博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『漢字五千年』その1

2009年05月12日 | TVドキュメンタリー
というわけで今まで何度か話題に出した『漢字五千年』各回の内容を紹介していきます。今回は全8集のうち前半4集分まで。

第1集「人類奇葩」
漢字と他地域の古文字、楔形文字・エジプトの象形文字・ラテン語などと比較。同じ時期に異民族の侵入によって分裂を迫られながらも、中国では漢字や漢文化が紐帯となって隋唐王朝による統一を達成したの対し、ローマ帝国ではラテン語圏の西ローマ帝国とギリシア語圏の東ローマ帝国とに分裂し、以後長らくキリスト教東西教会の対立を招いたとする。「中国の中世」という表現は用いていないものの、歴史認識自体は日本の京都学派による時代区分論と似通っている点が注目されます。

また、「漢字を廃止して中国語の表音化を進めれば中国は存在し得ない」という米国学者の見解を紹介しているのは、過去の漢字簡化政策を振り返ると興味深いところ。

第2集「高天長河」
新石器時代の陶器符号から甲骨文字・金文・秦による文字統一を経て隷書の登場に至るまでの漢字形成の歴史について。当初宮廷の中だけで通用されていた漢字が民衆のものになるきっかけを作ったのは、民衆を対象とする教育者の孔子であったとする。

第3集「霞光万道」
漢字使用圏の広がりについて。甲骨文字は周原や大辛荘など殷墟以外の地域でも使用されていたという話から始まり、東周期の楚での「雅言」の使用、中国における民族共用の文字としての漢字、また韓国・日本・ベトナムなど周辺国家での漢字の受け入れと、更にハングルや仮名など漢字をもとにした独自の文字の発明といったことまで話題が広がっていきます。しかしそれらの国家では現在もなお漢字が文字文化のうえで欠かせないものになっているとして、最後に立命館大学孔子学院などを紹介。

第4集「華夏心霊」
農業文明としての中華文明、複雑な親族呼称、「孝」の概念の誕生、貴族の家内・財産の管理系統から発達した殷周の官制、そして周文化の継承をはかった孔子について、関係する漢字の字釈を交えて語る。内容的にはいまひとつまとまりが無い印象を受けました(^^;) 

あと、西周金文の梁其簋が「字」という字を用いた最古の例であると紹介していますが、この銘文では「文字」の意味で使われているのではなく、あくまで子孫の「子」の通仮字として使用されているのですが……


以前に触れたように昨今の中国での繁体字復活論と関連してこの番組が語られているということですが、ここまでの段階ではやはり孔子学院の宣伝という要素が強いですね(^^;)

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