自分が遭遇した新幹線放火事件の総括として、教訓で締めくくりたい。
ここでは乗客自らの安全対策(リスク低減)を考えたい。
①1号車を避ける:列車は先頭の1号車が最も事故リスクが高いことは周知の事実である。
だから1号車に乗ること自体、リスクを高めている。
のぞみの自由席は1-3号車であるから、3号車から乗るようにした方がいい。
たぶん多くの人はそうしている。
1号車が一番空いているのがその証拠。
私はそれをねらって最初から1号車にしていた…。
では事故でない今回は、なぜあえて1号車で起こされたのか(犯人が乗車したのは後ろの車輌)。
あえて1号車を狙う意味があるとすれば、運転席に影響を与えたかったのかもしれない。
その意味でも1号車はリスクが高まる。
②リラックスしすぎない:発生してからは「逃げ遅れ」が致命的になる。
そのためには、異状への気づき、行動開始などを出来るだけ前倒しできる態勢でいることが必要。
すなわち、意識は明瞭に、そしてリラックスしすぎない。
意識が明瞭であれば、今回のように挙動不審者に気づく程度はでき、それが警戒心を喚起させる。
電車内は公共空間であるから、リラックスするのはマナー的にも限度がある。
靴を脱いでシートを思いきり倒して睡眠する人がいるが、自分を危険にさらしていることになる。
実際、新幹線内は置き引きやサイフの盗難がよくおきている。熟睡者が狙われるという。
③荷物は身近に:私はキャリーバッグを通路側の座席前に置いていたからすぐに持ち出せた。
持出せなかったのは、足下のコンセントに挿し込んでいた充電器だ。
混雑した時も、キャリーバッグは自分の膝前に置き、上の棚には載せない。
キャリーバッグは4輪なので移動は楽だ(2輪より4輪がいい)。
このように荷物はできるだけ身体のそばに置いておきたい。
④煙を避ける:乗客は避難を優先すべきなので、消火にはあたれない。
なので炎と煙から逃げることになる。
今回この煙からの避難に手間取った。
煙は温度が高いから上昇する。
同じ空間でも、身を低くすればそれだけ煙から逃れられる。
火災時の避難の鉄則だ。
だが、避難者で混雑しているとその態勢が取れない。
走行中は避難路が通路に限定されているからだ(避難路の限定はパニックの誘発要因でもある)。これはなんとかしてほしい。
座席の下も這って避難できるスペースがあればいいのだが。
⑤東海道新幹線固有のリスクを認識:東海道新幹線は地震リスクの高い地帯を通過している。
小田原-三島間だ。
まず小田原-熱海間は、相模湾に面して、箱根山の長いトンネルを複数通過する。
この地帯は、関東大震災の震源地である相模トラフの隣接地で、その地震時、根府川駅を発った列車が鉄橋の上で土石流被害にあって列車ごと相模湾に落下して、多くの死者を出した。
そして今は、箱根山が噴火中。
熱海-三島間は路線内で一番長い新丹那トンネルをずっと通過するのだが、丹那断層がこのトンネル内を横断している。
活発な断層で北伊豆地震を起こしている。
そもそも地震は断層の破壊現象であるから、トンネル内の断層が破壊されれば、通過中の車輌はぶった切られる。
なので、私は長いトンネルが続く小田原-三島間は、いつも一番緊張し、一刻も早く通過することを祈っている(新丹那トンネル抜けて、右に富士と愛鷹山、左に伊豆半島に続く平野が現れたときはいつもホッとする)。
乗車するみなさんも、せめてこの区間だけは緊張感をもった方がいい。
東海道新幹線は、三島通過後も富士川断層を渡り、フォッサマグナの南端をくぐり、東海地震震源域に沿って走り、中央構造線をかすめる(その先にもいろいろある)が、トンネルの”外”で地震に遭遇した場合は、中越地震時の上越新幹線、3.11の東北新幹線の例を見れば、心配するほどではない…と思う。