博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『中国古代史論叢』第5集

2008年06月20日 | 中国学書籍
今年も無事に『中国古代史論叢』第5集が発行され、東方書店に入荷した模様です。

http://www.toho-shoten.co.jp/toho-web/search/detail?id=4990113162&bookType=jp

今回は「西周祭祀儀礼研究の手法について―二重証拠法と文化人類学的手法―」という論文を寄稿しています。他の方の論題については上のリンク先を参照のこと。例によって殷代から前漢あたりまでを対象とした論集になっていますが、興味がおありの筋は是非手にとって見てください。

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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (moppy)
2008-06-20 23:23:46
はじめまして。
検索で当サイトに到着しました。

実は、素人なりに"西周の断代の方法論"を考えてみたのですが、専門家ではないので、どうしたものかと思案に暮れております(色々調べごとをしている途中で少し考えてみました)。

http://moppi.seesaa.net/

アドバイスがいただけたら幸いです。

御忙しい中お手数をおかけいたしますが、宜しくお願いします。
返信する
労多くして益少なし (さとうしん)
2008-06-21 11:51:09
>moppyさま
どうもはじめまして!

西周の紀年復原については中国はもちろん日本・アメリカなど各国の研究者が取り組んでいますが、断代案は十人十色で、更に新たに紀年を含んだ銘文が発見されるたびに修正を迫られるということで、ぶっちゃけて言うと労多くして益の少ない仕事だと思います(^^;) 

中国では建国50周年記念プロジェクトである夏商周断代工程で定められた紀年が標準ということになっていますが、これも新たに銘文が発見されるたびに修正案が出ているような状態です。

初吉・既生霸といった月相についても定説が無い状態ですね。正直申し上げて私自身は手をつけようとも思いません。

西周の断代については林巳奈夫先生がされていたような、青銅器の形態の変化による断代が最も信頼性が高いと思います。中国でも紀年の復原に取り組む一方で、青銅器の形態や紋様の変化に注目した断代もなされていますよ。
返信する
返信ありがとうございます。 (moppy)
2008-06-21 16:31:10
ご返答、ありがとうございます。

>初吉・既生霸といった月相についても定説が無い状態ですね。
つまり、白川先生がかなり昔(1971)にしたように、一ヶ月を8,7,7,7(ないしは8)といったかたちで、"仮に振り分ける"ことは、全くできないのでしょうか?


~ちなみに素人の愚論ですが、誤差が頻繁におきやすい月相や元日朔を考えると『全体のずれ』が見えにくくなるので、私の愚論では、月相や元日朔をあまり重視していません。最も重視したのは、年(355(+30)で周る"仮の年譜")、日(60)、月(29~30)の3点です。王名は年譜自体(355(+30)で周る"仮の年譜")を作ること自体には不要なので、後でよいと判断しています。



---
素人なりに何かしら最新の研究状況を確認してみようと思い、

周代中国の社会考古学 (単行本) ロータール・フォン ファルケンハウゼン (著), Lothar von Falkenhausen (原著), 吉本 道雅 (翻訳) 京都大学学術出版会 (2006/12)

という書籍を以前に書店で立ち読みしてみました。タイトルの通り、欧米の『社会考古学』の手法を使っています。手法はこれまでにないものが含まれるのでしょうが、最終的な成果である、断代の精度はかなり低いと思います。~この本によって、欧米の研究状況が確認できました。

ただし末尾に、吉本道雅博士が自説の年譜を掲載されていました。出版されてから1年半しか経っていないので、おそらくこれが「林巳奈夫博士から始まる学派」の最新の年譜だと推察しています。

あくまで素人の判断ですが、やはり日本(吉本道雅博士)のもののほうが「あきらかに統計的に値が集束されている(無理が少ない)」ので、優れていると思っております。

そこで教えていただければと思っております。日本の研究者(吉本道雅博士の方法論、白川博士(2005)の方法論)による年代の推定方法と、その結果である年譜は、かなり頻繁に、書き換えられているのでしょうか?

