孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  再燃する無人機攻撃の合法性問題

2013-02-24 22:21:31 | アメリカ

(2011年4月22日のアメリカ無人機による攻撃で多数の民間人犠牲者がでたとして,星条旗を燃やして激しく抗議するパキスタン市民 “flickr”より By Pan-African News Wire File Photos http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/5644792433/

無人偵察機の航行システムを乗っ取り地上に着陸させた
今日イランで、一昨年12月に続いて無人偵察機がまた補足されたようです。

****イラン:無人偵察機捕捉と発表、国名は言及せず****
イランの革命防衛隊は23日、同国南部で実施している軍事演習の区域内に侵入しようとした外国の無人偵察機1機を捕らえたことを明らかにした。どの国の偵察機かは言及していない。イランのメディアが伝えた。
革命防衛隊によると、無人偵察機の航行システムを乗っ取り、演習区域近くの「地上に着陸させた」としている。

イランは2011年12月、同国東部の領空を侵犯した米無人偵察機を撃墜したと発表。同機は敵のレーダーに探知されにくい高度のステルス性能を持つRQ170とされ、米側は高度な技術情報の流出を懸念している。【2月24日 毎日】
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無人機をイランで飛ばすとしたらアメリカかイスラエルでしょうが、前回のアメリカ無人偵察機のときも“革命防衛隊の電子戦部隊のわなにかかり、サイバー攻撃によってほとんど無傷で着陸させられた”と発表されていました。
故障とか撃墜とかでなく“航行システムを乗っ取り着陸させた”ということであれば、今後の無人機の活動にも大きな影響があるのではないでしょうか。
前回補足された機体はその後どうなったのでしょうか?ロシアと中国が機体の調査をイランに申し出ているという話もありましたが。

客観性が担保されない“暗殺”か、躊躇は「敗戦に至る道」か
アメリカ・オバマ政権は、“米兵の生命に直接的な危険がなく、極めて効率的に効果を得られる無人機攻撃”を多用していますが、このところ、アメリカでは無人機攻撃によるテロリスト殺害の法的妥当性が再び問題となっています。

****論議再燃 無人機による“処刑”の是非****
米国の対テロ戦争で、無人機攻撃の是非を問う議論が改めて再燃している。大統領は情報当局が国際テロ組織アルカーイダの幹部と判断すれば、具体的な理由を「機密情報」の闇に包んだまま、たとえ米国人でも無人機による“処刑”が可能だ。
国家同士の戦闘とは異なる対テロ戦争で、米国の安全を守るため、どこまで司法や議会のチェックを経ない権力の行使が許されるのかが問われている。

オバマ政権下で急増
オバマ政権のテロ政策を主導し、次期中央情報局(CIA)長官に指名されたジョン・ブレナン大統領補佐官(57)は7日、上院情報特別委員会の公聴会で、オバマ政権が無人機攻撃を実行するのは「脅威を軽減させる他の選択肢がなく、人命を守る最後の手段」と判断した場合のみであることを強調した。

オバマ政権はこの4年で、米兵の生命に直接的な危険がなく、極めて効率的に効果を得られる無人機攻撃に対テロ作戦の重心を移してきた。
シンクタンク、新アメリカ財団の調査では、2008年に33回だった無人機攻撃は10年には3倍以上の118回。ブッシュ前政権時代は通算でも50回以下で、大幅増が顕著になっている。

無人機攻撃がクローズアップされたのは11年9月、米国籍を持つイスラム武装勢力「アラビア半島のアルカーイダ」(AQAP)幹部で、米国を狙った複数のテロ事件に関与したアンワル・アウラキ容疑者の殺害だ。
バラク・オバマ大統領(51)はアウラキ容疑者の死亡を公表した演説で「アルカーイダや関連組織は、世界のどこにも安全なる聖域を見つけることはできない」と胸を張った。だが、客観的なチェックのない政権単独の判断で、米国人が“処刑”される事態には、被害防止と加害者の人権のバランスをめぐる議論を加速させた。

担保されない客観性
政権側が主張する無人機攻撃の根拠は、米議会が中枢同時テロを受けた2001年9月、アルカーイダ掃討のため、大統領に与えた武力行使容認の権限にある。それを基に司法省が、米国籍テロリスト殺害の法解釈に関する報告書を作成しており、機密扱いとなっている。

NBCテレビが今月4日に報じた報告書の内容によると、政府は「切迫した脅威」があれば、テロリストを殺害できる。脅威を具体的に示す必要はなく、対象者の「最近」の「活動」に米国の「脅威となる攻撃」への関与があれば十分という。

反対派が問題視するのは「切迫した脅威」や「活動」が何を意味するのかが、極めて曖昧な点だ。何より、内容を問いただそうにも「機密」の壁があり、政府側は解答を拒否できる。戦時とはいえ、客観性が担保されない“暗殺”への懸念が、ここに集約されている。
上院情報特別委の公聴会で、民主党のロン・ワイデン上院議員(63)は、国民の殺害に関し、法や議会の監視といった「束縛のない権限」を大統領に与えるのは問題だと指摘した。

米紙ニューヨーク・タイムズも8日付社説で「監視監督や検証なし」に米国人を殺害できるとの政権側の主張は「受け入れられない」と切り捨て、テロを防ぐためとはいえ、あらゆる制約から解放されるわけではないと強調した。

躊躇は「敗戦に至る道」
一方、米紙ウォールストリート・ジャーナルは7日付の社説で「無人機での戦闘は合法であり、米国を守るのに必要だ」と主張。戦場での標的の識別に司法判断が必要になれば、米国は「敗戦に至る確かな道」を歩むことになると警鐘を鳴らした。

