祖母が預かった2歳の孫を車に置き忘れて、孫が車内で死亡した事故。
この手の事故が一向になくならないなら、なお一層我々は再発防止を自覚すべきだ。
前回の記事(車の中に子どもを置き忘れない方法2)で説明した論理を使うと(前回の記事での提案はまだハードルが高そうなので、ここではさらにハードルを下げる)、
孫を預かったという非ルーティン的状況は、システム2を作動させ、普通なら頭(意識)から離れない。
ところが、運転中(運転はほとんどルーティン作業なのでシステム1に任せられる)、孫とは全く無関係の考え事(システム2)に耽ってしまった。
ミスでもいわゆるポカ的なミスは、システム1がやらかす。
それを補うために精巧な思考ができるシステム2が創発された。
システム2の意識集中がそれを可能にする。
だが、意識集中とは、集中対象以外を意識の外に置くことでもある。
運転中、考え事に集中している間、孫の存在が意識から消える。
それはシステム2の限界なので仕方ない。
そのままの状態で車を降りるとどうなるかは明らか。
逆にその過集中を補えるのが、知覚に依存するシステム1だ。
ただシステム1は、視野にないものは意識に入りにくい(傘を乗り物に忘れる場合)。
つまり、孫を置き忘れた原因となるのは、後部座席に座らせることで、通常の視野から外れ、さらに意識からも外れ、しかもその子が眠ることで音的にも存在感を出せなかった点だ。
ただし助手席より後部座席に配置することは交通安全上は望ましい。
また幼な子がすぐ眠ってしまうのは仕方ない。
「後部座席の幼児は眠る」、ということを前提にすると、
考えられる対策は、システム2でその子のことを思い続ける、
が理想だが、仕事に行く時は、どうしても仕事の事を考えてしまう。
とすると、システム2がその子を意識から外しても、車を降りるときに、その子の存在を思い出せる仕組みが必要となる。
それには、その子の存在を視野に入れるというシステム1的行動を取り入れる。
具体的には、①仕事の荷物を後部座席に置く、あるいは②その子の持ち物を助手席の自分の荷物と一緒に置く(重ねて置くとなおよい)。
すなわちその子の代わりとなる物を強制的に視野に入れる仕組みを作るのだ。
ポイントは、車を出てすぐに使う荷物に近接させること(雨天だったら傘と一緒でも)。
これなら、少なくとも車を出てからまもなく気づくことができる。
①②のうち、確実に忘れないのは、①荷物を後部座席に置く方だが、いつも助手席に置いているとこの行動が取りにくく、また子供が荷物をいじってしまう。
なので②子供の荷物(帽子でも靴でも)を助手席の自分の荷物と一緒に置く方が実行しやすい。
ちなみに、祖母に預けた親や保育施設からの確認の連絡は、ミスの多重防御(フェイル・セーフ)対策であって、もちろんそれも大切だが、ここで問題にするのは、あくまで直接原因の対策(フール・プルーフ)。