやイギリスなど、世界の一部の地域でしか通じないものらしい。

馬肉が牛肉に偽装された問題が最初に表面化したイギリスでは、馬は一般に、人類の穏やかな友で、気高いアスリートだと考えられている。多くのアメリカ人にとっても、おそらくこの感覚は共通している。ケンタッキー・ダービーの熱狂や、馬を題材にした映画や小説を思い起こしてほしい。小説『黒馬物語』や映画『シービスケット』の主人公たちを食べるなんて考えられない、と感じる人がほとんどと言って間違いないだろう。

だが、世界の多くの地域では、馬肉は当たり前に口にされている。そこに後ろめたさはない。

◆馬肉を食べる文化圏
例えば、地中海に浮かぶサルデーニャ島の郷土料理には、広く馬肉が使われている。ロバの肉も同様だ。
馬肉を好むのは、ヨーロッパでサルデーニャ島だけではない。オランダでは一部の精肉店で馬肉が購入可能だし、フランスでも口にされている。一般的に普及した食習慣ではないものの、馬肉の通販サイトも存在し、グリル、ロースト、煮込みといった目的別にカットされた馬肉を購入できる。

国連食糧農業機関(FAO)の試算によると、世界で最も多くの馬肉を消費している国は中国だ。
中国では馬肉を乾燥させてソーセージにする。馬肉食が特に一般的なのは南部の広西チワン族自治区で、米粉の麺とともに供される。

世界第2位の馬肉の消費国は、FAOの試算によるとカザフスタンだ。ここでは馬肉は食生活に欠かせないものとなっている。さまざまなソーセージが作られているほか、マントゥという餃子のようなものにも使われる。
ロシア、メキシコ、モンゴル、アルゼンチン、日本などの国々も、馬肉の消費量が多い。

◆何の肉かではなく、偽装自体が問題?
そもそも、馬肉はどんな味がするのだろうか。フードライターのウェイバリー・ルート(Waverley Root)氏はかつて、「甘さが口の中に残る。口に合わないわけではないが、肉だと思うと戸惑う」と評している。
「人類による馬肉食を推進する」という目的を掲げたブログ「Eat Horse」では、この食材の健康上のメリットが喧伝されている。低脂肪、低コレステロールで、鉄分を豊富に含むのだとか。

ロサンゼルス生まれで食の歴史を研究しているアンドリュー・F・スミス(Andrew F. Smith)氏は、アメリカ人としては珍しく、一方的な判断を避ける立場だ。
「馬肉を食べることの何が問題なのか?」とスミス氏は問いかける。スミス氏によれば、ヨーロッパでの今回の騒動の真の問題は、原材料について消費者に嘘の情報が伝えられたことだ。

馬肉食の是非についてのスミス氏の立場はこうだ。「どの動物を食べていいかは、私たちが決めたことだ。私たちの決めた(食べていい)条件は、ほかの国では通用しない場合がある」。 【2月13日 National Geographic】
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食習慣の違いから話がこじれるのは、クジラでも同じです。

【 “犯人扱い”される供給国の怒り
それはともかく、今回は“偽装”が当然ながら問題となります。
馬肉の供給元として“犯人扱い”されているルーマニアは、ひどく怒っています。

****欧州の馬肉混入問題、「ルーマニア産」の疑いを同国政府が否定****
欧州で「牛肉100%」をうたっていた冷凍食品に馬肉が使われていた問題で、英国とフランスの両政府は11日、馬肉を牛肉と偽った「犯罪者たち」の特定を急ぐよう呼びかけた。一方、問題の「牛肉」の輸出元である疑いが出ているルーマニアの首相は同日、自国にかけられている嫌疑を怒りをあらわに否定した。

英国のオーウェン・パターソン食料相は、このスキャンダルの背景には「大規模な」共同謀議があるとし、問題が波及している可能性がある16か国には警告の通達が送られたはずだと述べた。
「表示と異なるものが混入した製品が英国の消費者に売られていたという事実は受け入れがたく、法的措置により犯罪者たちが一掃されることを強く願う」(パターソン食料相)

