水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ④<15>

2015年04月28日 00時00分00秒 | #小説

『いい感じだね…』
 褒(ほ)めベタな小次郎は、とりあえず猫語でニャニャっと返した。
『なによ、それ…。この鳴り具合、いいでしょ?』
 みぃ~ちゃんは、もう一度、首を軽く振り、チリン! と鳴らして、鈴をアピールした。
『ごめんごめん! いい音色だよ』
 こりゃ、所帯を持てば尻に敷かれそうだ…と小次郎は漠然と思った。みぃ~ちゃんは、ニコッと口毛(くちげ)を動かし、少しご機嫌をよくした。
『それよか、僕と君は平安朝の通い婚になりそうだよ』
 小次郎は、このままでは危ういと話題を転じた。
『通い婚? なに、それ?』
 みぃ~ちゃんは、まったりとフロアへ身体を沈め、寛(くつろ)ぎ姿で訝(いぶか)しげに訊(たず)ねた。
『僕がみぃ~ちゃんの家へ通うってことさ…』
『来たっていう合図は? それに、私(あたし)にも都合があるから…』
 小次郎がその後、みぃ~ちゃんから得た詳細情報では、小鳩(おばと)邸には、高級感が漂う家風のスケジュールが、いろいとあるようだった。
『まあ、ともかく…通うことにするよ』
『うん! まあ、話は今後、詰めるとして、今日はおめでたい席だから、硬(かた)い話はナシにしましょう』
『そうだね…』
 二匹は、まったりと寝そべって寝息を立て始めた。いつやらも言ったと思うが、猫族はよく眠るのである。一日の三分の二は眠るのが普通だ。特に、この日のように居心地がいいと、すぐ眠ってしまうことになる。


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