水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第百八十七回)

2010年12月30日 00時00分02秒 | #小説
  あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第百八十七
やがて、先輩が口にしたのは、どこか近くに美味い店はないか、ということだった。あまり余裕の時間がないらしく、昼食兼夕食を食べて、東京へUターンすると云った。
「美味い店なら、いろいろとありますが…。和食、中華、洋食、何になさいます?」
「そうだな…。朝からステーキだから、少しあっさりとした和食がいい…」
「それなら喜楽という店がいいでしょう。ここから右へ折れて突き当りです。大きな看板が出てますから、すぐ分かりますよ」
「そうか…有難う。それじゃ、十日後辺りに電話する…」
 煮付(につけ)先輩は応接セットから立ち上がると、ドアへ向かった。
「炊口(たきぐち)さんにご挨拶だけして、その足で帰るから、送りはいいぞ、塩山」
「はい。それじゃここで失礼させて戴きます」
「ああ…、じゃあな」
 先輩が部屋を出たあと、妙な空虚感が私の心を苛(さいな)んだ。その時、お告げが聞こえた。
『どうです。新しい展開が始まったでしょう。あなたが見た映像に一歩、近づいた訳です』
「それが、国連なんですか?」
『まあ、そうなっていくでしょう。それ以上は決まりで云えないと以前、申しました』
「ええ…、それは憶えております」
 私はそれ以上、深く踏み込まなかった。

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