原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

ワクチン接種をあおらないで

2009年10月19日 | 医学・医療・介護
 本日(10月19日)、いよいよ国内での新型インフルエンザのワクチン接種が開始された。

 新型インフルエンザワクチンの接種は、本日開始した医療従事者対象接種を皮切りに、11月には妊婦や慢性呼吸器疾患などの基礎疾患のある人、そして幼児、小学校低学年の児童の接種は12月後半、その後中高生、高齢者などは年明けの接種というように、優先順位に従って順次実施される予定となっている。

 
 本ブログの8月28日付のバックナンバー記事「ワクチンの有効性と安全性の公表を」において、新型インフルエンザワクチンの接種を国民に実施するに先立ち、その有効性と安全性の医学的検証結果を公表することこそが先決問題である旨の私論を述べた。
 その後、国内外でワクチンの有効性及び安全性の医学的検証が進み、マスメディアを通じて徐々に公表されるに至っている。


 新型インフルエンザワクチンは、既に国産、輸入を合わせて7000万人分以上が国内に確保されているという報道であるが、国民の「任意接種」と位置付けられている新型インフルワクチン接種に関しては、医学専門家の間でもその接種の選択にあたり慎重を期するべきか否かの意見が分かれているようだ。

 朝日新聞10月10日付“私の視点”に「新型インフルワクチン接種は慎重期して」との“接種慎重派”からの意見が取り上げられたのに対して、10月17日の“私の視点”にはそれに対する異議として「不安あおらず冷静な選択を」との“接種促進派”の医学専門家の意見が掲載された。
 (残念ながら上記前者の“接種慎重派”の記事が手元にないため、17日付の“接種促進派”の反論意見のみを以下に紹介しよう。)

 疫学者から見れば、過去において有効性が有意に低い麻疹ワクチンが一部で製造された事実や、安全性の低い(事故率の高い)MMRワクチンの接種が行われた事実は否定できない。 インフルエンザワクチンに関しては有効性(社会的予防効果)がないとされるのは小児への集団接種においてであり、高齢者への接種に関しては予防効果がないと断定できない。インフルエンザワクチンとて重症化予防については、効果があるという意見が主流だ。初期のインフルエンザウィルス増殖を抑制することで、集団について脳炎や肺炎の発症の確率を減じることは否定できない。これは新型インフルに関しても同様にあてはまる。いたずらにワクチン副作用を強調するのは、社会防衛の立場から賛成できない。すべての医療行為は「問題ない」とは言い切れないことは事実であるが、ワクチン国家検定の基準は重大事故の確率が30万分の1だということを知った上で、予防接種の選択を行って欲しい。
 輸入ワクチンについて、アジュバント(免疫反応増強のための添加物)による副作用は不明だが、主成分が細胞培養由来である分、安全性は高いと考えられる。 ワクチン接種を望まないという選択肢が残されている以上、予防を望む人々の判断を誤らせてはいけない。
 (以上、朝日新聞10月17日“私の視点”への医学専門家の投稿より抜粋引用)


 私論を述べる前に公表しておくが、(当ブログの古くからの読者の方々は既にご承知の通り)病院受診、投薬、各種医学検査等々、医療行為全般に関してその享受を慎重に対応している私は、医療行為の一つである「ワクチン接種」に関しても当然ながら“慎重派”である。 すなわち、出来ることならば接種を避けて通りたい人種である。
 今回は、上記“接種促進派”の医学専門家が主張されるところの「接種を望む人々の判断を誤らせてはいけない」との観点に“接種慎重派”の人間の一人としてそのご意見にのっとりつつ、その考えの背景等の多様性も鑑みた上で私論を述べさせていただきたく考える。

 上記朝日新聞10月17日の“私の視点”への医学専門家の投稿は、ワクチンの有効性と安全性に関する専門家からの意見としてよくまとまっていて大いに参考になる。 これを参考にさせていただきつつ以下に私論を展開しよう。

 ワクチン接種に当たって、まずは確率計算から始めるべきであろう。(極端な話が)新型インフルエンザに感染して死ぬ確率と、ワクチン接種して死ぬ確率をとりあえず比較してみるのが一つの指標としてわかりやすいと思うのだが、いかがであろうか。
 ワクチン接種の国家検定基準の重大事故の発生確率が30万分の1であるということは、今回の新型インフルの場合国民のうち(現在国内に確保されているワクチン数と等しい)7000万人が接種したとして、死ぬ事と同等レベルの重大事故に遭うと予想される実数は単純計算で最大約230人。 片や、現在までのところの新型インフル感染による国内の死者は10月17日時点で27名。これに関しては、今後の感染拡大によりさらに増加する可能性も高い。
 
 元医学関係者である私として気がかりなのは、投稿者が指摘しているアジュバント(免疫反応増強のための添加物)による副作用である。 今回の新型インフルワクチンの場合、冬季の感染拡大を目前にして国がその接種を焦っているとも見受けられるのだが、7000万人規模程の大がかりな一般国民対象のワクチン接種が既に開始された今現在、アジュバントに至るまでの臨床実験は恐らく未実施を貫くのであろう現状を大いに懸念する私でもある。

 実際問題、国内における7000万人もの大規模一斉ワクチン接種は今回が初めての試みなのではなかろうか??
 新型ワクチンの“有効性”がおぼつかないことが後々判明したとしてもまだしも許せるが、“安全性”においては、その予期せぬ犠牲が最小限に済むことを祈るばかりである。
 

 大袈裟に表現すれば、(今回の新型インフルに限らず)ワクチンとはその接種において個人の「死生観」もからむ選択肢であると私は捉えるのだ。
 自分が生きた時代に偶然蔓延した“流行り病(はやりやまい)”で死にゆくことと、それに対する人為的なワクチン接種で命を絶たれることとを天秤にかけると、どっちの死に方が重いのか…、 話が飛躍し過ぎで馬鹿馬鹿しいと思われる方もいるであろうが、そんな選択を迫られているようにも感じる今回の“大規模ワクチン接種”の騒動である。

 少なくともその種の選択を迫られて尚、自分なりの“美学”を我が人生において一貫して持ち合わせていたい原左都子である。
(参考のため、私自身は今回の新型インフルワクチン接種は希望ぜずして、あくまでも自然体で強く生き延びる予定でおります。 皆さんはくれぐれも真似をされず、ご自身でよく吟味した上で接種の是非を判断されますように…)
      
Comments (2)