博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『中国出土文献の世界』

2006年07月07日 | 中国学書籍
朱淵清著・高木智見訳『中国出土文献の世界』(創文社、2006年5月)

朱淵清『中国出土文献与伝統学術』の翻訳です。戦国~前漢期の竹簡・帛書を中心に近年陸続と発見されている新出資料の内容や研究成果について概観しており、新出資料の便覧・手引き書として非常に使い出のある本だと思います。特に『孫子兵法』『孫臏兵法』が含まれていることで知られる銀雀山漢簡、『老子』『周易』など多くの文献が含まれている馬王堆帛書、現存最古の『老子』のテキストが含まれている郭店楚簡についてはそれぞれ一章を割いて詳述しています。

巻末に銀雀山漢簡・馬王堆帛書など出土地別にそれぞれどんな文献が発見されているかというリスト兼索引が付いているのはありがたいです。ただ、どうせならそれぞれの簡報や報告書のタイトル、掲載誌、発行元なども附記してくれるともっとありがたいなあという気が……

またこの日本語版の訳者あとがきでは、先秦史の研究をするうえで伝統的な学問の手法を身につけなければいけないのは当然として、一方で近年の考古学や出土資料の成果も把握しておく必要があるし、更には人類学・社会学・自然科学といった他の分野の知識も必要ということで、先秦期の文化や社会の実像に迫ることがいかに困難かということについて言及されています。これを読んで、我ながらよくこんな難儀な分野を専門にしたよなあと呆れた次第です(^^;)
コメント
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