博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『地下からの贈り物』

2014年07月12日 | 中国学書籍
中国出土資料学会編『地下からの贈り物 新出土資料が語るいにしえの中国』(東方選書、2014年6月)

近年陸続で発見・公表されている中国の出土資料について、「出土資料でわかること」「どこから何が出てきたか」の二部構成で紹介。

触れなきゃいけない資料については大体カバーできていると思いますが、本書1-2で金文とセットで扱われている甲骨文については、丸々一節を割いて貰いたかったなと。甲骨文については入門書も各種あるからということかもしれませんが、甲骨文へのアプローチは出土地点と内容との関連を探る、甲骨の材質にも注目するといった具合に昔とはだいぶ違ってきていますし、花園荘東地甲骨のように近年発見された資料もありますし、やはり一節を割く価値はあるでしょう。

金文については、宝鶏太公廟村出土の秦公器や梁帯村芮国墓地を取り上げるなら、天馬・曲村晋侯墓地の方が良かったんじゃないかと…… これなら8号墓の副葬品の晋侯蘇鐘を題材にして出土品と盗掘品との関係についても論じられますし。(晋侯蘇鐘は全16鐘から成り、このうち14鐘が盗掘されて後に上海博物館に買い取られ、残る2鐘が墓中に残されて発掘された。)

最後の冨谷至氏のコラムに言う「骨董簡」についてはまあ同意。出土地不明の資料についてはこういうことを踏まえたうえで使わないと仕方ないかなと。(冨谷氏の主張はこういうことを踏まえたうえで、これらの「骨董簡」の資料的価値は疑問であるし、自分は資料として利用しないということなのですが……)

しかし池田知久氏(本書1-13)は何がどうあっても郭店簡や上博簡の年代を戦国末期~前漢初期まで下らせたいのでしょうか。(通説では郭店簡は戦国中期の終わり頃、上博簡は戦国晩期のものとされる。)あそこまで執拗に戦国末期~前漢初期の筆写と断り書きをつけるのはちょっと…… 一応これについては本書2-16で谷中信一氏によるフォローも入ってますが……

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