原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

能力別クラス編成を憂慮する

2008年05月13日 | 教育・学校
 中学生の我が子が通っている私立中学において、本年度から中3に限り能力別クラス編成制度が採用された。高校へは基本的に全員が内部進学のため、高校受験を経験しないことによる学力低下を阻止し、生徒全体の学力向上を図ろうとする狙いだ。

 現在、この能力別クラス編成を採用する学校は急増傾向にあるようだ。
 小学校においてすら、習熟度別学習と称して算数等一部の教科で能力別学習を採用している学校が今や一般的である。


 さて私事であるが、今年中3に進級した我が子がこの能力別(正確に言うと成績別)クラス編成の最上位クラスの所属となってしまった。こういう場合、通常は喜ぶ保護者が大多数なのであろう。ところが、我が家では親子共々頭を痛めてしまっている。なぜならば、最上位クラスにおける学習方法が我が子に合わないであろうことを懸念していたのだが、1ヶ月が経過した今、まさに嫌な予感が的中してしまっているためなのだ。

 成績が良いことを否定する訳ではない。良いに越したことはないのであろうが、学校における成績とはそもそもある一定時点の相対評価に過ぎない。この数字にこだわり過ぎると個性ある子ども個々の成長の観点からは先を誤る危険すらあると私は懸念するのだ。
 
 我が家の教育方針は子どもの全人格的な成長に重きを置くことにある。その中で学力という項目ももちろん重要な成長の要素ではある。この学力の伸びを判断するに当たって、目先の学校の成績もそのひとつの指針にはなるが、もっと広い視野で子どもの学力を捉えたいと私は考え、日々子供の教育指導に当たってきている。その指針とは席次や通知表の評価では決してなく、子どもが学習内容を真に理解できているがどうかなのである。これを、私なりの判断においてずっとチェックしてきている。

 学習において最重要なのは概念理解である。数学を例にとって話すと、公式というものがある。これを暗記する事はもちろん重要であるが、それに先立ち公式が成り立っている理屈を筋道立てて理解しておく事が肝心だ。
 つい先日も子どもが数学の因数分解の問題の答がどうしても合わないと言うので見てみると、単に公式を誤って暗記してしまっている。例えば簡単な例として、
(a+b)(a-b)  = aの二乗 - bの二乗(二乗の数字が出せず、すみません。)
という公式があるが、これは元の式を乗除加減の法則に従い順序立てて計算していくと誰でも簡単に導き出せる。
 ところが、計算の量をこなさせるために担当教員が早く公式を暗記するように指導したらしい。そのこと自体に問題がある訳ではないのだが、それを力不足の我が子が誤って暗記してしまったのである。
 そこで私は、初心に戻り公式を導く計算から何度もやり直させた。どうしてその公式が導かれたのかを理解することが暗記の近道であると、私は自分自身の学習経験から考えるからである。

 この概念理解学習は時間を要する作業であるかもしれない。丸暗記して計算をどんどんこなして計算力をつける方が、とりあえずの成績アップのための近道ではあろう。ただ、自分の確かな学力として長年定着させるためには、回り道ではあれ概念理解はかかせないのではなかろうか。


 さて能力別クラス編成の話に戻すが、我が子の学校の場合、最上位クラスはさらなる成績向上のために各教科共ドリルを他クラスより1冊増やし、早い話が「詰め込み教育」を行っているのである。これがそもそも私の教育理念に合わないし、加えてスローテンポで力不足の我が子にも向いていないのである。これを日々強制されてしまうと、我が子の場合は逆効果だ。案の定、もうオーバーフロー気味である。
 これでは我が子は潰されてしまう。何とか我が子の学習スタイルに合う方法で学習に取り組ませてやりたいのだが、学校の課題を無視する訳にもいかない。それで頭を痛めてしまっているのである。

 この連休も学校の大量の宿題をこなすのに精一杯で、行楽にも行けない。親子で趣味のバレエ公演も観たいのに…。やっと半日美術館へ行けただけである。こんな状態では、私が目指す全人格的成長は望めない。

 高校進学時は特進クラスの希望は出さないことを既に子どもと話し合った。後1年、何とかこの不健全な状況を耐え抜いて欲しいと今は願うばかりである。
 

 以上のように、能力別クラス編成は子どもの個性によっては大きなマイナスとなる場合もある。生徒全体の学力向上を目指すならば、成績別ではなく、学習タイプ別、学習環境別、すなわち生徒の学習への取り組み方の個性に応じたクラス編成が効果的なのではないかと私は考えるのだが…。
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