国家同士が戦火を交える従来の戦争と違い、対テロ戦争は標的が一般市民に紛れ、国境を越えて活動する。一瞬の躊躇(ちゅうちょ)が容疑者を取り逃がし、後の大規模なテロに結びつきかねない。
一方で、チェック機能が働かぬまま、政府が自国民を殺害する法治国家などあり得ず、米国での議論は、ますます活発になりそうだ。【2月24日 産経】
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アメリカの無人機攻撃による死者数について、米上院議員が“民間人を含めて4700人”という具体的数字を明らかにしたことも話題になっています。改めて考えると、“4700人”という数字は膨大な数です。

****米無人機攻撃による死者は4700人、米上院議員****
米サウスカロライナ州イーズリーの情報ウェブサイト「イーズリーパッチ」は20日、同州選出のリンゼー・グラム上院議員(共和党)が、米国の無人機攻撃でこれまでに死亡したのは民間人を含めて4700人だと語ったと報じた。

無人機攻撃を強く支持しているグラム上院議員はイーズリーのロータリークラブの会合で、罪のない民間人の犠牲も出ていることは憎むべきことだと思っているとした上で、「これは戦争だ。(無人機攻撃で)アルカイダの主要幹部の殺害にも成功している」と語ったという。

これまでに米政府高官が民間人死傷者数の推定をほのめかしたことはあったが、米政府関係者あるいは米議員が無人機攻撃による死者の総数に言及したのはグラム議員が初めて。
グラム議員の事務所は報道された内容の発言があったことは否定せず、この情報はすでに明らかにされているものであり政府の機密を漏えいしたものではないという姿勢をAFPに示した。

米軍はアルカイダ戦闘員の掃討作戦としてパキスタンやイエメンなどで数百回にわたり無人機攻撃を実施しているが、人権団体などから超法規的な暗殺だという批判が出ている。米政府は無人機を使った作戦の詳細を公にすることを拒んでおり、無人機攻撃による死者数は明らかになっていなかった。【2月21日 AFP】
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現実感のないゲーム感覚での殺害
無人機攻撃の合法性については、上記【2月24日 産経】で紹介している、「切迫した脅威」「脅威となる攻撃への関与」の客観性・情報非開示の問題の他、2011年10月6日ブログ「アメリカの無人機攻撃 アウラキ師殺害で改めて問われる合法性」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20111006)で取り上げられているように、多くの攻撃が法的には戦闘員ではない米中央情報局(CIA)に属する操縦士によって行われてこと、戦闘地域の外で警察でもない者が、しかも警告もなく破壊的武器を使用することの問題、巻き添えになった一般市民犠牲者の問題などが挙げられています。
どんな大義を掲げようが戦争そのものが超法規的殺し合いであり、「これは戦争だから」と言ってしまえばそれまでですが。

「これは戦争だから」ということで合法性の問題を避けたとしても、もっと基本的な違和感も残ります。

****自宅から出勤「午前はアフガン、午後イラク*****
米国本土の基地から衛星通信を使い、1万キロ以上離れた戦地で無人航空機を飛ばす。兵士は自宅で家族と朝を迎え、基地に出勤。モニター画面に映る「戦場」で戦い、再び家族の待つ家に帰る--。

「午前中3時間はアフガンで飛ばし、1時間休憩する。午後の3時間はイラクで飛ばす。米国にいながら、毎日二つの戦場で戦争をしていた」。イラク戦争が始まった03年、米西部ネバダ州ネリス基地で無人機のパイロットをしていたジェフリー・エガース大佐(48)が振り返る。【2010年4月30日 毎日】
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また、2010年5月3日ブログ「戦争を変える無人航空機の実像と問題」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100503)でも、この“違和感”について取り上げました。

****現実感ない「死」の映像****
米陸軍によると、無人機操縦者の7人に1人は民間人。無人機の急増に、兵士の訓練が追いつかない状況だ。米軍交戦規則で民間人の戦闘行為は禁じられているため、ミサイルボタンを押す瞬間は「兵士と交代する」(陸軍)。一方、民間人SOの大半は、20代の若者。戦場を歩いた経験もない。映像から不審な動きを報告するSOの役割は大きく、攻撃態勢を一気にエスカレートさせることもある。【2010年5月2日 毎日】
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2011年10月6日ブログでも書いたように、遠く離れた本国などで、現地事情に詳しくないオペレーターが、血しぶきを浴びることも、叫び声を聞くこともなく、自ら危険にさらすことなく、さながらゲーム感覚で殺害を実行、終われば帰宅して自宅ソファでグラスを傾ける・・・そうしたことへの違和感が拭えません。

こうした無人機攻撃に対抗するのは、自らの体を武器とする自爆攻撃です。
ただ、自爆攻撃には洗脳された若者なども多く使われ、また、薬物で錯乱させられた女性が爆弾を巻きつけられて遠隔操作で起爆する例などもあるようで、人間としての心を喪失し、操られているという意味では無人機と似ているのかもしれません。

無人機攻撃の“ゲーム感覚での殺害”に違和感は感じますが、どんな方法をとろうと戦闘行為に差はないとも言えますし、血しぶきを浴びて殺すのがよくて、そうでないとが悪いという訳でもないでしょう。同じ殺すなら、残忍な現場にいずに事を終えるというのは“進化”かもしれません。・・・・うまく整理がつきません。

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