水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

忘れるユーモア短編集 (5)タイミング

2020年04月19日 00時00分00秒 | #小説

 タイミングは、どんな場合にも重要となる。タイミングを忘れると、いい瞬間や最高の瞬間を逃(の)がすことになり、悔(く)やんでも悔やみ切れない結果となるから怖(こわ)い。^^ 本戦で勝てる手を指(さ)すタイミングを逃したプロの棋士が、『あっ! ち、ちょっと、それ待ってくださいっ!』などとは口が裂(さ)けても言えないのと同様に、人生はここっ! というタイミングを忘れると、取り返しがつかなくなる。人生のやり直しは不可能なのだ。^^
 とあるパン屋の店前である。開店前から大勢の客が列をなしている。というのも、美味(おい)しいと好評で、すぐ売切れてしまうからだ。誰もが我先にと殺到(さっとう)すれば、当然ながら列を成すことになる。
「いや~忘れるとダメだね。出るタイミングを逃して、とうとう買えなかったよ」
「なんだ、そうでしたか。電話してくだされば買っておきましたのに…」
「ああ! その手があったか、ははは…」
「浮かびませんでしたか?」
「ああ。浮かばんのと忘れるとじゃ、えらい違いだな」
「そうですね。タイミング以前の問題です」
「まあ、浮かばんと忘れることもないがな。ははは…」
「ははは…ですねっ!」
 タイミングは忘れた方が気楽でいい・・という結論らしい。だが、この結論は、少し負け惜しみの気がしないでもない。^^ 

                                


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 忘れるユーモア短編集 (4... | トップ | 忘れるユーモア短編集 (6... »
最新の画像もっと見る

#小説」カテゴリの最新記事