博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『人体 失敗の進化史』

2006年07月13日 | 書籍(その他)
遠藤秀紀『人体 失敗の進化史』(光文社新書、2006年6月)

生物の進化というものは目的に応じて器官を新たに作り出すのではなく、別の目的で発達した器官を「取り敢えず」流用し、変化させることによって果たされる。進化とは地上での生活への適応や二足歩行の獲得といった遠大な目標に向かって計画的に進められるものではなく、手近な環境に適応するために行き当たりばったりで行われるものである。本書はこういったことを多くの事例の紹介によって説明しています。

例えば哺乳類の耳小骨は元々顎の関節の骨だったとか、脊椎動物の骨は最初は体内にカルシウムを蓄えるためだけに作られた器官だったとか、ヘソは実は卵生の動物にもあって、卵の黄身をためこむ卵黄嚢につながっているとか、二足歩行の実現によって人間は肩こりや冷え性、ヘルニアなど様々なトラブルを抱えるようになったとか、「へぇー」と思うような解説を読み進めているうちに、我々が「進化」や「恐竜」といった言葉に何となく抱いていた夢や壮大なロマンがぶち壊されていくこと請け合いです(^^;) 
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NHKハイビジョン特集「文化大革命」他

2006年07月11日 | TVドキュメンタリー
日曜日にNHKハイビジョンで放映された『文化大革命40年目の証言 10万枚の写真に秘められた真実』を見てました。文革中に撮った10万枚の写真を秘蔵するカメラマンの李振盛氏が、写真に写った人々を訪ねて文革当時のことを語り合うというドキュメンタリーです。李氏が訪ねる相手は文革で吊し上げを喰らった党幹部の家族もいれば、逆に紅衛兵による吊し上げに協力した人々もおります。

しかし紅衛兵に痛めつけられた人々が文革を否定するのは当然として、紅衛兵に協力して良い目を見たと思われる人や、当時5歳の子供で毛主席を称える踊りをおどった人までもが文革に否定的なのは何とも…… 今年は文革開始から40周年にあたるのですが、中国のマスコミはほとんど話題にしていないとのことです。中国人にとって文革というのは、我々日本人にとっての敗戦以上に触れたくない記憶なんでしょうか。

で、NHK-BS2では今日から1日2話のペースで『チェオクの剣』の再放送が始まっております。本放送時に見逃した第二話(チェオク達の過去が語られる話)を見ることが出来て、非常に満足であります(^^;)
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『亀卜』

2006年07月09日 | 日本史書籍
東アジア恠異学会編『亀卜―歴史の地層に秘められたうらないの技をほりおこす』(臨川書店、2006年6月)

亀甲による占いを多方面から検討した本です。第二章の中国・殷代の亀卜に関する論考と、第六章の灼甲の実験レポートをめあてに購入したのですが、日本で行われた亀卜の考察がメインです。

日本での亀卜なんてごく早い時期に廃れてしまったと何となく思ってましたが、中世の頃までは朝廷の中で重要な役割を担っていたんですね。灼甲の実験レポートでは、亀甲が糸ノコギリでは切断できないほど硬いとか、亀甲の表面を覆うタンパク質を除去しないまま火にくべると、まるでするめを焼くような感じで縮んでしまうといったような記述を楽しく読ませていただきました。

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華流シネマウィーク2006 in 大阪

2006年07月08日 | ニュース
シネマート心斎橋にて7/15から8/18まで、「華流シネマウィーク2006 in 大阪」と題して香港・中国映画を順次5本公開するとのこと。公開作品は『ドラゴン・プロジェクト』(7/15~7/28まで公開)、『エンター・ザ・フェニックス』(7/15~7/28)、『6AM』(7/29~8/11)、『剣客之恋』(8/5~8/18)、『天上の恋人』(8/5~8/18)です。

どうやら大阪にさきがけて先月東京のシネマート六本木で同じ企画が行われていたようで、こちらの方の公式サイトを貼り付けておきます。
http://www.cinemart.co.jp/contents/hua_week/index.html

このうち『剣客之恋』は原題を『老鼠愛上猫』といいまして、古典小説の『三侠五義』を題材にしたコメディです。劉徳華(アンディ・ラウ)が展昭、張栢芝(セシリア・チャン)が男装の麗人・白玉堂を演じています。私は以前に香港版のDVDでこの作品を鑑賞しましたが、アンディ・ラウとセシリア・チャンが主演している点は『マッスル・モンク』と同じですが、ストーリーの方はこちらの方が遥かに軽いです(^^;) またマクザムから7/21にDVDが発売になります。(『天上の恋人』も同じくマクザムからDVDがリリース予定です。)