フランスのフランソワ・オランド大統領も、責任がある者には「制裁が科されるべきだ」と語り、フランス国民に対し、国産の肉だけ食べるよう呼びかけた。

このスキャンダルでは、英国やフランス、スウェーデンで販売されていた数百万個の冷凍食品が回収されている。
欧州冷凍食品大手フィンダスに問題の「牛肉」を供給したフランスの食品会社Comigelは、肉はフランスの食肉加工業者Spangheroがルーマニアの食肉処理場から輸入したものだと発表した。

これに対し、ルーマニアのビクトル・ポンタ首相は、自国にかけられている嫌疑を怒りをあらわに否定。疑われている2つの食肉処理場が「欧州の基準に違反していなかったことは確認済みだ」と記者団に語った。同国の農業相もまた、これら食肉処理場は虚偽の表示をしていないと述べている。

ポンタ首相は、Spanghero社が「ルーマニアの企業と直接コンタクトしたことはない」と指摘し、欧州連合(EU)に対し、責任の所在を明らかにするよう要請した。「ルーマニアが悪者と決めつけられるのは許容できない。率直に言って、本当に腹を立てている」【2月12日 AFP】
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ルーマニアと並んで、ポーランドも同様の扱いを受けています。
****欧州で馬肉混入の波紋広がる、「国際的陰謀説」も****
アイルランド当局は11日、牛肉食品の一部に馬肉が混入しているのが見つかった問題で、国内の食肉加工施設にDNA検査を命じる方針を示した。また欧州連合(EU)議長国でもある同国は、この問題を話し合うための閣僚級会合の開催も各国に呼び掛けた。

アイルランドで冷凍ビーフバーガーから馬のDNAが検出されたことが発端となった「馬肉スキャンダル」では、英小売りテスコ[TSCO.L]や米バーガー・キング[BKW.N]がアイルランドの食肉加工業者との取引を中止した一方、アイルランド当局は問題の「牛肉」は元をたどればポーランド産だと非難し、ポーランド側がこれに異議を唱えるなど、波紋が広がっている。

アイルランドのコベニー農業相は、13日にブリュッセルで開催されるEU会合で「この問題に対するEUレベルでの包括的な対策」を協議したいとしている。会合には、ボルジ欧州委員(保健・消費者保護担当)のほか、関係各国の農相らが参加する見通し。

英国では馬肉を食べるのはタブー視されており、パターソン環境・食料・農村相は、問題の背後に「国際的な犯罪的陰謀」があると指摘。英政府と仏政府は、責任者を罰する構えを示している。

自国産牛肉に馬肉混入が指摘されたルーマニアのポンタ首相は11日、記者会見で「これまでの調査の結果、ルーマニア企業や国内で欧州の規制が違反されたケースはない」と述べ、不快感をあらわにした。【2月12日 毎日】
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TV報道を観ていると、食肉の流通経路は随分と複雑なようです。多分、日本などでも同様なのでしょうが、最終段階に至るまでに、いろんな国の企業の間の中間取引が介在しているようです。
したがって、どの段階で混入・偽装されたのかを確認する必要があります。それなしに、いきなり「供給元は・・・・」と犯人扱いされたのではたまらない・・・といった怒りです。

ところで、「国際的な犯罪的陰謀」とは何でしょうか?よくわかりません。

日本でも、中国産食品の安全性などが問題になると、「やはり国産が安心・・・」という話になりますが、TVでは自国産品のラベル表示を行っているオーストラリアが紹介されていました。オーストラリアでは食品だけでなく広く自国産ラベルが適用されているようですが、その主眼は国内雇用を守るという点にあるようです。

共同体の深化を目指すEUにおいて“国産”へのこだわりは逆の流れにもなります。
自国生産食品の需要が増すのは、畜産・農業大国フランスの生産者などは喜ぶ話でしょうが。
先ずは、どこの国の産品でも信頼できるルール・チェック体制づくりが基本でしょう。
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