アドバイスがいただけたら幸いです。

http://moppi.seesaa.net/

御忙しい中お手数をおかけいたしますが、宜しくお願いします。
返信する
Unknown (さとうしん)
2008-06-21 23:41:26
>moppyさま
>最終的な成果である、断代の精度はかなり低いと思います。

吉本先生の解説によると、この本では周王の在位年代についてはアメリカのShaughnessy(夏含夷)の断代案に暫定的に従っているということですが…… またこの本の価値・成果は周代の礼制のありようとその変革について論じたことであり、断代ではありません。これについては私の紹介文も参照していただけたらと思います。↓
http://blog.goo.ne.jp/xizhou257/e/79cebe2a764d4895bf5e87e3ffe2e633

>その結果である年譜は、かなり頻繁に、書き換えられているのでしょうか?

中国では上のコメントにも書いたように、紀年を含んだ銘文が発見されるたびに、『文物』などの専門誌で紀年の見直しをはかる論文が(それも一人だけではなく複数の研究者によるものが)掲載されます。

日本ではそもそも西周紀年の復原に取り組んでいる研究者が少ないのと(現在ご存命の人ですと、吉本先生と平勢隆郎先生ぐらいでしょうか)、新しく金文が発表されるたびに紀年に関する論文をいちいち載せてくれる雑誌が無いというような事情もあり、中国みたいに頻繁には修正案は発表されません。

ただ、吉本先生は新出金文が発表されるたびに今までの断代案との付き合わせをされているようですが。
返信する
ありがとうございます。 (moppy)
2008-06-22 01:41:44
御忙しい中、ご返信ありがとうこざいます。

>またこの本の価値・成果は周代の礼制のありようとその変革について論じたことであり、断代ではありません。

紹介文を読ませていただきました。大変簡潔にまとめられており、私でさえ理解できました。ありがとうございます。


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素人なりに、王国維(白川静博士(1971))の方法論を検証したところ、とりわけ問題だと思ったのは、やはり"月相と元日朔"を使っている点でした。曖昧さが広がってしまい、結果的に信頼性の比較的高い、日(干支)の値も曖昧になってしまいます。

むしろ逆ではないかと、まずは日(干支)の値を大切にすべきではないかと、最初に思ったのです。

長い年月の間に、もしかしたら日(干支)の値でさえもずれるかもしれません。ゆえに一つの断代の資料を即座に全体にあてはめず、限定的な範囲で使ってみるべきだと、次に思いました。


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ついで、"計算によって算出する"ことよりも、"全体を俯瞰できるようにする"ことを優先してみようと考え、どうすればそれを実現できるのかを検討しました。

愚論は、つまるところ、統計と個人の持つ総合的な専門知識に依存した方法です。王国維の方法とは、ちょうど正反対のものとなります。というか、王国維の方法論の問題点から逆算して考えた感じもします。

検証自体は、あくまで、総合的な専門知識に依存しています。ゆえに愚論は道具ていどのものです。全体を確認しやすくした程度のものです。

一刀両断に年譜を『断代する』というよりも、徐々に年譜の『近似値に近づいていく』といった感じです。


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そもそも自分ができないことを、安直に専門家の方に伺うといった姿勢がダメだと反省しております。

このたびは本当にお手数をおかけいたしました。
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Unknown (さとうしん)
2008-06-22 21:49:21
>moppyさま
最近は小南一郎『古代中国 天命と青銅器』のように、白川先生よりもずっと分かりやすい日本語で書かれた入門書も出ていますので、紀年だけにとらわれずに西周の社会や礼制についても一通り勉強されてはいかがでしょうか。(余計なお世話かもしれませんが……)

なお、小南先生の本の詳細についてはこちらを参照のこと。↓
http://blog.goo.ne.jp/xizhou257/e/88d6db8a2fddf93964b8a9cc7e1cb3dc
返信する
最後に1つだけ (moppy)
2008-06-23 01:23:59
このたびはたくさんの情報を教えていただき、本当にありがとうございます。

