二人の時間。長い間合い。
居心地の悪さ。M.ハネケ監督の作品の印象を問われて真っ先に思いつくのがこの言葉なのだが、新作が描く老老介護の情景は、高齢化社会が生んだ歪み、いわば現代社会の「居心地の悪さ」であり、相性の良さが期待できるものであった。
そんな情景の描写はやはり一味違った。何が違うかと言えば、まず音楽がない。下手に盛り上げない代わりに緩和もしないから、現場の厳しさがむき出しになって伝わってくる。
劇中で2~3度、CDをかけたりピアノを弾いたりする場面があるが、再生を止めるなどですぐに現実に引き戻され、余計に重苦しい空気を醸し出す。
次に容赦ない描写だ。史上最高齢のオスカーノミネートとして話題になったE.リヴァの演技が素晴らしい。
冒頭の上品な婦人から、半身麻痺、果ては会話も表情を作ることもできないまでに衰弱していく様を見事に演じ切っている。これを観たら、彼女が戴冠してもよかったのではと思えるほどである。
2人の間には愛があった。だからこそ夫は命を尽くしても妻の力になろうとし、妻の希望を聞いて再び病院へは行かなかった。
それは傍から見れば美談であった。しかし当の本人たちにとっては、もちろんそんな生易しいものではない。
子供であれば、多少手がかかってもいつかは成長して離れていく。しかし高齢者の介護においては、事態は悪化するしかなく、唯一の解決法は死別である。
いまいる場所も闇ならば、その闇を抜けた先にも展望が開けない。かといって逃れる術もない。
愛の果てに行き着いた場所で持て余される時間を、台詞のないまま不自然に長いカット割りが的確に表現している。
そして幕引きは静かにあっけなく。気を抜いたところに突然エンドロールが流れて、一瞬「やられた」と思うけど、意外と嫌いじゃない。
(75点)
居心地の悪さ。M.ハネケ監督の作品の印象を問われて真っ先に思いつくのがこの言葉なのだが、新作が描く老老介護の情景は、高齢化社会が生んだ歪み、いわば現代社会の「居心地の悪さ」であり、相性の良さが期待できるものであった。
そんな情景の描写はやはり一味違った。何が違うかと言えば、まず音楽がない。下手に盛り上げない代わりに緩和もしないから、現場の厳しさがむき出しになって伝わってくる。
劇中で2~3度、CDをかけたりピアノを弾いたりする場面があるが、再生を止めるなどですぐに現実に引き戻され、余計に重苦しい空気を醸し出す。
次に容赦ない描写だ。史上最高齢のオスカーノミネートとして話題になったE.リヴァの演技が素晴らしい。
冒頭の上品な婦人から、半身麻痺、果ては会話も表情を作ることもできないまでに衰弱していく様を見事に演じ切っている。これを観たら、彼女が戴冠してもよかったのではと思えるほどである。
2人の間には愛があった。だからこそ夫は命を尽くしても妻の力になろうとし、妻の希望を聞いて再び病院へは行かなかった。
それは傍から見れば美談であった。しかし当の本人たちにとっては、もちろんそんな生易しいものではない。
子供であれば、多少手がかかってもいつかは成長して離れていく。しかし高齢者の介護においては、事態は悪化するしかなく、唯一の解決法は死別である。
いまいる場所も闇ならば、その闇を抜けた先にも展望が開けない。かといって逃れる術もない。
愛の果てに行き着いた場所で持て余される時間を、台詞のないまま不自然に長いカット割りが的確に表現している。
そして幕引きは静かにあっけなく。気を抜いたところに突然エンドロールが流れて、一瞬「やられた」と思うけど、意外と嫌いじゃない。
(75点)
>居心地の悪さ。
というより
ハネケ作品は後味の悪さじゃないでしょうかね、
とにかく観てて不快になるのが多いんですが
本作、まっとうに夫婦の愛を描いてました。
愛する人だからこそ、苦しむ姿をみたくないというのもあるけど、本人の希望通り尊厳をもって死に至らしめてあげるというのはなかなか出来ないですよね。
またも考えさせられる作品でした。
後味の悪さ、確かにそうですね。
ただ、何本か観るうちに、逆にそれを期待するようになってしまう、
そんな不思議な味わいを持っている気がします。
そういった意味では、本作は意外なほど「まっとうに」描かれていました。
尊厳を持った死、深い愛情を十分理解できる一方で、
その行為自体は画になると直視するに忍びないものでした。
難しい話です。
お邪魔するのが遅くなりました。
あっけない幕引きのようですが、後味は悪くなかった
ですよね。前作もそんな感じだったと思います。
上手く感想を述べられませんが、なんかこの監督作品
好きですね。確かに難しい話ですが、この雰囲気が
とても好みです。
ハネケ監督、少し前までは知る人ぞ知るの印象でしたが、
もうすっかりビッグネームになりましたね。
毎度毎度絶賛の嵐なので、ちょっとひねくれてみたくなるのですが、
独特の魅力があることは否定できません。
ただ大好きかと問われれば、そこは頷かないんですけどね。