無意識日記
宇多田光 word:i_
 



ポール・マッカートニー御大の最新ソロアルバム「NEW」がオリコン総合チャート初登場2位を記録した。彼自身にとっても31年ぶりだったり43年ぶりだったりするらしく、市場としても史上最年長でのTOP3入り。今回は来日公演も間近に控えているとあってレコード会社も気合い入って留なぁという印象だったが、ここまで来るとは驚きだ。尤も、2.3万枚という事らしいから宣伝費考えたら赤字かもしれんが。来日公演で荒稼ぎするからOKなんだろう。この何倍もの人間が押し寄せる。新譜中心の選曲だったらどうするんだみんな。

そうなのだ。そんな心配をしたくなる程、新譜は現役感が強い。確かに、いつもどおり、曲のクォリティーはThe Beatlesのアウトテイク程度なのだが、この「年齢を考えさせない感」は凄い。「年齢を感じさせない」と言う時は「年齢の割にはまだまだ若々しい」という意味だったりするが、今作は、作ってる方も自分の年齢なんて頭になかったんじゃないかと思うほど徹底して普通である。完全に「また出た新作」でしかない。作風のバラエティーは広いが、集大成と呼ぶほど肩に力が入っていない。何も聞かずに聴かされたら、これが70歳を過ぎたお爺ちゃんが作った作品だとは全く思わない。無理して若作りする事もなく、自然に普通のアルバムを作れる。何とも凄い。

先述の通り、曲のクォリティーが飛び抜けて高い訳ではない。しかし、この魅力は本当に抗い難い。「The Beatlesと較べて云々」という無茶を言わない限り、洋楽ファンが彼のこういった作品を否定するのは難しいだろう。嫌われないアルバム。そう言ってもいいかもしれない。

普通、そういう八方美人な作品を創ったらどうしても最大公約数的になり、箸にも棒にもかからない、帯に短し襷に長しなものが出来上がりそうだが、彼の場合基本的な作曲能力が高い(って人類史上最高クラスなんだが)為か、そうやって導き出した最大公約数が物凄く大きな値に落ち着くのだ。馬鹿デカい素数。誰にも割って入れないオリジナリティの持ち主とでも言うべきか。

この凄みは、音楽を沢山聴いてきた人程感じるものなのではないか。この、さり気なくPop Musicとして成立してしまってる感覚。このアルバムは誰でも気軽に楽しめる。しかし、いざ作ろうとなったらこんなに難しいものはない。どうやったらこんな作品になるのだろう。どこから手をつけたらこう成るのか、皆目見当がつかない。Legendary, Historicalだからといって、威圧感はなく親しみ易いのに、冷静に考えると真似できない。何とも不思議な、言ってみればcuteなアルバムである。

この作品からHikaruが学べる事は多い、という話からまた次回。(てか本来それがメイン)

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