孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  ハマス、穏健化路線模索? エジプト・モルシ政権を軸に進む関係調整

2013-02-23 22:17:11 | パレスチナ

(エジプト・モルシ政権によるガザ地区密輸トンネルへの注水作戦については、イスラエル国内にその真意を疑う向きもあるようです。 “flickr”より By Jerusalem Prayer Team http://www.flickr.com/photos/jerusalemprayerteam/8477160830/

際立つ停戦の「本気ぶり」】
パレスチナ情勢に関して、昨日下記の短い記事を目にしました。

****ロケット弾攻撃ゼロに=ガザ停戦から3カ月―パレスチナ****
2012年11月に発生したイスラエルとパレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの大規模衝突の停戦が成立してから3カ月。この間、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区からのロケット弾攻撃が完全に停止している。
イスラエル軍によると、11年ぶりのことで、今回の停戦の「本気ぶり」が際立っている。
ガザへの影響力を強めるエジプトのモルシ政権が自重を求めているのに加え、ハマスが穏健化路線を模索していることが背景にある。【2月22日 時事】
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記事にあるようなハマスの穏健化路線が本気なら、ファタハとの統一政府づくりも加速し、ひいてはイスラエルとの和平交渉への枠組みもつくれることになります。

パレスチナ自治政府を率いるファタハとガザ地区を実効支配するハマスは、これもエジプト・モルシ大統領の仲介でトップ会談が先月実現しましたが、その後の動きに関する情報はまだ目にしていません。

****パレスチナ:ファタハとハマス、1年ぶりトップ会談****
パレスチナ自治政府の主要政党ファタハのアッバス議長と自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの指導者、マシャル氏が9日、エジプトの首都カイロで会談した。会談内容は明らかにされていないが、和解交渉について協議したとみられる。両者の会談は約1年ぶり。

両者は会談前、個別にモルシ・エジプト大統領と会談。パレスチナ統一政府樹立などに向け具体的進展を目指したが、アッバス議長との会談後、エジプト側は進展がなかったことを明らかにした。
ファタハとハマスは11年5月、統一政府を樹立することや1年以内に議会選挙などを実施することで合意。しかし、その後も統一政府や選挙は実現していない。【1月10日 毎日】
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この会談については、“AFP通信によると、協議を仲介したエジプトのモルシ大統領の報道官は、「両者は和解に向けた具体的な履行を進めることで合意した」と語った。ハマス、ファタハ幹部は、協議は「前向きな雰囲気」で行われたと強調した。ただ、今後の協議の内容や日程などは明らかにされておらず、和解合意の履行が順調に進むかどうかは不透明だ。”【1月10日 読売】とも報じられていました。

エジプト:イスラエルとの協調姿勢も
エジプト・モルシ大統領の出身母体「ムスリム同胞団」は、かつてハマスを生んだ組織でもありますので、その関係の近さを利用してパレスチナ仲介を進めているようです。
一方で、エジプト・モルシ大統領にとってイスラエルとの関係も重要です。
エジプトは1979年にイスラエルと平和条約を締結し、アラブ世界で最初のイスラエル承認国となり、現在も国交を有しています。
ムバラク政権が崩壊し、ハマスと近いムスリム同胞団を基盤とするモルシ政権が誕生したことで、エジプト・イスラエルの関係がどうなるのかは注目されているところです。

****エジプト:ガザ境界の密輸トンネル破壊 イスラエルと協調****
エジプト治安当局は今月10日から、パレスチナ自治区ガザとの境界にある地下密輸トンネルを注水によって破壊する作戦を始めた。治安当局は、武装勢力の越境や、イスラエルとの戦闘に使う武器の運搬にトンネルが使われているとみている。治安の強化とともにイスラエルとの関係安定を図る狙いがあるとみられるが、物資不足からガザ住民の反発を招くことも予想される。

エジプトメディアによると、ガザの境界には2010年時点で約1200の密輸トンネルがあった。これまでも爆破などで破壊してきたが、すぐに別ルートが掘られる状況が続いたため、広範囲でトンネル掘削が困難になるように注水作戦を強化したとみられる。

背景には周辺地域での治安の悪化がある。11年のリビア内戦後、エジプトを通じて大量の武器がガザに渡ったと指摘されてきた。12年6月にはリビア国境近くでガザに運ばれる途中のロケット弾約140発などがエジプト当局に押収された。
12年8月には、ガザ境界近くの検問所が武装勢力に襲撃され、兵士ら16人が殺害された。治安当局は事件直後からトンネルの破壊作戦を開始。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によると、12年に100本以上のトンネルがエジプト当局に破壊された。