個人的にちょっと気になるのは、市井に身を隠したカンフー一家の激闘を描く『ドラゴン・プロジェクト』(原題は『精武家庭』)ですね。題材が『カンフー・ハッスル』とかぶっているような気もしますが、気が向いたら見に行ってみようかと思います。
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『中国出土文献の世界』

2006年07月07日 | 中国学書籍
朱淵清著・高木智見訳『中国出土文献の世界』(創文社、2006年5月)

朱淵清『中国出土文献与伝統学術』の翻訳です。戦国~前漢期の竹簡・帛書を中心に近年陸続と発見されている新出資料の内容や研究成果について概観しており、新出資料の便覧・手引き書として非常に使い出のある本だと思います。特に『孫子兵法』『孫臏兵法』が含まれていることで知られる銀雀山漢簡、『老子』『周易』など多くの文献が含まれている馬王堆帛書、現存最古の『老子』のテキストが含まれている郭店楚簡についてはそれぞれ一章を割いて詳述しています。

巻末に銀雀山漢簡・馬王堆帛書など出土地別にそれぞれどんな文献が発見されているかというリスト兼索引が付いているのはありがたいです。ただ、どうせならそれぞれの簡報や報告書のタイトル、掲載誌、発行元なども附記してくれるともっとありがたいなあという気が……

またこの日本語版の訳者あとがきでは、先秦史の研究をするうえで伝統的な学問の手法を身につけなければいけないのは当然として、一方で近年の考古学や出土資料の成果も把握しておく必要があるし、更には人類学・社会学・自然科学といった他の分野の知識も必要ということで、先秦期の文化や社会の実像に迫ることがいかに困難かということについて言及されています。これを読んで、我ながらよくこんな難儀な分野を専門にしたよなあと呆れた次第です(^^;)
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秦代にヨーロッパ系人種が……

2006年07月03日 | ニュース
今日の『朝日新聞』朝刊によると、始皇帝陵付近の墓から発掘された人骨の中に、ヨーロッパ系の男性の骨が存在することがわかったとのこと。

「秦時代の墓から欧州系の人骨 学説より1世紀早く交流か」
http://www.asahi.com/international/update/0702/005.html

別のサイトの報道によると、具体的にはペルシア系らしいとのことですが……

「始皇帝陪葬墓にペルシャ系 中央アジアと早期に接触」
http://www.usfl.com/Daily/News/06/06/0629_002.asp?id=49266

以前に西周期の周原遺址からヨーロッパ系の人種をかたどったと見られる頭像が発見されていたことから、かなり古い時代に中国が西域の人々と交渉を持っていたのではないかという説もありましたが、実際に人骨のDNA鑑定で西域人が中国に入り込んでいたことが証明されるとは思いも寄りませんでした(^^;)
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ドキュメンタリー『故宮』 その3(完)

2006年07月02日 | TVドキュメンタリー
(前回:その2

後半の第九~十二集のあらましです。

第九集「宮廷西洋風」
明の万暦年間に中国に到来したマテオ・リッチをはじめとするイエズス会の宣教師によって、西洋の科学技術や文物が宮廷にもたらされることとなった。康熙帝は宣教師を欽天監監正に任命し、西洋の暦法に取り入れる一方で、西洋音楽や数学、医学を愛好した。雍正期を経て乾隆期には時計や西洋風の建築などを愛好する西洋ブームが起こったが、かたやフランスやドイツでも中国ブームが起こっていた。しかし西洋の時計や機械仕掛け、あるいは清末に導入された電灯や電話などは王侯の玩具として愛好されたにすぎなかった。

第十集「従皇宮到博物院」
溥儀が退位してから紫禁城が故宮博物院となるまで。1912年に清朝は滅亡したが、民国政府の提示した清室優待条件により、溥儀はこれまでと同様に皇帝の称号を保持し、紫禁城に住まうことを許された。しかし1924年に北京に入城した馮玉祥は溥儀を紫禁城から追放してしまう。そして清室善後委員会による故宮の所蔵品の調査・点検を経て、1925年10月10日に紫禁城は故宮博物院と改められ、内部が一般に公開されるようになった。その後、太和殿等三殿を洋式の国民議会議事堂に建て替える案や、故宮自体の取り壊しも提案されたが、それらはいずれも反対にあって却下され、1928年に成立した蒋介石の南京国民政府によって故宮の保持がなされることとなった。

