孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

女性の権利  パリ女性のズボン インドの女性バンド パキスタンのマララさん

2013-02-05 22:09:43 | 女性問題

(1月3日 イギリス・バーミンガムのクイーン・エリザベス病院を退院するマララ・ユスフザイさん “flickr”より By JoindHands  http://www.flickr.com/photos/joind_hands/8348671099/

1800年、パリジェンヌのズボン禁止令
女性の権利・社会的地位に関する話題としては、女性の社会参加が厳しく制約されており、スカーフ着用など服装に関しても宗教的制約が多いイスラム世界をしばしば取り上げています。
例えば、サウジアラビアで女性の自動車運転が認められていないこととか、インドネシアのある都市で女性がバイクの後部座席にまたがって座ることを禁止したこととか・・・。

当然ながら、こうした女性に課せられた制約はイスラム社会だけでなく、先進国を含め世界全体で見られることであり、日本なども、世界経済フォーラムが社会進出などでの男女平等の度合いを比較したランキングで135カ国中101位という結果に見られるように、国際的には厳しい評価がなされています。

また、日本や欧米社会において現在はあたりまえのこととして見られていることも、過去に遡れば大きな制約が存在していたことも多々あります。

****パリ:女性のズボン「解禁」 1800年の条例無効に****
パリジェンヌのズボン禁止令は無効−−。パリの女性市民にズボンの着用を禁止するとした200年以上前の条例について、フランスのバロベルカセム女性権利相がこのほど、無効であることを正式に確認した。フランスメディアが4日報じた。

条例は、1800年に制定され「女性がズボン着用を希望する場合は、警察署の許可が必要」と定めている。当時、女性の社会進出を阻む狙いがあったとされる。1892年と1909年には、自転車や馬に乗る場合は着用を認めると条件が緩和された。【2月5日 毎日】
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イスラム社会、一部のアジア・アフリカ諸国で見られる厳しい制約も、100年後、200年後には笑い話になる・・・といいのですが。

【「男たちに悪い影響を与えている」】
インドでは、昨年12月16日にニューデリーの女子学生がバス車内で集団レイプされたあげく、バスから突き落とされ、結局死亡した事件を契機に、女性に対する性犯罪の厳罰化を求める動きが社会問題化しています。
世論に動かされる形で、政府も法改正に踏み出したようです。

****インド大統領、レイプの罰則強化-最高刑に死刑****
これによってレイプの最高罰則を死刑とする法律が成立した。同国内務相の広報担当者はウォール・ストリート・ジャーナル紙に対して、「これ(大統領令)は直ちに発効する」と述べた。ただ、2月21日に始まる議会で6週間以内に事後承認を得る必要がある。

インド政府は1日、レイプ事件を防止するための大統領令を提案した。大統領令は議会が休会中に政府が発令する法律。同国では昨年12月16日にニューデリーの女子学生が集団レイプされたあと、レイプに厳格な措置を講じるよう国民の要求が高まっている。この事件の被害者は暴行された時のけががもとで同29日に死亡した。

この事件を受けて国民の激しい抗議と、レイプには死刑を適用するなど女性に対する暴力行為への厳罰化を要求する声が強まったことから、政府は迅速な措置を講じた。同国では通常、法案が議会を通過するまでに何年もかかる。

大統領令には、性犯罪の罰則強化を目的に事件の1週間後に設けられた諮問委員会の提案のほとんどが盛り込まれた。同委員会は3人のメンバーから成り、委員長はJ.S.ベルマ元最高裁長官が務めている。ただ、死刑は同委が勧告しなかったが、政府が盛り込んだ。【2月5日 The Wall Street Journal】
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ただ、今朝のTVニュースでは、諮問委員会の提案にあった夫の妻に対する暴力が大統領令では明記されておらず、また軍の兵士による性犯罪に関する取扱変更も盛り込まれていない・・・といった指摘もなされていました。

