水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (19)宝くじ

2020年01月23日 00時00分00秒 | #小説

 誰もが豊かな暮らしをしたいに違いない。そりゃ、貧乏で寒さに震えるよりは空調で暖かく過ごす方がいいに決まってるだろっ! と膠(にべ)もなく言われればそれまでだが、その通りだから、まあ仕方がない。この私だってご他聞(たぶん)に洩(も)れないのである。^^ だが、法外に豊かな暮らしは、そう簡単に手に入るものではない。となれば、人々はギャンブルをせねばならない。同じ暮らしを続けていては豊かな暮らしを手に入れられないからだ。そうなると、安全で小さなギャンブル・・まあ、この程度ならギャンブルではなく、オバマ元アメリカ大統領じゃないが、チャレンジと呼ぶに等しいだろう。それが、宝くじである。^^ ただ、ほとんど当たる確率が低く、カラスくじでカアカアァ~~! と鳴く、いや泣くことになる。それにもかかわらず人々が買うのには疑問が湧く。おそらくは、小さな夢を小額のお金で買っているのだろう。だから、それはそれでいい訳だ。ギャンブルとは異(こと)なり、勘定(かんじょう)が合う。しかしこれも、大量に買わない・・という条件がつく。大量に買えば、やはりギャンブルだ。両者を分かつ基準・・これがまた難(むずか)しく、疑問となる点である。^^
 同僚(どうりょう)の二人のサラリーマンが宝くじを買っている。
「どうです?」
「なにがっ?」
「いや、当たりそうですか?」
「ははは…そりゃ、くじに訊(き)いてくださいよっ! 私に訊かれても…」
「まあ、そりゃ、そうです…」
「この前は、これでも6等2,000円が当たってましたがねっ!」
 訊(たず)ねられたサラリーマンは自慢するでなく返した。
「そりゃ、すごいっ! すごいじゃないですかっ!!」
「そうですかぁ~? そんな額じゃないんですがねっ! まぐれ、ですよ、ま・ぐ・れっ! ははは…」
「ここ、ですかっ?」
「ええ、ここで買いました。それがなにか?」
「いや! 当たる率がね」
「ははは…。また、当たりくじがここから出るかは疑問ですがね」
「いや! きっと出ますよ、きっと! 私、10枚、買っておきまっ!」
「私はいつものように一枚だけ…」
 時が流れ、当選くじが発表された。10枚、買ったサラリーマンはすべてがカラスくじでカァカァ~~と泣き、一枚買ったサラリーマンは5等10,000円がめでたく当たってピヨピヨと鳴いた。^^
 宝くじがなぜ当たるのかは疑問となる点だが、まあ運としか言いようもなく、欲を出さないのが無難(ぶなん)ということだろう。^^

                               完


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