ガザでは、イスラム原理主義組織ハマスが実効支配した07年以降、イスラエルが経済封鎖を行い、物資の輸入を規制した。中でも「軍事転用が可能だ」として輸入が原則禁止されたセメントなどの建築資材は、主にトンネル経由で調達されてきた。UNRWAによると、エジプトのトンネル破壊によって建築資材が供給不足に陥り、価格が約45%値上がりしたといい、エジプトへの非難が高まりかねない状況だった。

だがイスラエルは昨年12月末、規制を緩和し、セメントなどの輸入を認めた。11月にイスラエルが8日間にわたってガザを空爆。ハマスと関係が深いムスリム同胞団出身のモルシ大統領の仲介によって停戦が成立しており、輸入規制緩和も停戦工作の一環だった。今回の注水作戦は、譲歩を示したイスラエルとの協調姿勢を示す狙いがあるとみられる。【2月18日 毎日】
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ガザ地区と結ぶ密輸トンネルに対するエジプトの対応は基本的によくわかりません。
これまでもエジプトが本気で潰す気があれば約1200とも言われるトンネルは存続できるはずもなく、エジプトはトンネルの存在を一定に黙認してきたようにも思えます。
そうしたなかでの、今回のイスラエルとの協調もアピールする注水作戦とのことです。当然、ハマスとは何らかの話を行ったうえでの作戦でしょう。

モルシ大統領の仲介で、イスラエルとハマスが停戦し、ハマスは行動を自重し穏健化を進め、一方でエジプト・イスラエル関係も協調的に維持される・・・・ということであれば、エジプトを軸にしたイスラエル・パレスチナの和平合意交渉も・・・・という話にもなりますが、もちろん事はそう簡単ではないでしょう。
ただ、エジプト・イスラエル平和条約も、“条約は、エジプトおよびパレスチナ自治政府との間の和平を連鎖させることを企画していた”【ウィキペディア】とのことですので、当初意図された流れに沿うものではあります。

エジプト・イスラエル平和条約を締結したサダト大統領は条約に反対する過激なイスラム主義者によって暗殺されましたが、今、イスラム主義を掲げるモルシ政権によって、エジプト・イスラエル・パレスチナの中東安定が実現させるのか?

イスラエル:リブニ元外相が新政権入り
イスラエルでは総選挙を受けてネタニヤフ首相の組閣が行われていますが、外相には、選挙戦で和平交渉の再開を公約に掲げた中道の新党ハトヌア党首のリブニ元外相が起用されています。

****リブニ元外相が政権入りへ=中東和平交渉担当も―イスラエル****
1月のイスラエル総選挙後にペレス大統領から続投を要請され、組閣作業を行っているネタニヤフ首相は19日、中道の新党ハトヌア党首のリブニ元外相が新政権入りし、パレスチナとの和平交渉を担当すると発表した。リブニ氏は法相に就任する見通し。選挙戦で和平交渉の再開を公約に掲げたリブニ氏の起用で、停滞する交渉の打開につながる可能性もある。

総選挙で与党リクードの統一会派が第1党になり、ネタニヤフ首相は組閣作業に入ったが、連立協議は難航している。閣僚ポストと参加政党が決まるのは初めて。【2月20日 時事】
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エジプト:4月に議会選挙
外交的には存在感を示すエジプト・モルシ大統領ですが、経済的苦境を背景にイスラム勢力と世俗・左派系の対立・混乱が続くエジプト国内事情は相変わらずです。
この4月には議会選挙が行われますが、イスラム勢力が圧勝した前回選挙の再現となるのかが注目されています。

****議会選は4月27日から=4回に分け実施―エジプト****
エジプトのモルシ大統領は21日、人民議会(国会)選挙を4月27日から4回に分けて実施することを決めた。大統領令によれば、新議会は7月6日に招集される。

今回の選挙は、大統領が属するイスラム原理主義組織ムスリム同胞団が母体の自由公正党が、2011年11月から12年1月にかけて行われた前回選挙と同様に圧勝できるかが焦点。また、大統領支持派のイスラム勢力と世俗・左派系の対立が激化する中、円滑に実施できるかも課題となる。【2月23日 時事】 
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コメント
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