書籍の紹介、ありがとうございます。値段も2000以内ですので、買って読んでみようと思っております。


---
最後に一つだけお願いがあります。

私の"愚論"についてなのですが、"少しで結構"ですので、

「この手続き」「この手法のこの部分」が間違っているとか、「ここは不要だ」「ここはこうしたほうがいい」といった、「方法論自体に対するアドバイス」がいただければと思っております。

つまるところ、この手法自体が方法論的に、"上手くいく方法論"なのか、"上手くいかない方法論"なのか、が知りたいのです。

さっとで結構ですので、この方法論自体のチェックをしていただければと思っております。

http://moppi.seesaa.net/archives/20080619-1.html



このたびは本当にお手数をおかけいたしました。
返信する
Unknown (さとうしん)
2008-06-23 22:45:06
>moppyさま
>つまるところ、この手法自体が方法論的に、"上手くいく方法論"なのか、"上手くいかない方法論"なのか、が知りたいのです。

はっきり言ってしまうと、個人的に具体的な手法はどうであれ紀年による断代という方法自体が他の断代法と比べて信頼性に欠けると考えていますので(私だけではなく日本の西周史・金文学研究者の多くがそう考えていると思いますが)、紀年による断代は全くお薦めしません(^^;)

どうしても紀年による断代をなさりたいならば、林巳奈夫先生がされているような青銅器の形態の変化による断代法や、銘文の字体、紋様、銘文中に出て来る人名のつながりなど、複数の断代法と組み合わせて行えば、当たらずとも遠からずという結果になるんじゃないかと思います。
返信する
ありがとうございます。 (moppy)
2008-06-24 01:03:09
>個人的に具体的な手法はどうであれ、紀年による断代は全くお薦めしません。

アドバイスありがとうございます。もう"愚論"の質問は止めます(お手数をおかけいたしました)ありがとうございます。

>日本の西周史・金文学研究者の多くがそう考えていると思います。

なんというか...過去に相当にまずい状況とかになったんですか?新発掘されるたびに、これまでの検証がダメになり、一からのやり直しになったとか(^^;)

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記事を読ませていただき、また思ってしまいました。

林巳奈夫先生については"通った後には、雑草すら残ってない(と紹介されていました)"ので、やり残しはかなり少なさそうですね。


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ところで、林巳奈夫先生の研究では、年月日の"月"のあたりまで、もう断代が確定しているのでしょうか?

つまり、どこまで個別の器の作成年月を確認できているのでしょうか?

もしそこまで到達していないのであれば、もう少し前に進む余地が残っていることを意味するので、なんか面白そうですね♪

"信頼性に欠ける"といっても、内々で、"情報には優先順位がある"と思うので。


---
私のブログで「周1」で、ちびちびと物語を書いています。もしよろしければ読んでいただければ幸いです。

http://moppi.seesaa.net/

では。大変お手数お手間をおかけいたしました。
返信する
Unknown (さとうしん)
2008-06-24 23:28:05
>moppyさま
>なんというか...過去に相当にまずい状況とかになったんですか?

というか、はなっからこの方法に懐疑的なので、手をつける人が少ない状態ですね。中国の場合は国家プロジェクトの一環として西周紀年の復原を進めてきた都合上、手をつけざるを得ない面があるわけで……

>ところで、林巳奈夫先生の研究では、年月日の"月"のあたりまで、もう断代が確定しているのでしょうか?

林先生の断代は銘文ではなく青銅器そのものを時期区分していく手法です。

鼎や鐘などの器種別に形態の変化を追っていき、それぞれ西周Ⅰ(前期)・Ⅱ(中期)・Ⅲ(後期)の三期に分け、それを更にそれぞれA(前半)とB(後半)に分けていきます。

考古学での土器の分類法を殷周期の青銅器の分類に応用した手法で、基本的に紀年を含めた銘文の情報を無視しています。

この銘文による情報を敢えて無視しているという点が林先生の断代の特色のひとつで、信頼性を高めている要因のひとつだと思います。

中国でもこのような考古学的な断代法が取り入れられてますが、銘文による情報に引きずられすぎている印象がありますね。
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