そのインドで、10代女性のバンドに対するイスラム教指導者の見解が話題になっています。
****インド:イスラム教指導者、少女バンドに「歌うな****
イスラム教徒が多いインド北部ジャム・カシミール州で、初の「女性ロックバンド」を結成した10代の少女3人に対し、保守的なイスラム教指導者が「(若い女性が)公の場で歌うべきではない」と活動中止を求めるファトワ(宗教見解)を出した。インドメディアが4日、報じた。

インドでは、レイプ事件など女性差別を背景とした犯罪が社会問題化しており、女性の表現の自由を無視した意見に批判の声が上がっている。
ファトワを出したバシルディン師は、インドメディアに「(歌いたければ)家の中で歌えばいい。男たちに悪い影響を与えている」とバンド活動を批判した。【2月4日 毎日】
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イスラム社会では、男性に“悪い影響”を与えた女性に大きな責任が課されることが往々にしてありますが、やはり先ずは“悪い影響”を受けた男性が責任を問われるべき問題であり、男性の問題を無視して女性にだけ制約を求めるのは片手落ちでしょう。

また、性的な問題を“悪い影響”云々として過度に封じ込めようとするのは無理があり、抑えきれない欲望はより陰惨・暴力的な形で噴きだすものです。

全ての少女や子どもが教育を受けられるように尽力したい
パキスタンで女性が教育を受ける権利を訴え、イスラム武装勢力に頭部を撃たれて重傷を負った15歳の少女、マララさんは奇跡的な回復を見せています。
(参考:2012年10月28日ブログ「パキスタン イスラム武装勢力に銃撃された少女、めざましい回復 脅威に口をつぐむ地元住民」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20121028

****マララさんの頭蓋骨修復手術成功、聴力を回復させる機器も埋め込む*****
パキスタンでイスラム武装勢力に頭部を撃たれて重傷を負い英国の病院に入院していたマララ・ユスフザイさん(15)の頭蓋骨修復手術が成功した。マララさんの手術を担当したイングランド中部バーミンガムのクイーン・エリザベス病院の医師団が3日、明らかにした。

医師団によるとマララさんは2日、チタン製の板を頭部に埋め込む手術に加え、左耳の聴力を回復するための電子機器を埋め込む2つの手術を受けた。計5時間におよんだ手術はいずれも成功し、マララさんは順調に回復しているという。

パキスタンで女性が教育を受ける権利を訴えていたマララさんは昨年10月9日、スワト渓谷でバスで通学中、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」に至近距離から頭を撃たれて重傷を負い、左耳は全く聴こえなくなっていた。

医師団によれば、手術で内耳に埋め込んだ機器により、マララさんの聴力は1年半もすれば通常に近いレベルまで回復するという。【2月4日 AFP】
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また、マララさんは4日、事件後初となるビデオ声明を公開し「皆さんの祈りの力で、日々回復している。新しい人生を授けられた」と世界中の人々の支援に感謝の意を示し、「全ての少女や子どもが教育を受けられるように」尽力したいとの今後へ向けた決意を表明しています。

最近何かと批判も多いノーベル平和賞候補にマララさんが推薦されたとも報じられています。
****ノーベル平和賞候補に=パキスタンの少女マララさん****
2013年のノーベル平和賞の候補者に、パキスタンで女性が教育を受ける権利を訴えた結果、イスラム武装勢力タリバンに頭を撃たれ重傷を負ったマララ・ユスフザイさん(15)が推薦された。AFP通信が1日報じた。

平和賞は毎年10月に発表され、12月に授賞式がオスロで行われる。推薦の締め切りは2月1日で、推薦できるのは各国国会議員や政府関係者、過去の受賞者ら。マララさんはフランスとカナダ、ノルウェーの議員がそれぞれ推薦した。候補者の氏名は規則で50年間公表されないが、推薦者は自身が推薦した人物や団体を明らかにできる。【2月1日 時事】
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頭部銃撃の次はノーベル平和賞候補と、15歳少女にはあまりも大きな出来事が続きます。
周囲の声や激変する環境に惑わされることなく、自分が本当にやりたいことに取り組んでいけることを願っています。
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