ウィトラのつぶやき

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ノーテルの倒産から感じるアメリカの製造業

2009-01-16 17:35:25 | 社会
今回は私の仕事に関連の深いアメリカの通信機器メーカーであるノーテルが会社更生法の適用を申請した話題である。

ノーテルはアメリカのネットワーク機器の大手メーカーで世界でも5位の会社であるが経営破たんした。これは必ずしも金融恐慌が原因ではなく、ずっと業績が悪く危ぶまれていたのが昨年来の金融恐慌でとどめを刺された、という見方をすべきだろう。

私が会社に入ったのは1974年であるがその頃は通信のメッカと言えばアメリカで、新しい技術はベル研究所かモトローラから出てきて、通信機器メーカーもAT&T、ノーザンテレコム(後ノーテル)、モトローラなどが世界を支配していた。

しかし、ベル研究所は解体、AT&Tのメーカー部分として独立したルーセントはフランスのアルカテルに買収されてその後の業績も芳しくない、モトローラも長期低迷しており、最大の規模である携帯電話部門を切り離す検討をするなどリストラを継続している。今回、ノーテルが破たんしたことで当時の大手の通信機器メーカーは見る影もなくなった、と言えるだろう。

代わって、アメリカには当時存在しなかったシスコやクアルコムという会社が台頭してきてはいるが、現在の世界の通信機器はアメリカのシスコと北欧のエリクソン、ノキアが中心で、そこに新興勢力として中国の華為が入ってきているという構図と言えるだろう。

個々の会社の戦略の失敗などは専門的になるのでそのうち「ウィトラの眼」のほうに書きたいと思っているが、全体的にアメリカの大手通信機器メーカーが没落したのはアメリカ政府の政策が大きく影響していると思う。

1980年代、日本の攻勢を受けて苦境に立ったアメリカの製造業に対してアメリカ政府は製造業を捨てて知識産業で勝負するという「プロパテント政策」をとった。特許や技術イノベーションを生み出すことを保護する一方、「ものつくり」は国外流出もやむなし、という政策をとった。これがベンチャーブームにつながり、マイクロソフトや、シスコ、インテル、クアルコムといった新しい勢力を生み出した一方、大手企業で地道にモノづくりをするような分野には優秀な人材が集まらず、20年ほど経って現在の状態になったのだと思う。

いわゆる文科系の人は投資銀行などに走り、金融バブルを生んだ。このアメリカの政策自体が悪かったとは言い切れないが、製造業は雇用に対する影響も大きい。自動車産業もその典型であるが製造業を軽視しすぎたのではないかという気はしている。

果たして日本はどうなのか、個々の分野でいわゆる業界を守る動きは強すぎるくらいあるものの、国全体のマクロ政策としては製造業を軽視しているようなちぐはぐな感じを受けている。

写真は鶴見川沿いの自動車廃棄工場。クレーンで車をつかんで台に乗せ上から押しつぶしていく。通りかかりにこの作業を見てしばし見入っていた

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