第十一集「国宝大流遷」
1900年の八カ国連合軍進駐や、宦官など宮廷関係者による盗難・持ち出しによって、1924年に溥儀が紫禁城を追放されるまでには既に相当数の宝物が国内外に流出していた。溥儀は紫禁城から持ち出した宝物を天津、そして満州国の首都・新京(長春)へと遷した。一方、故宮博物院に残された文物は満州事変以後、日本軍の侵略から保護するために南京へと遷し、日中戦争が始まると、陝西・四川省など更に西南方の奥地へと文物を避難させた。第二次大戦後、溥儀の持っていた宝物は東北博物館(現遼寧博物館)などに接収された。奥地に避難させていた宝物は一旦南京に戻されたが、国共内戦中にそのうちの4分の1ほどの精品を蒋介石が台湾に持ち去ってしまい、台北故宮博物院に収蔵されることとなった。残りの宝物は北京の故宮博物院に戻されたが、更に国内外に流出した宝物の徴収や買い戻しが現在まで進められることとなる。

第十二集「永遠的故宮」
1949年、解放軍によって接収された当時の故宮は瓦礫や雑草に埋まって荒れ放題の状態だったが、そこから修繕が進められ、面貌を一新した。そして2004年6月、故宮では国外の技術者の協力も仰いで全面修築を開始した。その修築の様子や、修築作業によって新たに発見された文物を紹介。

前回「その2」で触れた、溥儀が賞賜の名目で溥傑に紫禁城内の宝物を持ち出させていたことについては、第十集・第十一集でも言及されてます。やはりこの行為を宝物の盗難行為だと非難していますが……

個人的に面白かったのは第十集ですね。故宮が一般に開放された当時の様子を数人の識者にインタビューしているのですが、現在の故宮関係者や当時の関係者の子孫だけでなく、当時実際に見学した90歳前後のご老人にもインタビューをしております(^^;) 例えば書家の啓功氏(インタビュー当時93歳。この人は清朝皇帝の血をひいているようですが。)は、一緒に見学した師匠から「あれは良い物だ。あれは良くない」とか、「あれは本物だ、あれは偽物だ」とか、色々教えを受けたとのこと。この辺の昔語りがなかなか面白いです。また婉容の弟とか溥儀の弟・溥任が出演していたのも驚きです。婉容の弟なんてまだ生きていたんですねえ。
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『マッスル・モンク』他

2006年07月01日 | 映画
『マッスル・モンク』(原題:大隻佬、杜峰(ジョニー・トー)監督、劉徳華(アンディ・ラウ)・張栢芝(セシリア・チャン)出演、2003年、香港)

例によって日テレ系の深夜枠で放映されていたものを鑑賞。
タイトルから筋肉ムキムキのアンディ・ラウが悪漢を倒しまくる愉快な展開を期待しましたが、実際の所は愉快どころかドン引き必須の救いようのないストーリーでした(-_-;)

主人公のビッグガイ(アンディ・ラウ)は元修行僧で、ある事件がきっかけで還俗してしまい、映画の始まりの時点ではマッチョな肉体が売りの男性ストリッパーとなっています。(このビッグガイの裸体が、肉襦袢を着込んだような感じで非常に不自然であります……)彼は他人の前世の姿を見ることができ、それによってその人の現世での死に様を予知することができます。この作品の世界では、人は前世での悪事がそのまま現世で自分の身にふりかかってくるということになってます。例えば前世で自分が何の罪のない犬を殺したりすると、来世では犬に生まれ変わっり、人間の手で無惨な死を遂げることになったりします。

ビッグガイはセシリア・チャン演じる女刑事と知り合いますが、この女刑事の前世が罪のない中国人民の首をはねたりして多くの人々を虐殺した日本兵であります(-_-;) つまり、このまま放置しておけば女刑事はむごたらしく悪漢に首をはねられて殺されることになるわけで、ビッグガイは彼女の運命を変えるべく奮闘することになるが……というような話です。

うっかりこんな映画を見てしまって気分が非常に滅入ったところで、口直しにやはり日テレ系で放映の『戦国自衛隊1549』を鑑賞。こちらは『マッスル・モンク』とうってかわってラストはスッキリと締めてくれました。これで今夜はぐっすり眠れそうです(^^;)
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