原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

消費者尊重契約時代を検証する

2009年10月03日 | 時事論評
 今回の記事では適切な題名が思い浮かばず、“自作”の分かりにくい造語表題を使用し恐縮である。
 早速自作造語の表題の意味から解説することにしよう。


 先月、某大手フィットネスクラブに入会したのだが、その入会契約手続き時に上記の「消費者尊重契約時代」を実感した私である。

 例えば入会に際しての入会金であるが、一昔前のフィットネスクラブの入会金と言えば何万円かが常識で、下手をすると何十万円の入会金を納入させるクラブもあったと記憶している。
 私が今回入会したクラブは入会金が¥0- であったが、これは今時の常識なのであろうか?
 その分、登録料と称して¥3,150- の納入を課せられるのだが、この程度ならばまずまず許容範囲であろう。
 
 次に月会費の納入であるが、クラブ利用月の月末27日が引き落とし日となっている。 今までの私の経験だと、会費や月謝は「前払い」すなわち利用前の前月の引き落としが常識であった。
 この「後払い」制には退会時に損失を計上しなくて済むという大きなメリットがある。「前払い」の場合、既に会費が引き落とされた後に退会となるため、1~2か月分の会費が過払いとなり消費者側の損失が大きいのだが、「後払い」によりこの損失を回避することが可能となる。
 これに伴い退会がし易くなることが、入会時の消費者の精神的負担を軽減するものでもある。 当月の25日までに退会を申し出ればその月末には退会可能となるため、急な事情での退会においても損失は少なくて済む。

 また「休会制度」が一切ないというのも明確でよい。 この休会制度というのがくせもので、よくあるのは退会を申し出た時に休会制度の利用を勧められ、会費の何割かを強制納入させられるというパターンだ。 結局、長い休会期間に渡って損失を計上させられた挙句、退会の運びとなるのが大方なのだ。 休会制度がないお陰で一旦退会して将来的に再開したいような場合も、再入会時に登録料のみの負担で済むというメリットもある。

 上記のように、フィットネスクラブ入会契約内容に関する重要事項説明書に重箱の隅をつつくがごとく目を通し、契約担当者に分かりにくい部分につき質問もしながら、“ここにきてやっと世の中の契約体系が消費者尊重に傾き始めたのかな”との感想を抱きつつ契約締結の運びとなった。


 消費者 対 生産者、販売者 等の関係が対等な経済社会であるのが世の基本である。 近代市民法の基本原理の一つである“契約自由の原則”に従った合法的な契約が締結される社会であってこそ経済流通が活性化し、正常な経済発展がもたらされることであろう。 にもかかわらず、消費者はその流通関係において末端の弱者であるが故に不利な契約を締結させられてきたのが現在までの経済社会における歴史でもある。

 それにしても、消費契約において私が今回経験したフィットネスクラブのレベルまで消費者側が尊重され契約内容が合理化されたのは、いつ頃からのことなのであろうか。
 我が子の習い事を振り返ってみても、例え大手企業であれ月謝は前納、休会制度の採用、退会届は退会の1ヶ月以上前までに提出等、消費者側が不利となる契約を当然のごとく消費者に押し付けていたものである。
 何か月分、何十万円もに及ぶ月会費を前払いで強制した挙句、突然閉鎖して経営者が行方をくらます等、悪質な英会話学校等の違法な契約の横行ぶりが摘発されて以降の行政指導によるものなのであろうか??

 今回の私の経験は、大手企業であるから故に可能となった契約形態なのであろうか。 私が今回入会した店舗は比較的小規模であるにもかかわらず、この消費者尊重契約の効果が絶大なのか、平日昼間にして多くの会員がクラブを利用している。
 中小や個人のクラブや教室においては、経済不況の下の経営難に加えて悪質消費者対策の観点からも、消費者に不利な契約形態を取らざるを得ない側面もあろう。


 「消費者庁」とやらの新省庁も誕生したようである。
(どんな“お仕事”をしているのか存じ上げないが、新政権の福島大臣がおっしゃるように永田町の超高額家賃のビルではなく、消費者に近い位置の出来るだけ家賃の安いビルに引っ越すことにより国民末端消費者からの血税の財源食い潰しは即刻やめて、消費者の目線で執務を行って欲しいものであるぞ。)

 今後共、新政権は近代市民法の基本原理のひとつである「契約自由の原則」が正常に機能する社会を保証することにより、現在の経済不況から抜け出して欲しいものである。
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