博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『中国化する日本』

2011年12月21日 | 中国学書籍
與那覇潤『中国化する日本』(文芸春秋、2011年11月)

源平合戦からポスト3.11までの日本の歴史を「中国化」「江戸時代化」をキーワードに読み解いた本です。「中国化」というのは、宋代以降の中国に見られるように、経済や社会を徹底的に自由化するかわりに政治の秩序は専制支配によって維持するような体制のことで、「江戸時代化」はその逆で、経済や社会を徹底的に統制するかわりに各人が分を守る限りは生活がそれなりに保障されるが、権威や権力のあり方があやふやな体制のことです。

個々の部分についてはそれぞれ最新の研究の成果をわかりやすく紹介しているだけとのことですが、バラバラの文脈で語られている研究を「中国化」と「江戸時代化」のせめぎ合いを軸にひとつの物語につなぎ合わせたのは本書の最大の発明と言えるでしょう。所々「えっ、この本の内容ってそんな理解でいいの?」と思う部分も無いではないですが……

まあ、そのあたりは著者自身が「つまり本書は、思想史の専門研究ではもう常識になっている視点を、政治史や経済史も含めて拡大解釈しているだけのことで、その意味では他の章と同様、さして『オリジナル』ではないですし、まして『突飛な歴史観』では全然ない。」(本書132頁)と言い訳しているので、自覚している部分があるのかもしれませんが(^^;)

著者自身の指摘や意見も、「清王朝なんてアヘン戦争以来、太平天国の乱→アロー戦争→義和団事件と来て辛亥革命で王朝が潰れるのに半世紀以上かかっているのに、江戸幕府はペリーが来航したくらいでたかだか十数年間で倒幕まで追い詰められるのっておかしくね?」とか、「戦争中だからこそ逃げない方がアホ」とか、「日本国憲法がアメリカの押し付けだとか何とかグタグダ議論してる暇があったら、九条をいかに中国に押し付けるかを考えるのが本当の憲法改正」とか、なかなか読ませるものが多いです。

そして現代日本。これからは中国化の動きが不可避ということですが、要する日本でも『包青天』とか『雍正王朝』とか『大宋提刑官』なんかでお馴染みの光景が見られるようになっていくというわけですね。そう考えると何だか胸が熱くなってきます(´・ω・`)

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